Valentine
辺りが薄暗くなった頃、俺は土方さんの自室を訪れた
「入りやすぜィ」
返事は返ってこなかったが、珍しく一声掛けてから部屋に入ると、机に向かって書類処理をしている土方さんが目に映る
そっと傍までより、首筋に刀を当ててやればビクッと反応をし手の動きを止めた
「総悟か…?なんの用だ」
刀を当てているから、振り向く事はなかったが俺だと気づいたらしい
土方さんに対してこんな事するのは俺くらいだけど
「用がなきゃ、来ちゃいけやせんかィ?」
抜刀していたものを鞘に納めると、漸く土方さんは振り向いた
そんな土方さんの前に黙って手を差し出せば、訳が分からないとでも言いたげに眉間に皺を寄せる
「今日、なんの日か知ってますかィ?」
問えば考えているのか両手を組み答えを探しているようだ
「バレンタインデーですぜ」
埒があかないのでニッコリと笑顔を向けて教えてやると、やっと理解出来たらしい
「あれは男の俺達には関係のない話だ」
興味なさげに言うと、煙草を銜えて紫煙を吐き出す
此処で引き下がったら土方さんの事だからくれない気がして一か八か言ってみる事に
「俺、土方さんからチョコ貰いたいでさァ」
「はぁ…?」
「何でもいいからチョコ下せェよ」
土方さんは、一瞬困惑の表情を浮かべたかと思うと机の引き出しを漁った
ただじっと見守っていると何か見つけたものを手渡される
「板…チョコ?」
「何でもいいって言ったろ?それしか持ってねェよ」
手渡されたのは一枚の板チョコで、しかも……