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変化



正直この場に居るのが辛かった。もう帽子かなんかで耳隠して仕事でもしてしまおう。気を紛らわす為ならなんでも良い。

「待て、その格好のまま行くな」

盛り上がっていた下半身も気持ちと共に意気消沈したものの、着る服もないからそのまま出て行こうとする沖田を土方は止めた。

さっさと隊服に着替え終えた土方は自らの私服の着流しを一つ手に取ると沖田へ渡した。

「んな顔すんな」

そして頭を撫でられた沖田は自分の表情さえ分からなかった。

「やめて下せェ。俺の事はほっといて貰って結構なんで」

目の奥が熱くなる。今、優しくされたらきっと我慢出来ない。ぶっきら棒に踵を返すと、渡された着流しを羽織り障子を開けた。

開けたつもりだった。

妙に軽い戸の反対側にも、副長室への訪問者が訪れていたのだ。間の悪い山崎である。

「え?沖田さん?何で戻ってるんです?」

沖田の姿を確認するなり、思う事があるのか驚いた様子をみせる山崎。

「おい、山崎。入る前に声掛けろっていったよな?」

不機嫌な雰囲気を醸し出している土方に山崎はたじろぐ。

「すみません、副長。沖田さんの戻る方法を伝えようと慌ててまして」

「俺はもう戻りやしたぜ?」

先程から土方と沖田を不審そうに交互に見る山崎に、必要がないことを伝える。

「だから驚いてるんでしょう!あんたら何してたんですか!」

特別な事はしていない筈だと、土方と沖田は顔を見合わせては疑問符が浮かぶ。

「で、結局どうすれば戻るんだ?」

答えを中々言わない山崎に問いかける土方。

山崎は言いにくそうに口を開いたり閉じたりを繰り返した後こう告げた。

「結論から言うと、他人の体液の摂取です」

続く説明はこうだった。

天人の娯楽のために開発されたとされる薬は夜の営みを盛り上げる為の一つであった。相手に飲ませる又はかける事で何らかの動物に変化すると言う説明までは前日に粗方されていた。

情事を盛り上げる為に変化させられた側は他人の体液を摂取する事で時間差はあるが元に戻れるらしい。汗でも涙でもいい。特に即効で戻れるのが性器から分泌された体液とかで、流石は天人の考えはよく分からない。

説明書を紛失しても困らないよう、他人の体液を求めるように出来ているらしく、美味に感じたのもその為なんだそうだ。

山崎の不審な反応は早く人間の姿に戻った沖田を見ての事だった。

説明を聞いていく内に土方は蒼ざめた表情を見せたものの、羞恥からすぐ怒りに変わる。

「てめえ、この件他言したら切腹だからな」

鬼の形相とはまさにこの事で、土方に睨まれた山崎は冷や汗をかきながら、じりじりと後退する。

「い、言いませんて。兎に角隊長が戻ったと局長に報告してきますッ!」

慌てて部屋を駆け出していく山崎は何かを勘付いただろう。

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