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禍患の葦

*それからも時はすぎる。誰が願っても願わなくても。

ぷつりと音がして、私の中で何かが弾けた。懐かしい死の気配が緩やかに広がっていくのを感じる。

私は静かに彼が残していった答えを見ることにした。今日まで残していたのはなんとなく、それを読んでしまえばやることがなくなると思ったからだ。

静かにページをめくる。そこに書かれていたのはーーーーーーー
「……ハハハッ!!とんだ詭弁じゃないか!!」
詭弁だった。子供騙しの、突拍子のない論理性もないただの妄想だった。
「自我次元領域が魂なるオカルト存在を神が記録するためにお作りになられた場所であることは否定できないはずだ、だって!!」
長く使っていなかった声帯が震える。笑いすぎて涙が出てきた。全く彼は突拍子のないことばかり言う。

私のネクロマンシーは死者を蘇らせている訳ではなく再現しているだけで、魂は眠りについているなんてーーーーーー
優しい、屁理屈だった。


彼の言葉がもしも正しかったとして、私の魂はすでに地獄で沙汰をうけているだろう。この私が救われたような気になったところで、意味なんてない。
それに何よりこんな穴だらけの理屈、のようなものなんて私の脳みそならもう数十秒もすれば論破してしまうだろう。
「だけどーーーー」
目を閉じて、彼との生活を思い出す。そうして意識を逸らして、深く考えるのをやめる。
体内に広がる死が、私の意識を溶かすまで。
ロクでもない思い出と僅かな救いの走馬灯。それが私の二度目の死だ。一度目の孤独と罪悪感にまみれた死よりも暖かい。

終わりが近づく。
最後に彼の生死が気になる。今もどこかで生きているだろうか。

いや、彼はどこかで元気にしているはずだ。私はそう思うことにした。そしてそれが私の最後の思考だった。





これは終わった世界の後日談、何があっても後の祭り。でも、無意味じゃない。
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