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　クロは以前滞在した街で一時世話になったアキンドから是非とも足を運ぶべきだと進められ、そこへ向かって砂嵐が吹き荒ぶ大地を数日間歩いていた。そして今やっと、その目的地へと辿り着いた。

　「ここが、虹雅渓ですか」

　空にまだ戦があった頃、飛んでいた戦艦が落ちてできた跡地から発展した街と言われており、何もなかった場所からアキンドが整備を進め、住居や食、芸術などを興し、いつしか巨大な街ができた。戦後できたいくつものアキンドの街でも、虹雅渓は一番に栄えていると有名なところであった。
　街に入ってあたりを見渡せば以前滞在した街とは比べ物にならないほど、人々と出店が軒を連ね、街は彼らの発する活気で溢れている。忙しくなく動くのは主にそこで暮らす民やアキンド達で、ゆっくりと歩いているのは刀を腰に差したサムライたちだけである。
　笑顔であふれるアキンドたちと違ってサムライたちはどこか疲れたような表情をしているのは気のせいだろうか。
　宛のない放浪の旅をしているクロは世話になったアキンドの勧めもあることだ、としばらくはここに留まって過ごしてみることにした。
　手始めにまずは宿かと懐から出した袋の中にある所持金を確認して、安くて雨風凌げる場所であればいいと、宿を探すため歩き出した。