動き出す歯車
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「なにやってたんだ」
3人が到着して安堵するのも束の間、壮五が声を荒げて詰め寄った。
「あ…あのなぁ…
東京の平和を守って…おんぶして…王様プリン21個!!」
支離滅裂な環の回答を言い訳と捉えた壮五が目を細めてニコリと笑みを浮かべると環に詰め寄る。
「僕をバカにしてるのか??」
「…頑張ったのに」
やっぱり苦労をわかってもらえなかったと環は地団駄を踏む。そんな彼のフォローのために大和が口を挟む。
「色々あったんだよ…
TRIGGERの九条天にもあった」
「九条天……って」
「天にぃに…」
大和の口から出てきた名前に三月は驚きつつ、陸の方を見た。すると案の定、動揺した表情を浮かべている陸がいたのだった。
「お話はあとで、もうすぐ開演します
急ぎましょ」
一体、陸と何が関係してるのかと疑問を大和は抱くが、一織の鶴の一声で話は一先ず中断。8人は急いで会場内へ向かうのだった。
*****
「ちょっ!!ちょっと!!何やってるの!?」
ライブが終わり会場を出た琴音が目撃したのは、先ほどのTRIGGERの曲をダンスと共に歌うIDOLISH7のメンバーだった。ここ1ヵ月ばかり歌と踊り関連を禁止させられていたという彼らの事情を先ほど知っていたからこそ琴音は、ライブの高揚感のまま身体が動いてしまったのだろうと察することが出来たが、第3者から見たら客寄せにしか見えない。
琴音の脳裏に、唇を噛みしめて憤りを露わにして怒鳴り散らす姉鷺の姿が容易に浮かび上がった。
このままだと、色々と不味い!!
急いで止めないと!!
琴音は慌ててその現場へ走った。そして近くで見守っていた紡を見つけると勢いそのままに琴音は詰め寄った。
「マネージャーさん!!」
「あっ、あの時の…」
「今すぐ止めて!!…っ、やっぱダメ続けて」
突然の琴音の登場に紡は狼狽する。そして彼女の鬼のような形相に頷くまま、止めに入ろうと紡だが琴音は何故か180度意見を変えてしまった。
「…どっちですか!!」
「はぁ…一歩遅かったか」
大きな声を上げる紡の横で琴音は大きくため息を吐いて肩を落とした。もう既に周囲にいたライブ帰りのお客さんが興味を示し群がり始めていたのだ。7人が踊る姿に魅入っているのにこれを中途半端で止めたら反感を買いかねないと琴音は止めるのをあえてやめたのだ。
「遅かったって…」
「周り見てわからない??
彼らの歌と踊りにお客さんが寄ってきたんだよ
どう見てもこれはTRIGGER関係者から見たら客引きよ」
「そっ、そんなこと意図してやったわけでは…」
「貴女たちはそうかもしれないけど、第3者から見たらそうは見えないんだよ
だから止めようとしたのに…」
琴音の指摘に徐々に紡は青ざめていく。その最中、何度目かわからないため息を吐いた琴音のポケットから着信音が流れ出す。
あぁ…もう耳に入っちゃったか
激しくこの通話に出たくないと思いながらも琴音は渋々応答に応じた。途端に耳元に予想通りの人物の怒りの色を露わにした金切声が響く。このままでは鼓膜がキレると慌てて琴音は耳元からスマホを少し離した。
「…ッ!!琴音!!今どこにいるの!!」
「えっと…会場の外ですが…」
「貴女がいながら何やらしてるの!!
他事務所のグループに宣伝活動させるなんて」
「いや…止めに入ったんですけど、時既に…」
「言い訳なんか見苦しいわよ!!
サッサと何とかしなさい!!いいわね!!」
言い分をこれっぽっちも聞いてくれることなくブチっと切れた通話の音が虚しく琴音の鼓膜を揺らす。完全に八つ当たりを喰らっただけでなくとばっちりというダブルパンチに琴音は大きく項垂れた。そして丁度いいタイミングでか彼らは1曲歌い終えたらしく拍手が鳴り響く。
「あっ…あの…」
「…すいませーん!!八乙女事務所の者です!
ライブが終わり余韻に浸り騒ぎたい気持ちはわかりますが、もう夜分遅いためそのままお帰りください!お願いします!!」
紡が一体何事がと声を上げる前に、琴音は踊っていた彼らの前に立つと周囲にいるお客に帰るようにお願いした。テキパキとハキハキと喋る琴音に紡が唖然とする中、琴音の言葉を聞き入れた群がっていたお客はいつの間にか姿を消していた。
「貴女は一体…」
「琴音!?」
紡が何者なのだと聞こうと口を開いたタイミングで踊り終えた彼らが近寄ってきた。そんな彼らに琴音は仁王立ちになる。
「貴方達、なんでこんな会場の真ん前で踊ったりするの!?
馬鹿でしょ」
「…ッ!バカってなんだよ!!」
「七瀬さん!落ち着いてください!」
「なんでだよ!一織!!」
癇に障った陸が怒りを露わにするが、必死に一織がそれを宥める。そんな彼ら二人を横目に大和が恐る恐る口を開く。
「琴音、もしかして俺達やらかしたか?」
「大和さん、完全にやらかしてるよ
この騒動を耳にした社長とマネージャーはカンカンよ!」
盛大にため息を吐く琴音だが、この不味い状況を察していないのかテンションがやけに高い二人が上ずった声で琴音に話しかける。
「琴音!ワタシ達の踊りどうでしたか?」
「…ッ、最高だったよ!ナギ君」
「おぉ~、琴音っちが俺たちのダンス褒めてくれた」
「説教しようとしてるのに話をそらさないで!!」
ピクピクと眉を動かして聞いていた琴音はピシャリと彼らを一喝した。そんな仲よさげな4人の様子に三月が疑問を抱く。
「おいおい、これどういう状況だ?
八乙女事務所の人とどうして大和さんとナギと環は気軽に話せる仲なんだよ」
三月の御尤もな疑問に、琴音はゴホンと咳をついて間を作った後、全員を見渡して軽い挨拶をした。
「…失礼しました
ご紹介がまだでしたね、IDOLISH7の皆さん
私、天羽琴音と申します。
彼ら3人とは、この会場まで走った仲です」
「Oh、琴音!ワタシ達はもっと親密な仲でしょう?」
「ナギくん、誤解を招く発言しないで」
「琴音っちなんで怒ってるんだ…」
相変わらずのナギと環にこれ以上時間を割いてられないと琴音は匙を投げた。
「ハァ~……もういい
マネージャーさん」
「はい!!
あのっ、軽率な行動を取ってしまって申し訳…」
「私に謝っても意味ないからね
一応、私からも弁解しとくけど……」
頭を下げようとした紡を小さく制止させると琴音は取り出した紙切れにペンで何かを書くとそれを差し出した。
「多分怒り静められないから、ここに連絡とってアポイント取ってこっちで謝罪して」
「…っ、はい!」
苦笑いする琴音から紡は丁重にそれを受け取って大きく頷いた。
「んじゃ、私もう行くから…」
そう言い残すと琴音は逆の方向に歩き出した。見栄を張って弁解してあげると言ったからということもあるが、天の体調が心配のため様子を見に行きたいという気持ちの方が琴音は強かった。