第五話
夢小説設定
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◆
俺の母上の姉であり、俺からみたら伯母にあたる鋼音ヨミが虹雅渓から出立して数日が経った。伯母上が去ったことで辻斬り事件は幕を閉じた。
サムライが斬り殺されたという話はめっきり聞かなくなった。
鋼音シキが実は人造人間だという話をキュウゾウにしたのはあの嘘つきマスターだった。どうやら前にあった事件で、俺を鋼音家専用の薬で眠らせて、診療所まで抱えて行った日に話して聞かせたらしい。
俺が機械なのではないかと奴は薄々感づいていたみたいで明かしても、特に驚きはしなかったようだ。そして人の血が体を動かす燃料になるのだと知っていた。だから寄り道してまでオンボロ宿にやってきたあの日、目の前で人差し指を噛んで切ってみせ、俺に血を飲ませたのか。部屋の布団で仰向けになって目を閉じて、その時のことを思い出してみる。
「まあ、味は悪くなかったかな……」
「みゃあ」
……って、今はそんなことを考えている場合じゃない。
別のことを考えないといけないから。
上体を起こして傍らで丸まっているソイツを見つめる。
「みゃう」
マスターの頼みで男達の暴力から助けたあの猫である。マスターの尽力も虚しく、飼い主になってくれる善い人は見つからずに終わった。なんでもこの猫は非常に珍しい種類みたいで、売ればたくさんの金が手に入るとか。それを理由に世話をしたり、面倒をみたりするのではなく、あくまでも猫を売ってお金を得るために引き取りたいという連中ばかりが飼い主候補に集まってしまい、マスターは全員からの申し出を拒否。よからぬ者達に任せるくらいなら自分で最期まで面倒みるわ、ということで、募集を停止。猫はここオンボロ宿の新しいお泊り猫になった。
これからしばらくの間は一緒に暮らしていくのだから、いつまでも猫と呼ぶのはどうかと思われ、コイツの名前を考えることにする。
さて、どうしようか。
「確かマスターがいうにはお前、オスらしいんだが……」
「みゃあ」
「よく『みゃあ』となくから『みゃあ』でどうだ」
「みゃあっ」
「いて、いて」
前足で連続攻撃を繰り出してきた。正直、痛くはなかったが思わず声を出してしまった。どうやら鳴き声からつけた名前は不満だったらしい。安易過ぎたか。ならば。
「これらはどうだ」
「みゃあ」
俺は思いつく限りの名前を声に出して、聞かせた。
猫太郎。猫次郎。猫三郎。猫五郎。猫八。猫べえ。猫吉。猫千代。猫助。猫紋治郎、猫郎治、猫四郎……と次々とこんな名前はどうだと言ってみたが、全部拒否された。
「どうだ」
「みゃあ……」
「何だ。どれも駄目か?」
「みゃあ」
駄目だ、というかのように首を振っているように見えたし、飽きられて毛繕いをし始めたので、仕方ないと小さく息を吐く。
俺の頭じゃあ良いものは思いつきそうにないからマサムネとかキクチヨとかヘイハチとか虹雅渓に来てから知り合えた(キュウゾウとヒョーゴは除く)者達に相談でもしてみるか。
はじめにマスターに相談してみたら「猫蔵なんてどうアル」と言われ、俺の方から断固拒否した。アイツを意識しているみたいですごい嫌だった。部屋に戻って、猫に頭を下げる。
「悪かった」
「みゃあ」
「ちゃんとまともな名前をつけてやるからな」
俺の部屋の布団の上でゴロゴロしている猫を撫でてやると「みゃあ」と返事があった。戦場にいた頃だったら会うことのない存在だ。これを機に縁起のいい名前をつけてやろう。名づけるにあたって、とりあえず。
「名前に猫をつけるのはやめるか」
「みゃふ」
そうだよ、と言われているような気がした。
俺の母上の姉であり、俺からみたら伯母にあたる鋼音ヨミが虹雅渓から出立して数日が経った。伯母上が去ったことで辻斬り事件は幕を閉じた。
サムライが斬り殺されたという話はめっきり聞かなくなった。
鋼音シキが実は人造人間だという話をキュウゾウにしたのはあの嘘つきマスターだった。どうやら前にあった事件で、俺を鋼音家専用の薬で眠らせて、診療所まで抱えて行った日に話して聞かせたらしい。
俺が機械なのではないかと奴は薄々感づいていたみたいで明かしても、特に驚きはしなかったようだ。そして人の血が体を動かす燃料になるのだと知っていた。だから寄り道してまでオンボロ宿にやってきたあの日、目の前で人差し指を噛んで切ってみせ、俺に血を飲ませたのか。部屋の布団で仰向けになって目を閉じて、その時のことを思い出してみる。
「まあ、味は悪くなかったかな……」
「みゃあ」
……って、今はそんなことを考えている場合じゃない。
別のことを考えないといけないから。
上体を起こして傍らで丸まっているソイツを見つめる。
「みゃう」
マスターの頼みで男達の暴力から助けたあの猫である。マスターの尽力も虚しく、飼い主になってくれる善い人は見つからずに終わった。なんでもこの猫は非常に珍しい種類みたいで、売ればたくさんの金が手に入るとか。それを理由に世話をしたり、面倒をみたりするのではなく、あくまでも猫を売ってお金を得るために引き取りたいという連中ばかりが飼い主候補に集まってしまい、マスターは全員からの申し出を拒否。よからぬ者達に任せるくらいなら自分で最期まで面倒みるわ、ということで、募集を停止。猫はここオンボロ宿の新しいお泊り猫になった。
これからしばらくの間は一緒に暮らしていくのだから、いつまでも猫と呼ぶのはどうかと思われ、コイツの名前を考えることにする。
さて、どうしようか。
「確かマスターがいうにはお前、オスらしいんだが……」
「みゃあ」
「よく『みゃあ』となくから『みゃあ』でどうだ」
「みゃあっ」
「いて、いて」
前足で連続攻撃を繰り出してきた。正直、痛くはなかったが思わず声を出してしまった。どうやら鳴き声からつけた名前は不満だったらしい。安易過ぎたか。ならば。
「これらはどうだ」
「みゃあ」
俺は思いつく限りの名前を声に出して、聞かせた。
猫太郎。猫次郎。猫三郎。猫五郎。猫八。猫べえ。猫吉。猫千代。猫助。猫紋治郎、猫郎治、猫四郎……と次々とこんな名前はどうだと言ってみたが、全部拒否された。
「どうだ」
「みゃあ……」
「何だ。どれも駄目か?」
「みゃあ」
駄目だ、というかのように首を振っているように見えたし、飽きられて毛繕いをし始めたので、仕方ないと小さく息を吐く。
俺の頭じゃあ良いものは思いつきそうにないからマサムネとかキクチヨとかヘイハチとか虹雅渓に来てから知り合えた(キュウゾウとヒョーゴは除く)者達に相談でもしてみるか。
はじめにマスターに相談してみたら「猫蔵なんてどうアル」と言われ、俺の方から断固拒否した。アイツを意識しているみたいですごい嫌だった。部屋に戻って、猫に頭を下げる。
「悪かった」
「みゃあ」
「ちゃんとまともな名前をつけてやるからな」
俺の部屋の布団の上でゴロゴロしている猫を撫でてやると「みゃあ」と返事があった。戦場にいた頃だったら会うことのない存在だ。これを機に縁起のいい名前をつけてやろう。名づけるにあたって、とりあえず。
「名前に猫をつけるのはやめるか」
「みゃふ」
そうだよ、と言われているような気がした。
