graduation
土方は怪訝そうな表情で沖田の学ランを見る
「一個下の女共に毟られたんでィ」
心底疲れているような沖田に微笑する土方、近藤も振り向き歓声をあげる
「トシも総悟もモテモテだなぁ」
ニカっと笑う近藤の学ランは当然のごとく全て健在だった
「いや、総悟はともかく俺のは担任がとったから!!」
否定する土方に
「きっと土方さんは男にモテるタイプなんですぜ」
と茶化す沖田は楽しそうに土方に両手を差し出す
「な、なんだよ」
「モテない土方さんの為に俺が貰ってやりまさァ」
訳がわからないようで目を丸くする土方に、何故か沖田に便乗して近藤までもが手を伸ばしてきた
「…トシのボタンを貰えばお妙さんが振り向いてくれる気がする」
「んな訳ねェだろッ!!」
真顔で馬路ボケする近藤にツッコミを入れずにはいられない
相変わらず出し続ける二人の手を叩き、屋上から風景を見渡す
もう、この景色も今日でさよならだ
3年間通った道、教室も、校内や屋上も最後になるだろう
もしかしたら来客として訪れる事はあるかもしれない
3Zのクラスメートだって、特別中の良かった風紀委員のメンバー以外は個人的に会うこともなくなるだろう
そう思うとほんの少し虚しくなり、涙しそうになる
だが、それは物凄い勢いで階段を駆け上がる音によって遮られる
けたたましいドアの開く音と共に、そういやこいつも風紀委員に居たなという男が入ってきた
すっかり存在を忘れていた山崎が口を開く
「ふ…副委員長!!…………ボタン下さい!!」
END