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誕生日


眠ってしまったようで、窓から差し込む陽はすっかり落ちていた。
どれくらい時間経過したかは分からないが身体は幾らか楽になった様な気がした。

取り敢えず一服をしようと上体を起こそうとすると身体が何がが乗っかっていて起き上がれない。

頭が真っ白になる。
僅かに差し込む月明かりだけでは、其れは特定出来なくて。
もしかして幽霊?なんて薄気味悪い。
怖さ反面好奇心で乗っかっているものに手を伸ばすと触れたのはサラリとした髪の毛の質感。

慌てて手を引くと何かが動き出した。

途端に重みが無くなり、起き上がり電気をつければその正体に気が付き胸を撫で下ろす。

「そ、総悟?」

アイマスクをずらし、眠そうに目を擦る沖田が座っていた。

「んー。俺ァ、寝ちまってたんですね」

「びっくりしたじゃねえか!大体何処行ってたんだよっ!」

いつの間にか部屋に居る事なんて当たり前なのに、不在にしていた沖田が憎らしい。

「何処って色々?...もしかして、寂しかったですか?」

ニタリと悪戯を含んだ表情で言われてカッとなる。

「別に寂しかねえよッ!今日に限ってなんで来なかったんだよ」

つい出てきた言葉にはっとする。
これじゃまるで寂しかったって言っているようなもんで。

沖田は小さく笑うと、土方の額に触れた。

「熱いくらか下がったみたいですね。良かった」

ひんやりとした手が気持ち良くて目を瞑ると唇に触れる熱。

目を開ければ目の前に広がる沖田の顔。

「バカっ!風邪伝染るだろうが」

慌てて肩を掴み引き剥がす。

「アンタになら伝染されてもいいですぜ。...仕事も休めるし」

「おぃぃぃぃ!聞こえてんだよッ!...っゲホ」

怒鳴り散らしたところで咳が出て。再び布団に身体を沈める。

「随分弱ったもんですねィ。副長ともあろう方が」

「てめーの所為だ!」

悪態をつく土方を他所に沖田はそっと布団を被せると枕元に紙袋を置いた。

「なんだそれは」

置かれた袋を手に取ってみる。

「アンタ今日誕生日でしょう。似合うもの探すの大変だったんですぜ」

だから朝から居なかったのか。わざわざ探し回っていた沖田の姿を想像し感動してしまう。

「総悟...ありがとな」

「誕生日おめでとう。土方さん」

そう言って笑う沖田に開けてみてなんて促されて、紙袋を開封すると中から出てきたのは黒のボクサーパンツ。

洒落たプレゼント渡すじゃねえかと内心思いながら広げてみると赤い字で"浮気禁止"なんて書いてある。

「んなもん履けるかぁぁぁ!」

貰った下着を手に握りしめ、沖田を見ればまた悪戯っぽく笑っていた。

「履いてくれないんですか?見つけるのに凄い苦労したのに」

それに脱がなきゃばれないでしょうなんて平然と言ってのける。
しゅんとした沖田が可愛くて。

「履けばいいんだろ。履けば」

「接待とか酒の席は履いて行けよ土方コノヤロー」

「なんで命令!?」

「アンタが浮気しないように牽制するんでィ」











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