「カナ！あまり動ける体じゃないでしょう？ちゃんと寝なさい」


「はい、お母さん」


カナは草むしりを終えるとお母さんに返事をした。もうすぐで、ジェラスガイにお姉さまが来てくれる。カナは楽しみに思いながら、自分の家まで、ゆっくり歩いた。足は麻痺しているので、普通の人のようには動けない。

(……お姉さま…)


カナは布団に入ると、姉を思いながらゆっくりと目を瞑った。


「はぁ、はぁ、はぁ」


村の外の森では、フィアスと女性が走り続けていた。フィアスに手をひかれて走っている女性が、体力の限界で止まってしまう。


「止まるな、走れ！すぐにまたあの魔物に見つかってしまうぞ」


「でも…もう走れません」


「後もう少し…！？」


その時、雄叫びが聞こえ、フィアス達の後ろから大きい魔物が姿を現した。


「ひっ！」


「……くそ、勘の鋭い奴だ！どこまでもおってくる。仕方ない、貴女はここで少し休んでいてくれ。魔物をジェラスガイに連れていくわけにはいかん」


フィアスは剣を抜いて魔物を見た…大きさは４倍ぐらいだろうか。フィアスの蒼き髪が風になびいた時、フィアスは駆け出した。


「BLAZE APPEAR HEAT(炎のように熱く)！」


剣に炎のような赤い光が宿り、フィアスは魔物の腹部に剣をたてる。魔物は悲鳴に近い声をあげると、消滅した。


「…てこずらせるな」


フィアスは剣を鞘にしまい、女性の腕を引っ張って立たせる。


「休めたか？」


「ええ、少しは」


「…では、行こう」


二人は歩き出す…少しして、フィアスが女性に話しかけた。


「そういや妹さんの名前は何というのだ？」


すると女性はにこりと笑って幸せそうに答えた。


「カナって言います。素直で、病気になっても庭の草むしりをしてくれるのです。寝てないといけませんよって私が言うのですが、カナはいいリハビリになるから大丈夫ですと言うのですよ。困った妹です」


「いやいや、いい妹さんではないか。病気になってまで家族の手伝いとはたいしたものだ」


「ありがとうございます。カナもそれを聞いたらきっと喜びます」


「…見えてきたぞ」


フィアスは立ち止まり、小さな村を見る。


「カナ、カナは大丈夫でしょうか…？」


「案ずるな。我はあの茸の毒胞子への対処法を知っている…意外なものが薬になるぞ？」


フィアスは女性を安心させると、ジェラスガイへ足を踏み入れた。