第二話『狙われました』

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クロ



 今までも放浪の旅でよった街の一番安い宿に泊まってきたクロだったが泊まる初日に掃除をする羽目になると思っても見なかった。ゴロツキ風の男から助けたアキンドの経営する宿は汚いのが、玄関だけではなくお客が泊まる部屋さえも者が散乱していて汚らしかった。これは客が寄り付かなくなるのも頷ける。
 長期間ではないといえ、宿代は無料にしてもらったのだから滞在する間は清潔にしておこうとクロは第四層のお店で買ってきた用具を手に掃除を始めた。ついでとばかりに他の部屋や玄関も掃除することにした。

 「いやはや、助かりますぜ。お客様」

 クロが掃除する姿をアキンドはありがたや、と仏様に祈るように手を合わせて眺めていた。本来なら宿主である貴方がすべき仕事では?と口にしかけたが無料で泊める権利を剥奪される可能性を考えて、抑えた。
 聞けばこのアキンド、元は第三層の店で商いをしていたが手につけていた事業に失敗して借金を帳消しにする代わりに下層に落とされたのだという。それ以来真面目に商売をするのが馬鹿らしいと店が潰れない程度に幽霊屋敷同然の宿を構え従業員も雇わず、一人で経営していたとのことだった。

 (クロが訪れたのは博打に行く日で本来なら店はお休みだった。本当に経営する気はあるのか)

 外装内装ともに最低の宿ではある。だが宿泊費さえ払えば後は好きに使ってもよいとある意味自由なところだ。
 アキンドの命を救った手前があるので宿泊費も払わなくてよいクロにとっては実質全て無料ではあるのだが、掃除や食事は自分で用意しなくてはいけないし、それらに必要な道具を揃えるなど、日毎かかる食費を考えたが宿代を払うのと大して変わらないのでは?と感じた。しかし払わなくてもいいと許可しているのならそれに越したことはないと思い直しクロは疑念を胸にしまっておくことにした。
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