第二話『狙われました』
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◆
「ぐうう……!」
「ウキョウはどこにいますか」
胸倉を掴んで締め上げた男へクロは手刀を眼前に突きつけて詰問していた。周りには彼女に斬られ絶命した男達の死体が散らばっている。
皆クロを追い詰めたとばかりに嬉々として飛び込んで言った者たちだ。誘い込まれたとはつゆ知らず、待っていたのは、にべもない斬撃だった。
ウキョウに気に入れられたからと理解できない理由で追われるのはもう懲り懲りだった。ここ虹雅渓を生きて出るためにはことの事態を引き起こした元凶たる人物を殺すと決め、クロは故意にひとりを残して全員を亡き者とした。
居場所を聞き出して即刻殺しにいく算段だ。生き残ったためにそのひとりに選ばれてしまった不運な男は抵抗できぬよう、クロが両腕を切り落としていた。生身の身体であれば死んでもおかしくない状態であったが、男が偶然にも腕を機械にしていたため、命は失われずに済んでいた。
クロは胸倉を掴む力を強めるともう一度聞きますと言った。
「ウキョウは、今どこにいますか?」
「し、知っていても誰が答えるか、この化け物……!」
刀もなく、武器もなくクロが舞うように動けば血を吹き出して仲間が倒れていく光景を男は見ているしかできなかった。
持っていた刀は破壊され、次々と繰り出される手刀や蹴りで斬られ、突かれ、絶命していく。彼女の駆けたところには屍が転がり、積み上がっていく。それはまるで地獄の鬼の所業だ。
この女は、このモノは、人ではない。
黒い獣だ。化け物だ。そう思えてならなかった。
「否定します。僕は化け物ではありません。刀です」
「どっちだっていい!武器もねえくせに相手を斬り殺せるなんて、人の業じゃねえよこの化け物!」
喚く男に対して、クロは表情を変えない。
罵声に感情を荒げず、冷静に淡々と言葉を紡いだ。
「貴方達に言われたくはありません。そちらもウキョウの命により、これまで幾度となく、他人の命を奪ってきたのではありませんか?」
だから同じ穴のムジナでは?
クロは首を傾げた。刀を持って立ち向かってくるのならば、斬ること、斬られること、それにより生きるか死ぬか決するのは当たり前だ。
その覚悟を持って己に向かってきたのではないかと思ったが、男の口ぶりからそうではないようだ。
今まで散々やってきたのは相手を痛めつけ、脅す一方的な暴力行為であったのだろう。
青い瞳が男を冷たく睨めつけたが、彼はもうクロをクソアマや化け物などと罵詈雑言を浴びせるだけの機械となりつつあった。
これ以上聞き出そうと責めても意味はない。
クロは躊躇いもなく男の喉を刺して水平に振った。ビチャリ、と血飛沫が飛んで壁を赤く染める。結局、襲撃の元凶であるウキョウの場所を聞き出すことはできなかった。
兄のシロならば、相手の情報を引き出す話術に長けてはいたが、対して自分は斬ることしかできない。
刀であるのだからそれでも良いのだが、もうこの世にはいない者へ助言を願うなど無意味なことを考えるくらいに、あまりに杜撰な己のやり方に嫌気を感じていた。
「兄さんなら上手くやりそうですが、僕には難しい」
やはり自分にできるは斬ることのみか。
諦観の思いを抱きながら血塗られた手を見つめていたクロだったが路地裏の出口の方向に人の気配を感じ、振り返った。
その先にいたのは異国の者と思わせる金の髪に紅いコートを身に纏い、2本の刀を背負った男。先刻、主の命で集団組織の排除を終えてきたアヤマロの用心棒が一人、キュウゾウだった。
クロの青い瞳が彼を明瞭にとらえた瞬間、次の言葉が口をついて出ていた。
「――貴方、サムライですね」
幼い頃より刀として生き、人を斬り続けてきた女とアキンドの世でも剣の道を歩み続ける孤高の男が。
転がる骸と血で染まった無惨な場所にて出会った。
「ぐうう……!」
「ウキョウはどこにいますか」
胸倉を掴んで締め上げた男へクロは手刀を眼前に突きつけて詰問していた。周りには彼女に斬られ絶命した男達の死体が散らばっている。
皆クロを追い詰めたとばかりに嬉々として飛び込んで言った者たちだ。誘い込まれたとはつゆ知らず、待っていたのは、にべもない斬撃だった。
ウキョウに気に入れられたからと理解できない理由で追われるのはもう懲り懲りだった。ここ虹雅渓を生きて出るためにはことの事態を引き起こした元凶たる人物を殺すと決め、クロは故意にひとりを残して全員を亡き者とした。
居場所を聞き出して即刻殺しにいく算段だ。生き残ったためにそのひとりに選ばれてしまった不運な男は抵抗できぬよう、クロが両腕を切り落としていた。生身の身体であれば死んでもおかしくない状態であったが、男が偶然にも腕を機械にしていたため、命は失われずに済んでいた。
クロは胸倉を掴む力を強めるともう一度聞きますと言った。
「ウキョウは、今どこにいますか?」
「し、知っていても誰が答えるか、この化け物……!」
刀もなく、武器もなくクロが舞うように動けば血を吹き出して仲間が倒れていく光景を男は見ているしかできなかった。
持っていた刀は破壊され、次々と繰り出される手刀や蹴りで斬られ、突かれ、絶命していく。彼女の駆けたところには屍が転がり、積み上がっていく。それはまるで地獄の鬼の所業だ。
この女は、このモノは、人ではない。
黒い獣だ。化け物だ。そう思えてならなかった。
「否定します。僕は化け物ではありません。刀です」
「どっちだっていい!武器もねえくせに相手を斬り殺せるなんて、人の業じゃねえよこの化け物!」
喚く男に対して、クロは表情を変えない。
罵声に感情を荒げず、冷静に淡々と言葉を紡いだ。
「貴方達に言われたくはありません。そちらもウキョウの命により、これまで幾度となく、他人の命を奪ってきたのではありませんか?」
だから同じ穴のムジナでは?
クロは首を傾げた。刀を持って立ち向かってくるのならば、斬ること、斬られること、それにより生きるか死ぬか決するのは当たり前だ。
その覚悟を持って己に向かってきたのではないかと思ったが、男の口ぶりからそうではないようだ。
今まで散々やってきたのは相手を痛めつけ、脅す一方的な暴力行為であったのだろう。
青い瞳が男を冷たく睨めつけたが、彼はもうクロをクソアマや化け物などと罵詈雑言を浴びせるだけの機械となりつつあった。
これ以上聞き出そうと責めても意味はない。
クロは躊躇いもなく男の喉を刺して水平に振った。ビチャリ、と血飛沫が飛んで壁を赤く染める。結局、襲撃の元凶であるウキョウの場所を聞き出すことはできなかった。
兄のシロならば、相手の情報を引き出す話術に長けてはいたが、対して自分は斬ることしかできない。
刀であるのだからそれでも良いのだが、もうこの世にはいない者へ助言を願うなど無意味なことを考えるくらいに、あまりに杜撰な己のやり方に嫌気を感じていた。
「兄さんなら上手くやりそうですが、僕には難しい」
やはり自分にできるは斬ることのみか。
諦観の思いを抱きながら血塗られた手を見つめていたクロだったが路地裏の出口の方向に人の気配を感じ、振り返った。
その先にいたのは異国の者と思わせる金の髪に紅いコートを身に纏い、2本の刀を背負った男。先刻、主の命で集団組織の排除を終えてきたアヤマロの用心棒が一人、キュウゾウだった。
クロの青い瞳が彼を明瞭にとらえた瞬間、次の言葉が口をついて出ていた。
「――貴方、サムライですね」
幼い頃より刀として生き、人を斬り続けてきた女とアキンドの世でも剣の道を歩み続ける孤高の男が。
転がる骸と血で染まった無惨な場所にて出会った。