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初恋が実るまで



初めて自慰を土方に教わってから数年が経ち、俺も十八になった。

季節が巡り行くのは早いもので子供だった身体はあっという間に成長した。近藤や土方からすれば、まだまだ子供なのだろうけど。

あの日以来、ずっと胸に抱えてきた違和感が形となって現れた。

気付いてはいけない、恋心。

馴染みの関係で、今は上司で、しかも同性。

真選組内にも男色の傾向はあるやつはある。偏見もゼロではないが、珍しい事でもない。

色男で女好きの土方にとって、俺は憎たらしい部下でしかない。よくて弟分と言った所だろう。

幾つになっても女相手に性的興奮が得られず、成人向けのDVDやら雑誌やら周りが興味を示す中、自分が周囲と違うと自覚した。

かといって同性愛者と言う訳でも無い。興味が持てるのは、寄りによって土方、ただ一人だった。

素直に想いを伝えるなんてことは、性格的にも出来る筈も無く、年月ばかり過ぎてしまった。

我ながら天邪鬼だとは思うが、嫌がらせをして注意を引く事しか出来ない。少しばかりの時間でも、自分が頭の中を占拠出来たらいいなんて子供じみた考えしか出来ないのだから。

「…全く嫌になるねィ」

「それは俺の事か?」

うっかり漏れてしまった言葉を、助手席に座る上司は聞き逃さなかったらしく、眉間に皺を寄せた。

不機嫌そうに紫煙を吐き出す土方を横目でちらりと見る。直ぐに視線を前に戻し、黄色の信号を目で捉えてブレーキを踏む。

「なんでィ。俺が土方さんの事考えてるとでも?自意識過剰も大概にして下せェ」

「よーし、表へでろ!叩き切ってやる!」

変わらずの憎まれ口に、土方は当然の如く声を荒らげる。

「...上等でィ。返り討ちにしてやらァ」

行動は言葉とは裏腹で、青に変わる信号にアクセルを踏む。再び走り出す車に土方も冷静になったのか売り言葉に買い言葉は続かなかった。

「オメーも運転まだ慣れてねぇんだから、集中しろよ」

はいはい、と適当に返事をする俺に溜息を漏らす土方は吸い終わった煙草を灰皿に押し付けた。

免許を取得してからひと月。俺の運転する車に乗るのは怖いと怯えて皆が避ける中、土方は自ら名乗りを上げた。

忙しい副長業務の合間やら休日やらを、目的地を提示して、運転に不慣れな俺を指名する。おかげで今月はどれだけ運転したか覚えていないが、相当な距離を走っている。その甲斐あってか徐々に上達していた。

本当は分かっている。不器用な土方なりに運転練習に付き合ってくれているのだと。本人は決して認めないだろうが。

「土方さん」

「あ?」

「駐車の練習したいから茶屋でもいきやしょう」

あくまで運転の練習を口実に二人で過ごす時間を伸ばそうと提案してみる。土方は困った様に笑うと、今回だけだぞと誘いに乗った。


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