葛藤
「土方さん、お休みなせェ」
「ああ、お休み」
副長室で交わされる会話。好きだと言ってから、沖田は毎日のように訪れては当たり前のように同じ布団で寝るようになった。
それ自体はいい。非常に喜ばしい事だ。
布団に入って数分、沖田は寝息を立てていた。アイマスクもせずに眠る沖田の貴重な寝顔が見えて、黙ってれば可愛いのにと綺麗な顔をした頬に触れる。
ぴくりと瞼が動くも、睡眠を継続する沖田に笑みを浮かべた。
「...ちょっとは警戒しろよ」
自分を好きだと言った男の部屋で、こんなにも無防備に眠れるもんだと思っている。沖田からしてみれば、今更土方が事を起こすとは思ってもいないのだろうが。
まさか自分がこのような事で悩むとは思ってもみなかった。
女相手なら悩んだ事はない。相手が求めるままに進めば良かった。だが、沖田相手だとどうだろう。
長年堰き止めていた想いを告げて、拒絶はされなかった。僅かに変わった態度からも受け入れてくれたんだと感じてはいる。
相手が何を求めているのか、どうして欲しいのか全く分からないのだ。
改めて考えると沖田の事は知っているようで知らない。
悩んだ挙句に思い留まってしまうのを繰り返して早1ヶ月。進展はない。
そもそも、拒絶はされていないという事実だけで行動をして悲しませたくはない。好かれている確証もないのに。
今更、男の部分を見せられても困惑させかね無い。悩みは尽きなかった。
隣ですやすやと眠る沖田を見て、溜め息をつく。
寝相もあまりよくない沖田は衣類がよく乱れる。そこから覗く、滑らかな白い素肌が土方を誘惑する。お陰でまともな睡眠が取れていなかった。沖田が夜番の時に眠り、二人揃う夜は沖田が眠ってから欲を吐き出して布団に入るのを続けている。
いい大人が情けないが惚れた弱みで致し方ないとさえ思っている。
人生の中で、本気で人を好きになったのは初めてなのだから。
大切にしたいと思うのは当然だろう。
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