第四話『助けられました』
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◆
クロがウキョウへ渡されてから翌日のことだった。いつもの如くアヤマロの護衛についているキュウゾウとヒョーゴのもとに、テッサイがやってきた。
「暫し、よいか」
アヤマロは向こうの和室でアキンドと商売の話をしている。わざわざ二人のもとに訪ねてきたのはサムライに用があるからだ。
隣に正座をするキュウゾウは無表情で、両膝に乗せた手を軽く握ったまま動かず。テッサイが来ても視線も上げなかった。相手に用事を聞くのはいつもの通り、ヒョーゴだった。
「テッサイ殿、どうされたのだ?」
「お主等に処理を頼みたい」
「処理?」
ああ、と頷いてテッサイが向こうに手招きすると、かむろ衆が担架を押してやってきた。
一体何だ、とヒョーゴは担架に乗せられてきた者をみて体を強張らせた。
「無刀流ではないか」
ヒョーゴの言葉にキュウゾウは顔を上げ、立ち上がると担架の上で眠るクロを見た。出会った時の黒いコート姿ではなく、白い患者服に着替えさせられており、覗く両腕には包帯が巻かれていた。斬り合いで血に塗れた身体は清潔にされており、静かに寝息を立てていた。薬で眠らされているのだ。
「そうだ。お主等にこの女の処理を任せよ、と若から命令を受けてここにきたのだ」
「テッサイ殿、それは本当なのか?」
「……若はこの女がお気に召さなかったようでな」
眉をひそめて苦々しい口ぶりで言うテッサイに嘘の雰囲気は感じられなかった。何があったのか、と聞くのも憚られる程に暗さを帯びていた。
これまで金で買った女、攫ってきた女をウキョウはモノにしてきたが、自ら捨てることは今までで一度もなかった。信じられん、とヒョーゴは戸惑った。
「最低限は医者に治療させたが、これ以上は若に申し開きが立たぬ。後は連れてきたお主らに彼女の処遇を任せる」
テッサイの言葉に困惑するヒョーゴの隣で今まで黙ってクロを見つめていたキュウゾウが動いた。担架の近くにいたかむろ衆が慌てて避けるも気にも留めず彼はクロを横向きに、両腕で背中と膝裏を持ち上げ抱えた。所謂、お姫様抱っこと呼ばれていることしているが、そのような名称をキュウゾウは知る由もない。
「きゅ、キュウゾウ殿!?」
「おい、そいつをどうするつもりだ?」
「連れていく」
「連れていくって、お前なあ……」
どこへだ、とヒョーゴが呆れながらきいた。
戦で同じ部隊にいた時から、戦後同じアキンドに仕える同僚になった今でも変わらず無表情で、無口で、何を考えているのか。キュウゾウとは十年以上付き合いのあるヒョーゴだが、彼でさえも分からないことが多い。時折、突拍子もないことをいう朋友だが今回ばかりは本当に分からなかった。
「俺の部屋に」
「は?」
こちらで処理はする。行き先は伝えた。この話は以上で終わりだ。そう言ったとばかりにキュウゾウは足早に去っていった。ハッとしたヒョーゴは、女は俺とキュウゾウで何とかする、と慌てて追いかけていった。
一体何の騒ぎだとアヤマロが部屋から様子を見に出てきたので、テッサイは何でもありませんとお気になさらずと頭を下げてお詫びした。無刀流の女を連れていった彼らの後をテッサイは黙ってみていた。
クロがウキョウへ渡されてから翌日のことだった。いつもの如くアヤマロの護衛についているキュウゾウとヒョーゴのもとに、テッサイがやってきた。
「暫し、よいか」
アヤマロは向こうの和室でアキンドと商売の話をしている。わざわざ二人のもとに訪ねてきたのはサムライに用があるからだ。
隣に正座をするキュウゾウは無表情で、両膝に乗せた手を軽く握ったまま動かず。テッサイが来ても視線も上げなかった。相手に用事を聞くのはいつもの通り、ヒョーゴだった。
「テッサイ殿、どうされたのだ?」
「お主等に処理を頼みたい」
「処理?」
ああ、と頷いてテッサイが向こうに手招きすると、かむろ衆が担架を押してやってきた。
一体何だ、とヒョーゴは担架に乗せられてきた者をみて体を強張らせた。
「無刀流ではないか」
ヒョーゴの言葉にキュウゾウは顔を上げ、立ち上がると担架の上で眠るクロを見た。出会った時の黒いコート姿ではなく、白い患者服に着替えさせられており、覗く両腕には包帯が巻かれていた。斬り合いで血に塗れた身体は清潔にされており、静かに寝息を立てていた。薬で眠らされているのだ。
「そうだ。お主等にこの女の処理を任せよ、と若から命令を受けてここにきたのだ」
「テッサイ殿、それは本当なのか?」
「……若はこの女がお気に召さなかったようでな」
眉をひそめて苦々しい口ぶりで言うテッサイに嘘の雰囲気は感じられなかった。何があったのか、と聞くのも憚られる程に暗さを帯びていた。
これまで金で買った女、攫ってきた女をウキョウはモノにしてきたが、自ら捨てることは今までで一度もなかった。信じられん、とヒョーゴは戸惑った。
「最低限は医者に治療させたが、これ以上は若に申し開きが立たぬ。後は連れてきたお主らに彼女の処遇を任せる」
テッサイの言葉に困惑するヒョーゴの隣で今まで黙ってクロを見つめていたキュウゾウが動いた。担架の近くにいたかむろ衆が慌てて避けるも気にも留めず彼はクロを横向きに、両腕で背中と膝裏を持ち上げ抱えた。所謂、お姫様抱っこと呼ばれていることしているが、そのような名称をキュウゾウは知る由もない。
「きゅ、キュウゾウ殿!?」
「おい、そいつをどうするつもりだ?」
「連れていく」
「連れていくって、お前なあ……」
どこへだ、とヒョーゴが呆れながらきいた。
戦で同じ部隊にいた時から、戦後同じアキンドに仕える同僚になった今でも変わらず無表情で、無口で、何を考えているのか。キュウゾウとは十年以上付き合いのあるヒョーゴだが、彼でさえも分からないことが多い。時折、突拍子もないことをいう朋友だが今回ばかりは本当に分からなかった。
「俺の部屋に」
「は?」
こちらで処理はする。行き先は伝えた。この話は以上で終わりだ。そう言ったとばかりにキュウゾウは足早に去っていった。ハッとしたヒョーゴは、女は俺とキュウゾウで何とかする、と慌てて追いかけていった。
一体何の騒ぎだとアヤマロが部屋から様子を見に出てきたので、テッサイは何でもありませんとお気になさらずと頭を下げてお詫びした。無刀流の女を連れていった彼らの後をテッサイは黙ってみていた。