第三話『斬り合いました』
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◆
――貴方、サムライですね。
目の前に佇む紅いコートの男、キュウゾウを見て、そう言ったクロの頭には終戦後に数回のみの会話を交わし別れた島田カンベエの姿が浮かんだ。
その時と同じ匂いを感じとったのだろうか。彼をサムライと思ったのは。戦が無い時代になろうとも、空を忘れぬ人たちを。
「斬ったのか」
確認のためか、周りに転がっている男たちを一瞥してキュウゾウは呟いた。
「はい、斬りました」
クロは手に付いた血を払い落とすと歩き出した。
相手も同じように歩を進め、二人で円を描くように移動する。そして一定の距離で立ち止まり、向かい合った。
キュウゾウは背負った2本の刀を抜き、構えた。
「抜け」
「抜刀は、僕には不要です」
「……斬られたいのか」
切っ先を向け、殺気のこもった鋭い目で見据えた。
クロの実力が先ほど相手をした者たちとは比べ物にならないことは周囲に転がる骸の切り口から明白だった。キュウゾウの放つ殺気に震えず、向けられる刀にも恐怖していない。武器も構えることもなく、青い目で女は見返してきた。
――何だ、コイツは。
「――僕は、刀です」
「刀だと」
「はい。自身を刃に相手を斬ります故」
――どうぞ、いつでもかかってきてください。
言外にそう伝えた。
無表情だった彼女の口元が差した陰影のせいか。
薄く笑ったように見えた。
「後悔するな」
「いたしません」
赤褐色の目と青色の目がかち合うこと数秒。二人は同時に踏み込んで、地を蹴った。
先手はキュウゾウがとり、一刀を振り下ろした。
それをクロは体を回転させて刃を躱し、その勢いで回し蹴り――足刀を二連撃で繰り出した。
キュウゾウはそれを二本の刀で受け止めると、刀を交差させて振った。振られた刃をクロは屈んで避け相手の胸元へ目掛けて貫手を放つが素早く後退され、空を斬る。
それを隙にとキュウゾウの太刀がクロを再び襲うが宙返りで避けた。すとんと着地すると斬り込んできたキュウゾウをクロは迎え撃ち、両肘での打撃技を連続で放った。
――貴方、サムライですね。
目の前に佇む紅いコートの男、キュウゾウを見て、そう言ったクロの頭には終戦後に数回のみの会話を交わし別れた島田カンベエの姿が浮かんだ。
その時と同じ匂いを感じとったのだろうか。彼をサムライと思ったのは。戦が無い時代になろうとも、空を忘れぬ人たちを。
「斬ったのか」
確認のためか、周りに転がっている男たちを一瞥してキュウゾウは呟いた。
「はい、斬りました」
クロは手に付いた血を払い落とすと歩き出した。
相手も同じように歩を進め、二人で円を描くように移動する。そして一定の距離で立ち止まり、向かい合った。
キュウゾウは背負った2本の刀を抜き、構えた。
「抜け」
「抜刀は、僕には不要です」
「……斬られたいのか」
切っ先を向け、殺気のこもった鋭い目で見据えた。
クロの実力が先ほど相手をした者たちとは比べ物にならないことは周囲に転がる骸の切り口から明白だった。キュウゾウの放つ殺気に震えず、向けられる刀にも恐怖していない。武器も構えることもなく、青い目で女は見返してきた。
――何だ、コイツは。
「――僕は、刀です」
「刀だと」
「はい。自身を刃に相手を斬ります故」
――どうぞ、いつでもかかってきてください。
言外にそう伝えた。
無表情だった彼女の口元が差した陰影のせいか。
薄く笑ったように見えた。
「後悔するな」
「いたしません」
赤褐色の目と青色の目がかち合うこと数秒。二人は同時に踏み込んで、地を蹴った。
先手はキュウゾウがとり、一刀を振り下ろした。
それをクロは体を回転させて刃を躱し、その勢いで回し蹴り――足刀を二連撃で繰り出した。
キュウゾウはそれを二本の刀で受け止めると、刀を交差させて振った。振られた刃をクロは屈んで避け相手の胸元へ目掛けて貫手を放つが素早く後退され、空を斬る。
それを隙にとキュウゾウの太刀がクロを再び襲うが宙返りで避けた。すとんと着地すると斬り込んできたキュウゾウをクロは迎え撃ち、両肘での打撃技を連続で放った。