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長編

「ほぅ、様になってるじゃあないのさ」


「…なんだか不思議な感じだ。剣を腰に当てているだけの魔法使いのような気分だ」


フィアスはフルシャの元へと戻ってきた。剣士ではなく、回復魔法士としてだ。フィアスは長年使ってきた愛用の剣を鞘から抜き、刃を眺める。思えばよくこの一本だけで戦ってこれたものだ。フィアスの発言に、フルシャはカッカッカッと笑って言った。


「そういやこの前、魔法士から剣士へ変わった奴がいてね、そいつは『杖を持っているだけの剣士のような気分』と言っていたねぇ!全く、おかしくて笑っちまうよ。言ってることが同じじゃないか!」


フィアスはフルシャの言葉にその通りだと一緒に短く笑う。やがてフルシャはこう言った。


「さぁて、始めるかね」

フルシャは杖をついて、ギルドの外へと歩き出す。フィアスは足の速い老婆に首を傾げながら後を追った。


「何を始めるのだ?我には全く分からないのだが…」


「おや、回復技一つも持ってないんじゃ、回復魔法士の意味がなかろうて。いいから黙ってあたしについておいで」


フルシャはそう言ってから立ち止まり、フィアスに振り返って楽しそうに笑う。


「お気に入りの回復技を、このあたしが直々に伝授してやろうじゃないさ!」


そう言い放つフルシャの瞳には、何か企んでいるようにも見えた。まるで見返りを求めてるみたいだ。フィアスは何を求めているかを瞬時に察知して、溜息をついた。外にでると、いきなりフルシャは杖を振って近くの木を二本切り倒す。その行動にフィアスは叫んだ。


「何をしているのだ、貴女は!これでは環境破壊だぞ!?」


「まぁ待ちなさんな。ターゲットがなければ回復できんじゃろ?ならば、回復できるものを作ればよい」


カッカッカ!と笑うフルシャを見ながら、フィアスはぽかんと口を開けた。そして頭を抱え、唸る。


「なんと無茶なお人だ…!」
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