April
心配してくれる近藤と山崎を先に部活に向かわせて、沖田は準備室の前にいた
一応ノックをすると、中からふてぶてしく入ってこいと声を掛けられる
言われるがままに入ると土方は椅子に腰掛け煙草を銜えながら、手前の椅子を指差した
「なんの用ですかィ?」
椅子に深く座り寄りかかって尋ねる
用事と言うよりは説教なんだろうけど
「お前、俺の授業もう少しまともに受けらんねェのか?」
「先生の授業は何故か眠くなるんですよねィ」
挑戦的に言ってみれば、大きくため息を漏らし紫煙を吐き出す
「んなの言い訳になんないだろうが!!」
「もっと楽しい感じに出来ないんですかィ?」
銀八の時はほぼ自習に等しかったんだから仕方ない
それは土方も承知の上だろうが、初っ端から授業を放棄されるのが気に入らないんだろう
「もう少し真面目にやる生徒が増えたら考えなくもない」
「俺ァ、真面目ですぜ」
「お前も問題児の一人なんだよッ!!」
眉間に皺を寄せながら考える土方に冗談を言ってやればまた言い返してくる
ちょっとだけ、土方をからかうのは楽しいかもしれないと沖田は思った
「ところで先生、部活行ってもいいですかィ?」
すっかり忘れていたけど、近藤や山崎が待っている筈だ
「……今日の所はな。明日からはちゃんとやってくれよ?」
「考えときまさァ」
先程の土方と似たような解答をしてやれば、なんだそりゃと微笑した
その笑顔が元々端正な顔立ちの土方を引き立たせる
普段沖田には怒ったような表情しか見せない土方の笑顔は貴重で、綺麗だった
「…何見てやがる」
見入っていたら土方が怪訝に沖田を見る
「なんでもないでさァ、じゃあ部活行ってきやす」
ひらひらと手を振りながら出て行く沖田を土方は見送った
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