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禍患の葦

*それから時は過ぎて年が変わって。人類に滅びの手が届くまであとわずか


「驚くべきニュースだ。我が国は俺のこの優秀な脳味噌を戦地でぶちまけてこいと御命令なさった」
「医者を徴兵、しかも軍医としてではなく一兵卒として?やっぱり追い詰められてたんじゃないか」
「そうだな。……もう時期この国の全ては滅びる。人類の長い悪夢が終わる時も近い」


「……逃げるわけにはいかないのか」
「できないさ。敵前逃亡なんかしたら俺だけが罰を受けて済む問題じゃなくなる。お前ならそれくらいは理解してるだろう」
「わかってる!!!!」「分かってるさ。けど、どうしてそう諦めているんだ。君のような若者がこれから死のうって時にどうして必死で、生きようとしてくれないんだ。これも私のネクロマンシーのせいなのか?」
「……ふふ」
「?!何がおかしいんだ?!」
「いや、それなりに長い付き合いにはなったが、そんな表情は初めて見るとおもってな」
「は?!今はそんな話を」
「なぁ、アルフレッド。人類を滅ぼしたのはお前じゃないさ」
「……っ」
「滅びを何世代か早めたかもしれないがな。お前じゃなくとも人類はいつかネクロマンシー技術を完成させたし、ネクロマンシー技術がなくとも何か別の理由で滅んでいたさ。人類は人類の業によって滅ぶのさ」
「だとしても、だとしても私は……」
「俺は自分の命が終わる頃になってやっと気がついたんだが、ただ命を繋ぐより大事なことはあったんだ。運命の時に終わりを迎え損ねることは短命であることよりよほど辛いことだ。アルフレッド。あの時目覚めたのがお前だったおかげで俺は俺とさくらの終わりを汚さずに済んだ」
「何を言っているのか分からない。結局君は私を慰めたいのか?責めたいのか?ネクロマンシーこそ終わりを汚す邪悪なものだと」
「俺はお前に感謝してると言っただろ?その疑問は礼の一つだ。これからお前が過ごす孤独な時間の供にな。折角だから俺の答えはまとめてあるから気が向いたら読んでくれ」「そしてもう一つの礼はすでに体に埋め込んである」「言ってしまえば、時限爆弾だ」
「なんて?????」
「だから、俺なりの感謝の印にお前の体に時限爆弾…いや、爆発はしないが、時がきたら粘菌の機能を停止させる機器を埋め込んでおいた」
「いや、なんかもう一気に気が抜けてしまったんだが、なんでそれが礼になるんだ」
「お前、これから帰ってこない俺を待ち続ける気だろ?いや、たとえ俺に見切りをつけとしても、お前は探求を止められない。だから終わりを用意しておいてやったのさ」
「そこまで気にするなら、戦争に行く前に私を機能停止させておけばいいだけの話では??」
「俺にさくらの姿は殺せない」
「(いや、殺してたじゃん…)」
「あれはあくまで治療の一環だ」
「うわ心読んできた」
「それくらいはわかる」
「……君は本当に規格外だ」
「うん?」
「そんな君なら、生きて帰ってくるかもしれないな」
「……それは、ありえないだろうよ。それに、どちらにせよあんたの機能は停止するんだ。これでお別れだよ」
「それでも…いいや。そうだな。さようなら。せめて良い最後を」
「ああ、さようなら。最後にあんたと会えたのは悪くなかったぜ」
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