長編
「皆さん、誰が予想したことでしょうか?私達が………馬の群れに追いかけられるなんてーっ!」
「ブヒヒーン!」
「しかも魔物ー!」
「煩いぞ、沙姫。始まって早々俺に振り落とされて魔物にやられたいのか?」
「ごめんなさい。」
沙姫とウルフは馬魔物の群れから逃げていた。当然、沙姫はウルフの背中に乗っている。匂いで探している時、沙姫が馬を見てこっちにもまともな動物がいるんだと喜びの声をあげたら、馬がこちらに気付いて追いかけてきたのだ。どうやらこちらの世界での馬は、結構強気であり、何かを見つけると追いかける習性のある魔物らしい。
「くそっ、この俺についてこられるまで足が発達しているとは…石が盗まれたのと関係しているのか!?」
「いや、ただ単にウルフが運動不足なだけかもしれないよ。」
「!!」
ウルフはその言葉を聞き、もしそうだとしたら…とショックのあまり立ち止まってしまう。沙姫は慌てた。
「ウルフ!馬が…馬が追いついてくるよ!ι…あ、あんな下等魔物に負ける程、ウルフは弱かった!?」
「!」
弱かった…その言葉がウルフの根性に火をつけた。ウルフは沙姫を咥え、その場に降ろす。
「え、ウルフ?」
「……逃げてばかりでは…ロウルサーブの名がすたる!
地・大裂。」
ウルフは短く気を溜めると、前足を高く上げて一瞬後ろ足で立つ形になる。
「ウォォオオオ!!」
ウルフが雄叫びをあげ、前足を思い切り地面に叩き付ける。すると、地震が起きた後にビシビシと大きな地割れが馬に向かった。
「ブヒヒィッ!」
馬の群れは地割れに巻き込まれ、深い谷底に落ちて行ったり逃げたりする。ウルフはそれを見て鼻でふんとあしらうように笑った。
「この俺が馬ごときにやられるとでも思ったか、弱者め。」
「凄いやウルフ。」
沙姫はパチパチと拍手してウルフに飛び乗る。するとウルフは溜息をついて沙姫の方に顔を向けて睨んだ。
「そもそも、お前があんなことをしなければこんなことにはならなかったのだぞ?」
「ごめんなさい。」
これで謝るのは二回目だ。
「でもウルフ、石の匂いは大丈夫?微かな匂いだから少しでも違う匂いや変な匂いが入ったら石の匂いが分からなくなっちゃうんだよね?地面や砂の匂い、さっきいた馬の匂いとか空気の匂いとか……まざってない?」
「はっ!」
ウルフは鼻で辺りを嗅いでいく。ぐるりと一周、目を瞑って集中して………ウルフは目を開けた。
「さっきのベラニーの匂いが…まざってしまっている…ッ!」
ウルフは人間が机の上に突っ伏して腕の中に顔を埋めるように、地面に突っ伏し、前足の中に顔を埋め、涙を滝のようにだして泣き出す。ベラニーというのは…言うまでもない、さっきの馬の魔物の種類(魔種)だ。
「あー…石の匂いが途切れちゃったらお終いだよね……。」
沙姫は冷汗をたらして苦笑いしながらよしよしと泣いているウルフの頭を撫でる。魔物にとって獲物の匂いが途切れる程、致命的な痛手はないのだ。
「これからどうすればいいのだ…!?」
ウルフは頭を撫でられて落ち着いたのか、涙を拭って沙姫に問う。沙姫はウルフの上で暫く考えた。
(石は匂いでしか探せない…しかもその匂いは少ししか分からないし…私は石を見たことないから他に方法が思い付かないよ……。)
「……そうか、沙姫は石を見た事がなかったのだな。ならば教えてやる…これが石だ。
空・思想伝心。」
「うっ……?」
ウルフはまるで沙姫の心を読んだみたいに言い、素早く気を溜めて技を使う。沙姫の脳裏にきらきらとまばゆい光を放つ石が浮かび上がった。それは青色や深緑…様々な色があった。中には地球でも珍しくはないルビーやサファイヤ、水晶など…とにかく石は色々だ。その石が頭から消え、沙姫はウルフに言う。
「こんなに光るならカラス類の魔物がいくつか持ってそうだね。それと、一番匂いに敏感なロウルサーブを連れてけば…すぐ見つかるかもしれないよ。」
「おぉ!流石は沙姫、頭脳だけはあるな。だからこの羽が大量に石の置いてある壇(ダン)に落ちていたのか!」
「え?」
ウルフは石集め用に長老から預かった皮の鞄から黒い羽を取り出して沙姫に渡す……紛れもないカラスの羽だということは見た瞬間、すぐに分かった。沙姫はいとも簡単に答えが見つかったことに唸りをあげる。
「こんな頼りになる動かぬ証拠があればとっとと出して欲しかった!これさえあれば最初からカラスが取ったって分かるよ!」
「そうなのか?」
ウルフがきょとんとしているのを見た沙姫は、思わずウルフの上でへばった。
「うわーん。ウルフは極度の馬鹿だぁ~!」
「馬鹿とは何だ!俺はこう見えてもロウルサーブで1番鼻が利くのだぞ!……カラスか…そうなると、ロークアーシャがやったことになるな。」
ウルフの言葉に、沙姫はすっとんきょうな声をだす。
「ウルフが一番鼻がいいんだ!?驚き!」
「噛まれたいか?」
「ごめんなさい。」
これで三回目である。
「それで…ロッカー?」
「はぁ!?」
今度はウルフが沙姫に呆れることとなった。いくらなんでも酷い間違いである。
「ロークアーシャだ、ロークアーシャ!ロッカーって何だ。地球のガッキーにある物置の魔物ってどんなだ!?」
「ローソクアーシャかぁ。それからガッキーじゃなくて学校だよ。」
「一文字違う。ソはいらん!…学校か。お前につられて間違えたぞ。」
「つられるものなんだ?」
「……………。」
お互い間違えまくりだ。ウルフは暫く黙ってからこう言った。
「…ロークアーシャという魔種は、特に光り物を好んでいてな。………くそっ…!今考えたらよりによって奴等か!」
ウルフは歯ぎしりをして悔しがる。ウルフの両耳を掴んで沙姫は尋ねた。
「よりによって奴等…ってことは、何か繋がりがあるの?」
「繋がりも何も…ロウルサーブの石を前から狙っていたのだ。」
沙姫がふーんと納得すると、ウルフが張り切って言う。
「よし、あくまでも推測に過ぎないが…行ってみる価値はある!沙姫、一旦俺達の基地に戻り、長老に伝えてから、奴等の住みかへ向かうぞ!」
「おー。(棒読み)」
「……やる気なさそうだな…ι掴まっていろ。飛ばすぞ!」
ウルフは足に力を入れ……空へと飛ぶ。そのまま上へと駆け出した。
「え、あれ?飛ばすぞって……駆空(カックウ)!?うわぁああっ!ι」
沙姫は飛ばすぞの意味を分かっていなかったため、バランスを崩す。ウルフはそんな彼女を呆れながら咥えて背中に乗せた。
「全く、世話の焼ける奴だ。」
「有難うウルフ、助かったよ。」
沙姫がそう言うと、ウルフは駆空しながら耳をぴくりとさせた。嬉しいのだろう、沙姫はそれが一瞬で理解できた。ウルフの感情が表れる仕草を三ヶ月で頭に叩き込んだ彼女だからこそ、理解できたのだ。素人が見てもロウルサーブの感情は尻尾でしか分からない。
「今度はしっかり掴まっていろよ?」
「分かったよ。」
こうして、沙姫とウルフはロウルサーブの基地に戻る(?)事となった。
「……正しくは『行く』じゃないかな。私は初めてだし…。」
「だろうな。書き直せ。」
……こうして、沙姫とウルフはロウルサーブの基地に行く事となったι
「ブヒヒーン!」
「しかも魔物ー!」
「煩いぞ、沙姫。始まって早々俺に振り落とされて魔物にやられたいのか?」
「ごめんなさい。」
沙姫とウルフは馬魔物の群れから逃げていた。当然、沙姫はウルフの背中に乗っている。匂いで探している時、沙姫が馬を見てこっちにもまともな動物がいるんだと喜びの声をあげたら、馬がこちらに気付いて追いかけてきたのだ。どうやらこちらの世界での馬は、結構強気であり、何かを見つけると追いかける習性のある魔物らしい。
「くそっ、この俺についてこられるまで足が発達しているとは…石が盗まれたのと関係しているのか!?」
「いや、ただ単にウルフが運動不足なだけかもしれないよ。」
「!!」
ウルフはその言葉を聞き、もしそうだとしたら…とショックのあまり立ち止まってしまう。沙姫は慌てた。
「ウルフ!馬が…馬が追いついてくるよ!ι…あ、あんな下等魔物に負ける程、ウルフは弱かった!?」
「!」
弱かった…その言葉がウルフの根性に火をつけた。ウルフは沙姫を咥え、その場に降ろす。
「え、ウルフ?」
「……逃げてばかりでは…ロウルサーブの名がすたる!
地・大裂。」
ウルフは短く気を溜めると、前足を高く上げて一瞬後ろ足で立つ形になる。
「ウォォオオオ!!」
ウルフが雄叫びをあげ、前足を思い切り地面に叩き付ける。すると、地震が起きた後にビシビシと大きな地割れが馬に向かった。
「ブヒヒィッ!」
馬の群れは地割れに巻き込まれ、深い谷底に落ちて行ったり逃げたりする。ウルフはそれを見て鼻でふんとあしらうように笑った。
「この俺が馬ごときにやられるとでも思ったか、弱者め。」
「凄いやウルフ。」
沙姫はパチパチと拍手してウルフに飛び乗る。するとウルフは溜息をついて沙姫の方に顔を向けて睨んだ。
「そもそも、お前があんなことをしなければこんなことにはならなかったのだぞ?」
「ごめんなさい。」
これで謝るのは二回目だ。
「でもウルフ、石の匂いは大丈夫?微かな匂いだから少しでも違う匂いや変な匂いが入ったら石の匂いが分からなくなっちゃうんだよね?地面や砂の匂い、さっきいた馬の匂いとか空気の匂いとか……まざってない?」
「はっ!」
ウルフは鼻で辺りを嗅いでいく。ぐるりと一周、目を瞑って集中して………ウルフは目を開けた。
「さっきのベラニーの匂いが…まざってしまっている…ッ!」
ウルフは人間が机の上に突っ伏して腕の中に顔を埋めるように、地面に突っ伏し、前足の中に顔を埋め、涙を滝のようにだして泣き出す。ベラニーというのは…言うまでもない、さっきの馬の魔物の種類(魔種)だ。
「あー…石の匂いが途切れちゃったらお終いだよね……。」
沙姫は冷汗をたらして苦笑いしながらよしよしと泣いているウルフの頭を撫でる。魔物にとって獲物の匂いが途切れる程、致命的な痛手はないのだ。
「これからどうすればいいのだ…!?」
ウルフは頭を撫でられて落ち着いたのか、涙を拭って沙姫に問う。沙姫はウルフの上で暫く考えた。
(石は匂いでしか探せない…しかもその匂いは少ししか分からないし…私は石を見たことないから他に方法が思い付かないよ……。)
「……そうか、沙姫は石を見た事がなかったのだな。ならば教えてやる…これが石だ。
空・思想伝心。」
「うっ……?」
ウルフはまるで沙姫の心を読んだみたいに言い、素早く気を溜めて技を使う。沙姫の脳裏にきらきらとまばゆい光を放つ石が浮かび上がった。それは青色や深緑…様々な色があった。中には地球でも珍しくはないルビーやサファイヤ、水晶など…とにかく石は色々だ。その石が頭から消え、沙姫はウルフに言う。
「こんなに光るならカラス類の魔物がいくつか持ってそうだね。それと、一番匂いに敏感なロウルサーブを連れてけば…すぐ見つかるかもしれないよ。」
「おぉ!流石は沙姫、頭脳だけはあるな。だからこの羽が大量に石の置いてある壇(ダン)に落ちていたのか!」
「え?」
ウルフは石集め用に長老から預かった皮の鞄から黒い羽を取り出して沙姫に渡す……紛れもないカラスの羽だということは見た瞬間、すぐに分かった。沙姫はいとも簡単に答えが見つかったことに唸りをあげる。
「こんな頼りになる動かぬ証拠があればとっとと出して欲しかった!これさえあれば最初からカラスが取ったって分かるよ!」
「そうなのか?」
ウルフがきょとんとしているのを見た沙姫は、思わずウルフの上でへばった。
「うわーん。ウルフは極度の馬鹿だぁ~!」
「馬鹿とは何だ!俺はこう見えてもロウルサーブで1番鼻が利くのだぞ!……カラスか…そうなると、ロークアーシャがやったことになるな。」
ウルフの言葉に、沙姫はすっとんきょうな声をだす。
「ウルフが一番鼻がいいんだ!?驚き!」
「噛まれたいか?」
「ごめんなさい。」
これで三回目である。
「それで…ロッカー?」
「はぁ!?」
今度はウルフが沙姫に呆れることとなった。いくらなんでも酷い間違いである。
「ロークアーシャだ、ロークアーシャ!ロッカーって何だ。地球のガッキーにある物置の魔物ってどんなだ!?」
「ローソクアーシャかぁ。それからガッキーじゃなくて学校だよ。」
「一文字違う。ソはいらん!…学校か。お前につられて間違えたぞ。」
「つられるものなんだ?」
「……………。」
お互い間違えまくりだ。ウルフは暫く黙ってからこう言った。
「…ロークアーシャという魔種は、特に光り物を好んでいてな。………くそっ…!今考えたらよりによって奴等か!」
ウルフは歯ぎしりをして悔しがる。ウルフの両耳を掴んで沙姫は尋ねた。
「よりによって奴等…ってことは、何か繋がりがあるの?」
「繋がりも何も…ロウルサーブの石を前から狙っていたのだ。」
沙姫がふーんと納得すると、ウルフが張り切って言う。
「よし、あくまでも推測に過ぎないが…行ってみる価値はある!沙姫、一旦俺達の基地に戻り、長老に伝えてから、奴等の住みかへ向かうぞ!」
「おー。(棒読み)」
「……やる気なさそうだな…ι掴まっていろ。飛ばすぞ!」
ウルフは足に力を入れ……空へと飛ぶ。そのまま上へと駆け出した。
「え、あれ?飛ばすぞって……駆空(カックウ)!?うわぁああっ!ι」
沙姫は飛ばすぞの意味を分かっていなかったため、バランスを崩す。ウルフはそんな彼女を呆れながら咥えて背中に乗せた。
「全く、世話の焼ける奴だ。」
「有難うウルフ、助かったよ。」
沙姫がそう言うと、ウルフは駆空しながら耳をぴくりとさせた。嬉しいのだろう、沙姫はそれが一瞬で理解できた。ウルフの感情が表れる仕草を三ヶ月で頭に叩き込んだ彼女だからこそ、理解できたのだ。素人が見てもロウルサーブの感情は尻尾でしか分からない。
「今度はしっかり掴まっていろよ?」
「分かったよ。」
こうして、沙姫とウルフはロウルサーブの基地に戻る(?)事となった。
「……正しくは『行く』じゃないかな。私は初めてだし…。」
「だろうな。書き直せ。」
……こうして、沙姫とウルフはロウルサーブの基地に行く事となったι