長編
「はぁ、はぁ、はぁ」
巨大な森、獣道を力の限り走る女性がいた。その背後には大きな魔物がいる。
「キャッ!」
女性はとうとう走れなくなり、転んでしまう。そのチャンスを逃さず、魔物は女性に手を伸ばして捕まえた。魔物は女性を目線まで上げて舌なめずりをすると、女性を喰おうと大きな口を開ける。女性は死の覚悟をして抵抗を諦めた──その時。
「失せろ!WIND APPEAR RAPIDLY(風のように速く)!!」
そんな声が聞こえたかと思うと、一人の蒼き剣士が風のような速さで魔物を上から真っ二つに斬り、魔物を消滅させた。捕まっていた女性は魔物が消滅したので、空から落ちる形となる。このままでは落ちてしまう…しかし、その時も蒼き剣士が女性を抱き抱え、無事に着地した。女性が安堵の息をつく。
「…大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます。ええと…」
女性が剣士に名を尋ねようとした時、剣士は自ら名乗り出た。
「我が名はフィアス。別名『天地水を操りし者』だ。貴女はどうしてここにいる?この森には並の人間ではたちうちできぬ程の強い魔物が住んでいて、危ないというのに…」
フィアスが事情を聞くと、女性は話し始める。
「私は…この先に病気の妹がいるジェラスガイへ行きたかったのです」
「妹さんが病気か…確かに、ジェラスガイはこの森に囲まれているからどうしてもこの森をくぐらねばならんな」
「そうです。でも、この森に魔物が絶対に通らない道があるので、そこを通って行こうとしたのですが……その道へ入る前に運悪く魔物に捕まってしまったのです」
「…事情は分かった」
フィアスはちらりと女性が持っているカゴへ視線を移した。
「あ…これですか?妹にあげるお見舞いの花です」
「花…これがか?」
フィアスはカゴの中から見えるしおれた茸を手に取って見た。その発言を聞いた女性は少しムッとしたようだ。
「貴方にはこの綺麗な花が分からないのですか!?」
「……!まさか…」
フィアスはしおれた茸に剣を向けた。それを見た女性は悲鳴をあげる。
「止めて下さい。何をするのです!その花は妹が好きなの!」
「よく見ろ。貴女は騙されているのだ!」
フィアスがしおれた茸を放り投げ、剣に思い切り刺し通す。すると、魔物の声が響き、しおれた茸は消滅した。
「は、花が茸に…それに…魔物の声が…」
「……尋ねるぞ。いつも今のきの…花を、妹に持っていってるのか?」
「いえ、毎日見舞いに行って…昨日見つけたのです。そうしたら妹が喜んで…気に入ったらしいのです」
フィアスは顔を引きつらせ、女性の手を掴んで走り出した。
「キャッ!?」
「あの茸魔物は毒を持っていて、毒の胞子…花粉を吸って三日たつと死ぬ。妹さんが危険だ!」
巨大な森、獣道を力の限り走る女性がいた。その背後には大きな魔物がいる。
「キャッ!」
女性はとうとう走れなくなり、転んでしまう。そのチャンスを逃さず、魔物は女性に手を伸ばして捕まえた。魔物は女性を目線まで上げて舌なめずりをすると、女性を喰おうと大きな口を開ける。女性は死の覚悟をして抵抗を諦めた──その時。
「失せろ!WIND APPEAR RAPIDLY(風のように速く)!!」
そんな声が聞こえたかと思うと、一人の蒼き剣士が風のような速さで魔物を上から真っ二つに斬り、魔物を消滅させた。捕まっていた女性は魔物が消滅したので、空から落ちる形となる。このままでは落ちてしまう…しかし、その時も蒼き剣士が女性を抱き抱え、無事に着地した。女性が安堵の息をつく。
「…大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます。ええと…」
女性が剣士に名を尋ねようとした時、剣士は自ら名乗り出た。
「我が名はフィアス。別名『天地水を操りし者』だ。貴女はどうしてここにいる?この森には並の人間ではたちうちできぬ程の強い魔物が住んでいて、危ないというのに…」
フィアスが事情を聞くと、女性は話し始める。
「私は…この先に病気の妹がいるジェラスガイへ行きたかったのです」
「妹さんが病気か…確かに、ジェラスガイはこの森に囲まれているからどうしてもこの森をくぐらねばならんな」
「そうです。でも、この森に魔物が絶対に通らない道があるので、そこを通って行こうとしたのですが……その道へ入る前に運悪く魔物に捕まってしまったのです」
「…事情は分かった」
フィアスはちらりと女性が持っているカゴへ視線を移した。
「あ…これですか?妹にあげるお見舞いの花です」
「花…これがか?」
フィアスはカゴの中から見えるしおれた茸を手に取って見た。その発言を聞いた女性は少しムッとしたようだ。
「貴方にはこの綺麗な花が分からないのですか!?」
「……!まさか…」
フィアスはしおれた茸に剣を向けた。それを見た女性は悲鳴をあげる。
「止めて下さい。何をするのです!その花は妹が好きなの!」
「よく見ろ。貴女は騙されているのだ!」
フィアスがしおれた茸を放り投げ、剣に思い切り刺し通す。すると、魔物の声が響き、しおれた茸は消滅した。
「は、花が茸に…それに…魔物の声が…」
「……尋ねるぞ。いつも今のきの…花を、妹に持っていってるのか?」
「いえ、毎日見舞いに行って…昨日見つけたのです。そうしたら妹が喜んで…気に入ったらしいのです」
フィアスは顔を引きつらせ、女性の手を掴んで走り出した。
「キャッ!?」
「あの茸魔物は毒を持っていて、毒の胞子…花粉を吸って三日たつと死ぬ。妹さんが危険だ!」
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