幼馴染はゲイでした
自分の家で風呂を済ましてスウェットに着替えて、必要な物を持ち再び沖田の家の玄関前。何度も起こすのは悪いから、鍵を預かっていたのだ。
鍵を開けて室内へ入ると沖田の部屋へ。
ドアを開ければ待ちくたびれたのか沖田は眠っていた。ベッド付近に座り顔を覗く。寝顔を見るのは久々だ。学校でも寝ている姿は見るが、机に伏せている為、見えても頭か後ろ姿だけ。
まじまじ見る沖田の顔は非の打ち所がない程、整っていた。伏せられた睫毛は長くて、薄っすら開かれた形の良い唇からは、か細い寝息が漏れている。
男から見ても綺麗な面をしていると思う。
額に手を当てれば変わらず熱はあるようで熱い。顔にかかる前髪をかき上げて、冷えピタを貼ると不意に手を掴まれた。
「...行かないで、十四郎」
ぽつりと呟かれた寝言。寝ていると分かっているのに無意識で繰り出される言葉に本音を感じ、ドキッとした。
「何の夢見てんだか」
避けられてる所か夢にまで出てきているなんて、嫌われてなくて良かったと安堵した。
掴まれた手を握り返してベッドに顔を伏せる。金曜は学校も終わりと眠いのだ。病人相手に会話したいなど望んではいけないのだが、数日口を聞いていなかった所為か話しがしたかった。
「総悟、早く治せよ。お前が居ないと退屈なんだよ」
小さく溢れた声は布団に飲み込まれる。三日音沙汰ないだけで、学校も違う景色になってしまう。
一緒に居るのが当たり前過ぎたのだ。
顔を上げて規則正しい寝息を立てる沖田を見て、手から伝わる温もりを感じる。
ふと、頭をよぎった。
高校を卒業して、それぞれが違う大学に進学してしまったら、今みたいには居られないんじゃないかと。登下校を始め、学校内でも姿が見えないとなると寂しさが湧いた。
別に人付き合いが苦手なわけじゃない。新しい人間関係など作っていける。学校の中では会うことはないかもしれないが、一生会えない事もない。
けど、急に虚しくなってしまったんだ。
「.....ん」
無意識の内に握る手に力が強くなってしまったらしく、沖田はうっすらと瞼を開けて声を発した。
目を開けた沖田は体を伸ばそうと上げた手の自由が利かなかった事に驚き、俺を見てから不自由になった原因を知る事になる。
「って、アンタ何してんでさァ」
理解して顔を紅潮させた。つられて俺の頬も熱くなる。普段触れた事もない手なんかしっかり握ったりしたのが恥ずかしくなった。
慌てて手を離そうとするも、沖田がそれを許さない。体を起こした沖田は俺の手を引いた。
蘇芳色の目が真っ直ぐ俺を捉える。瞳に映る俺は段々と大きくなって、この雰囲気ってもしかしなくてもと考える前に唇が重なった。