とある日の話
お待たせしましたとテーブルに並べれた品と、ちょっとした違和感
それは何時までも店員が残っていて、総悟に何か言いたげな眼をしていた事
気づかない振りをして運ばれてきたコーヒーを一口飲み、窓の外に視線を移せば店員は総悟に話し掛けた
「真選組の沖田さんですよね?…この前は助けて頂いて有難うございました」
「…あん時の娘ですかィ、対した事はしてやせんよ」
素っ気なく答える総悟に店員は他愛もない話しを続ける
無表情ながらに困ったような表情を浮かべていた総悟も、次第に打ち解けているようにも見えた
そんな二人を見ていると何処か居たたまれない気持ちになり、ポケットにしまった煙草の箱を開ければ一本だけ残っている
(…後で山崎にでも買ってこさせるか)
この場に居ない部下に行かせようなんて考えながら、最後の一本に火を灯した
相変わらず話し続ける二人に視線を戻しながら、話は聞かないつもりだったのに
「あの、いきなりなんですけど…付き合って貰えませんか?」
やたら気に障るような会話が聞こえてきて、この場を去ろうと立ち上がり
「総悟、後で返すから立て替えとけ」
そのまま入り口の暖簾を潜れば、総悟に呼び止められた気がしたが聞こえない振りを決め込んだ
ここから屯所まではそう遠くはない
車は総悟に任せて置けば大丈夫だろうと帰路を歩き始めた
総悟はまだ若い
好きな子と結婚して餓鬼産んで貰って、ごく普通の家庭を持って幸せになる事だって出来る
性格には問題があるが、容姿がいいから寄ってくる女も少なくない筈だ
今の内ならまだ選ぶ事が出来る
俺が突き放してやれば全うに生きられる
ただ、総悟を失う事を恐れているのは俺で
あいつの選択肢を奪っているのも俺だ
何も叶えてやれない俺よりかは女の方がいい
(別れよう、総悟と)
そう決意をした時、ふいに頬を伝った濡れた感覚
考えていて気がつかなったが、ずっと目に涙が溜まっていたんだろう
「本当…情けねェな」
涙腺が壊れたように溢れる涙を、屯所の門が見えそうな所で拭った
それは何時までも店員が残っていて、総悟に何か言いたげな眼をしていた事
気づかない振りをして運ばれてきたコーヒーを一口飲み、窓の外に視線を移せば店員は総悟に話し掛けた
「真選組の沖田さんですよね?…この前は助けて頂いて有難うございました」
「…あん時の娘ですかィ、対した事はしてやせんよ」
素っ気なく答える総悟に店員は他愛もない話しを続ける
無表情ながらに困ったような表情を浮かべていた総悟も、次第に打ち解けているようにも見えた
そんな二人を見ていると何処か居たたまれない気持ちになり、ポケットにしまった煙草の箱を開ければ一本だけ残っている
(…後で山崎にでも買ってこさせるか)
この場に居ない部下に行かせようなんて考えながら、最後の一本に火を灯した
相変わらず話し続ける二人に視線を戻しながら、話は聞かないつもりだったのに
「あの、いきなりなんですけど…付き合って貰えませんか?」
やたら気に障るような会話が聞こえてきて、この場を去ろうと立ち上がり
「総悟、後で返すから立て替えとけ」
そのまま入り口の暖簾を潜れば、総悟に呼び止められた気がしたが聞こえない振りを決め込んだ
ここから屯所まではそう遠くはない
車は総悟に任せて置けば大丈夫だろうと帰路を歩き始めた
総悟はまだ若い
好きな子と結婚して餓鬼産んで貰って、ごく普通の家庭を持って幸せになる事だって出来る
性格には問題があるが、容姿がいいから寄ってくる女も少なくない筈だ
今の内ならまだ選ぶ事が出来る
俺が突き放してやれば全うに生きられる
ただ、総悟を失う事を恐れているのは俺で
あいつの選択肢を奪っているのも俺だ
何も叶えてやれない俺よりかは女の方がいい
(別れよう、総悟と)
そう決意をした時、ふいに頬を伝った濡れた感覚
考えていて気がつかなったが、ずっと目に涙が溜まっていたんだろう
「本当…情けねェな」
涙腺が壊れたように溢れる涙を、屯所の門が見えそうな所で拭った