第二話『狙われました』
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◆
散策の末にやっと見晴らしの良い場所を見つけて、一人空を眺めていたクロは突然現れたサイボーグ男やサムライ達計三人に襲撃され『抵抗せずに大人しくついてこい』と言われた。
クロは三方向からくる攻撃を難なく躱して相手との距離を取るために宙返りに跳んだ。
誰の差し金ですかと聞けば虹雅渓の差配のご子息、ウキョウ様の命だと言われた。しかし名前を知らず、顔すらも知らないクロは首を傾げた。
「ウキョウさんという人が僕に何用ですか?」
「お前をお気に召したようだ。喜べ」
「若のもとへ来れば何不自由ない生活が送れるぞ」
「毎日贅沢し放題、一生安泰だ。ほら来いよ」
次々に誘いをかけられるがクロは即座に断った。
「お断りします。今でも十分自由ですから」
「バカめ。大人しくしていれば傷つかずに済んだものを。しかしお前、ただの女ではないな。何者だ」
先ほどの動きといい、男達に囲まれても怯えもせず、適度に間合いをとって無表情で場を見据えている。
このような女に出会ったのは初めての経験だった。これまでの放浪の道中でも『何者だ』と問われる度に返してきた言葉でクロは至極当たり前に答えた。
「僕は、刀です」
「………………は?」
言われたことが理解できず、呆ける男達の隙を狙ってクロはサイボーグ男の目の前へ瞬時に移動してその首をはねた。あまりの俊敏さに悲鳴も上がらなかった。その光景を見て残りの男達は絶句した。
まさか女に斬られるとは思わなかったこともあるがそれよりも斬ったのが『刀』ではなく『手刀』であることの方に驚いていた。機械の手なのか、仕込みの刃でも隠しているのかとも思ったが今しがた男の首を跳ねた手はどう見ても生身のものであった。
「ええい、くそ!」
飛んだ首が、ぼたりと地に落ちたタイミングで凍結が解けた一人がクロへ向かって走り、構えた刀を水平に振るった。だが。
「遅い」
刀はクロの手に掴まれて粉々に破壊され、狼狽えたところの隙をつかれて胸を貫手で貫かれた。それは的確に心臓を一突きしていた。
「ひ、ひいいい!」
抜いて真っ赤に染まった腕を刀のように構えて近づいてくる彼女にもう一人の男は恐怖に剣を取り落とし、地面に膝をついて震えていた。あまりに呆気なく死んでいった同僚の姿に未来の自分を見た。その時がすぐ訪れようとしている。俯いた男の目に女の靴が写った。
「貴方で最後のようですね」
そう言って腕を振り下ろそうとする彼女に、男は待ってくれ!と両手をついて頭を下げた。
「許してくれ、これは命令されただけだ! 俺がやりたくて襲っているわけじゃない!」
「嘘ですね。貴方の意思も感じますよ」
「ほ、本当だ! ウキョウ様に脅されたんだよ!」
「そうですか」
男は詫びとしてこれを受け取ってほしいと胸元に手を入れた。面を上げた男の顔に一瞬浮かんだ歪めた口元を青い目は見逃さなかった。
「受け取りやがれ!」
迫りくる刃を躱すとすかさず左の手刀で男を袈裟斬りにした。
「がはあ……バ、バカなッ……」
「やっぱり嘘でしたね。さようなら」
斬られた肩口から腹に至るまで血が吹き出して男は倒れた。クロは頬や顔に飛んで付着した血を死体の着物から切り取ったそれで拭い、腕を振って残りも払い落とすと地に伏した彼らを見下ろした。
地面は男たちの死体で血溜まりを作り、足元を赤く染め上げている。クロは小さくため息を吐いて空を見上げた。
「せっかく良い天気でしたのに……残念です」
またいずれ出直しますか、と呟いて去っていった。
散策の末にやっと見晴らしの良い場所を見つけて、一人空を眺めていたクロは突然現れたサイボーグ男やサムライ達計三人に襲撃され『抵抗せずに大人しくついてこい』と言われた。
クロは三方向からくる攻撃を難なく躱して相手との距離を取るために宙返りに跳んだ。
誰の差し金ですかと聞けば虹雅渓の差配のご子息、ウキョウ様の命だと言われた。しかし名前を知らず、顔すらも知らないクロは首を傾げた。
「ウキョウさんという人が僕に何用ですか?」
「お前をお気に召したようだ。喜べ」
「若のもとへ来れば何不自由ない生活が送れるぞ」
「毎日贅沢し放題、一生安泰だ。ほら来いよ」
次々に誘いをかけられるがクロは即座に断った。
「お断りします。今でも十分自由ですから」
「バカめ。大人しくしていれば傷つかずに済んだものを。しかしお前、ただの女ではないな。何者だ」
先ほどの動きといい、男達に囲まれても怯えもせず、適度に間合いをとって無表情で場を見据えている。
このような女に出会ったのは初めての経験だった。これまでの放浪の道中でも『何者だ』と問われる度に返してきた言葉でクロは至極当たり前に答えた。
「僕は、刀です」
「………………は?」
言われたことが理解できず、呆ける男達の隙を狙ってクロはサイボーグ男の目の前へ瞬時に移動してその首をはねた。あまりの俊敏さに悲鳴も上がらなかった。その光景を見て残りの男達は絶句した。
まさか女に斬られるとは思わなかったこともあるがそれよりも斬ったのが『刀』ではなく『手刀』であることの方に驚いていた。機械の手なのか、仕込みの刃でも隠しているのかとも思ったが今しがた男の首を跳ねた手はどう見ても生身のものであった。
「ええい、くそ!」
飛んだ首が、ぼたりと地に落ちたタイミングで凍結が解けた一人がクロへ向かって走り、構えた刀を水平に振るった。だが。
「遅い」
刀はクロの手に掴まれて粉々に破壊され、狼狽えたところの隙をつかれて胸を貫手で貫かれた。それは的確に心臓を一突きしていた。
「ひ、ひいいい!」
抜いて真っ赤に染まった腕を刀のように構えて近づいてくる彼女にもう一人の男は恐怖に剣を取り落とし、地面に膝をついて震えていた。あまりに呆気なく死んでいった同僚の姿に未来の自分を見た。その時がすぐ訪れようとしている。俯いた男の目に女の靴が写った。
「貴方で最後のようですね」
そう言って腕を振り下ろそうとする彼女に、男は待ってくれ!と両手をついて頭を下げた。
「許してくれ、これは命令されただけだ! 俺がやりたくて襲っているわけじゃない!」
「嘘ですね。貴方の意思も感じますよ」
「ほ、本当だ! ウキョウ様に脅されたんだよ!」
「そうですか」
男は詫びとしてこれを受け取ってほしいと胸元に手を入れた。面を上げた男の顔に一瞬浮かんだ歪めた口元を青い目は見逃さなかった。
「受け取りやがれ!」
迫りくる刃を躱すとすかさず左の手刀で男を袈裟斬りにした。
「がはあ……バ、バカなッ……」
「やっぱり嘘でしたね。さようなら」
斬られた肩口から腹に至るまで血が吹き出して男は倒れた。クロは頬や顔に飛んで付着した血を死体の着物から切り取ったそれで拭い、腕を振って残りも払い落とすと地に伏した彼らを見下ろした。
地面は男たちの死体で血溜まりを作り、足元を赤く染め上げている。クロは小さくため息を吐いて空を見上げた。
「せっかく良い天気でしたのに……残念です」
またいずれ出直しますか、と呟いて去っていった。