長編 1ミリ上空の日々
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曲者さんと別れてから、私はゆっくりと草むらから這い出した。
ちぢこまっていた背を伸ばして立ち上がる。
曲者さんの言葉に背を押されるように、そのまま校庭まで歩く。
途中、工具箱を持って正門へ向かう食満君や、ぽけーとしながら歩いている四郎兵衛とすれ違った。
でも彼らに私は見えていない。
大丈夫。
恐れることは無い。
軽くなった心で、広々とした校庭に足を踏み入れた。
一年は組の生徒がサッカーをしたり、五年生がドッヂボールをしたり……。
あっちでは七松君が塹壕を掘りまくっている。
いつもと変わらない風景。
私はその場で大きく伸びをした。
さて、くよくよするのは終わりにして、楽しい幽霊ライフを満喫するか!
ひゅー
ん?
すこっ!
青空を見上げる私に、飛んできたサッカーボールが貫通した。
「おーい金吾!どこに蹴ってるんだよ」
「ごめんごめん!」
えぇと。
これは、当たりだから!良いことあるってことね!よし!
そんなこんなで、私は日常を取り戻した。
数日後
「久々知先輩!」
二郭伊助は久々知兵助に声を掛けた。
彼らは今委員会の真っ最中で火薬の点検をしているところだ。
久々知兵助は火薬が湿気ていないか確認しながら「なんだ?」と答えた。
「この火薬、在庫がわずかです」
「わかった」
するとひょっこりと斉藤タカ丸が顔を覗かせ「兵助くん、こっちのもあと少しみたい」と告げる。
久々知は肯くと、さらさらと用紙に火薬の種類を書き込んでいく。
その手元を何気なく見ていた伊助は、思い出したように口を開いた。
「そういえば、敵に幽霊を見せる幻術ってあるんですか?」
「え?」
久々知は長い睫毛を瞬かせ伊助を見返す。
興味を持ったのか、タカ丸も「なになに?」と寄ってきた。
棚の埃を払っていた池田三郎次も梯子から降りてくる。
「それが、山田先生と土井先生が、その術でこの間の泥棒をやっつけたんですけど―――」
伊助は火薬の壺を元に戻しながら事の顛末を説明した。
「泥棒が部屋に入って来ても寝てるなんて、やっぱりは組はアホだな」
三郎次がちょっかいを出して、伊助はむっと顔をしかめる。
タカ丸がそれを困ったように笑いながら諌めた。
久々知は「うーん」と腕組みをしながら天井を見上げた。
「知らないなあ。―――六年生なら知ってるんじゃないか?」
「それが、乱太郎が善法寺伊作先輩に聞いてもわからなかったみたいなんです」
「そうか。よっぽど難しい忍術なのかもな」
「でもさあ」とタカ丸が首を傾げる。
「どうして山田先生や土井先生に直接聞かないの?」
伊助はちょっと難しい顔をして「そこが問題なんです」と言った。
「訊いても、『お前たちにはまだ早い』とか言って、教えてくれないんですよ」
「まあ、先生の言う通りかもな」
三郎次が再びちゃちゃを入れる。
タカ丸はふふーと笑った。
「でも、いつかは教えてくれるんじゃない?」
「それにしても変ですよ!いつもなら頼まなくっても教えてくれるのに。
しかも他の先生方もそろって同じことを言うんです」
伊助は少し興奮したように言った。
「確かに、それは変だな。危険が伴う術ならともかく……」
久々知は「うーん」と言って、それから小さく手を打った。
「もしかして、『教えない』んじゃなくて『教えられない』んじゃないのか?」
小さなほころびは、やがて広がっていく。
ちぢこまっていた背を伸ばして立ち上がる。
曲者さんの言葉に背を押されるように、そのまま校庭まで歩く。
途中、工具箱を持って正門へ向かう食満君や、ぽけーとしながら歩いている四郎兵衛とすれ違った。
でも彼らに私は見えていない。
大丈夫。
恐れることは無い。
軽くなった心で、広々とした校庭に足を踏み入れた。
一年は組の生徒がサッカーをしたり、五年生がドッヂボールをしたり……。
あっちでは七松君が塹壕を掘りまくっている。
いつもと変わらない風景。
私はその場で大きく伸びをした。
さて、くよくよするのは終わりにして、楽しい幽霊ライフを満喫するか!
ひゅー
ん?
すこっ!
青空を見上げる私に、飛んできたサッカーボールが貫通した。
「おーい金吾!どこに蹴ってるんだよ」
「ごめんごめん!」
えぇと。
これは、当たりだから!良いことあるってことね!よし!
そんなこんなで、私は日常を取り戻した。
数日後
「久々知先輩!」
二郭伊助は久々知兵助に声を掛けた。
彼らは今委員会の真っ最中で火薬の点検をしているところだ。
久々知兵助は火薬が湿気ていないか確認しながら「なんだ?」と答えた。
「この火薬、在庫がわずかです」
「わかった」
するとひょっこりと斉藤タカ丸が顔を覗かせ「兵助くん、こっちのもあと少しみたい」と告げる。
久々知は肯くと、さらさらと用紙に火薬の種類を書き込んでいく。
その手元を何気なく見ていた伊助は、思い出したように口を開いた。
「そういえば、敵に幽霊を見せる幻術ってあるんですか?」
「え?」
久々知は長い睫毛を瞬かせ伊助を見返す。
興味を持ったのか、タカ丸も「なになに?」と寄ってきた。
棚の埃を払っていた池田三郎次も梯子から降りてくる。
「それが、山田先生と土井先生が、その術でこの間の泥棒をやっつけたんですけど―――」
伊助は火薬の壺を元に戻しながら事の顛末を説明した。
「泥棒が部屋に入って来ても寝てるなんて、やっぱりは組はアホだな」
三郎次がちょっかいを出して、伊助はむっと顔をしかめる。
タカ丸がそれを困ったように笑いながら諌めた。
久々知は「うーん」と腕組みをしながら天井を見上げた。
「知らないなあ。―――六年生なら知ってるんじゃないか?」
「それが、乱太郎が善法寺伊作先輩に聞いてもわからなかったみたいなんです」
「そうか。よっぽど難しい忍術なのかもな」
「でもさあ」とタカ丸が首を傾げる。
「どうして山田先生や土井先生に直接聞かないの?」
伊助はちょっと難しい顔をして「そこが問題なんです」と言った。
「訊いても、『お前たちにはまだ早い』とか言って、教えてくれないんですよ」
「まあ、先生の言う通りかもな」
三郎次が再びちゃちゃを入れる。
タカ丸はふふーと笑った。
「でも、いつかは教えてくれるんじゃない?」
「それにしても変ですよ!いつもなら頼まなくっても教えてくれるのに。
しかも他の先生方もそろって同じことを言うんです」
伊助は少し興奮したように言った。
「確かに、それは変だな。危険が伴う術ならともかく……」
久々知は「うーん」と言って、それから小さく手を打った。
「もしかして、『教えない』んじゃなくて『教えられない』んじゃないのか?」
小さなほころびは、やがて広がっていく。
