二章
同じ布団で朝を迎える。
すっかり習慣とかした日常。
土方が起きたのにつられるように、ぼんやりと目を開ければ変わらない一日が始まる。
いつもの様に起き抜けに煙草を吸う土方の背に凭れ掛かり頭を覚醒させる沖田。
「今日仕事の後接待だから」
帰り遅くなるから先に寝てろという暗黙の了解の言葉を紡がれる。
「へい。頑張って」
接待なり夜番だったり時折一緒に眠る事が叶わない夜もある。一人で入る布団が妙に寂しく感じてしまう。
昔は誰と居るんだとか何時に帰ってくるとか行く前も問い詰め、帰りが遅くなるもんなら嫉妬に狂い無理矢理行為に及んで見せたりしたもんだ。
我ながら子供だったと思う。
現在の沖田は反省していた。ただ、困らせるだけだと。
年の功か土方は一枚上手で沖田の心の不安を少しでも取り除こう連絡をくれたり、早めに帰宅しようと努力しているのは痛感している。
「明日は一緒に寝よう」
なんて額にキスをする土方をぎゅっと抱きしめた。
どうしようもないくらいこの人が好きなんだ。片時も離れたくない。
その想いを込めて感じる寝間着越しの体温に顔を埋めた。
「...潰れない程度に飲んで下せェ。アンタ酒弱いんだから」
割と素直に身を案じてやれる俺を過去の自分が見たらどう思うだろうか。
「わかってる。総悟も怪我すんなよ」
今日一番隊は潜伏していた攘夷浪士の討伐の任務が課せられていた。先陣を切って進む一番隊は危険が付き纏う為、精鋭部隊で構成されている。
危険も承知で土方が割り当てた役割。そこに信頼の証があるのも事実で沖田は誇らしかった。
「全員返り討ちにしてやらァ」
「物損は極力減らせよ」
「それは時と場合による」
こっちは任せてなんて格好良いことは言えないけど、土方が余計な心配をしなくて済む程度には働かなくてはならない。
名残惜しげに土方から離れ立ち上がる。
起きたら自分の部屋に戻り着替えなくてはならない。
「総悟、また後でな」
「また後で」
土方の姿を目に焼き付け自室へ戻り、仕事の準備をした。