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「Oh…イオリは?」
「…見てないけど」
「みっきーも見てない?」
「いや…見てない」
「…もしかして、一織歌うのを忘れた事、気にしてるんじゃないかな…」
「…携帯も繋がらない
…ッ!私、探してきます!」
「俺も行く!」
「全員で探しに行こう!」
ミュージックフェスタを終え一人何処かに消えてしまった一織を探しに一行は外へ。そして彼の名を呼んで探すが一向に見当たらなかった。皆が彼を思い浮かべて大丈夫かと心配した。
心当たりがないかと大和に聞かれた三月は、暫く思考した。そして、彼は自分が落ち込んだ時にいつも行っていて、一織も連れて行ったことがある場所にいるのではないかと踏んだ。
その場所は、ゼロ・アリーナ…
彼らは一筋の可能性を信じてその場所へ向けて足を速めた。
「一織!!一織!!!」
三月を先頭にゼロアリーナが見える場所に着く。そして海の向こう岸に見えるゼロアリーナを茫然と立ち尽くしてみていた一織を見つけると三月は彼の名を思い切り叫んだ。
その声にハッとした一織は、踵を返して走り出した。
「バカ!!何逃げてんだよ!!」
「…ッ!!離してください!」
すぐさま、逃げようとした一織に追いついた三月が彼の腕を掴んで止めた。
「一織……」
「わ…私のせいであんなことに…
貴方たちに合わせる顔がありません
みんな…あんなに、頑張っていたのに…
皆の夢を、1人台無しにしてしまった」
ごめんなさい…ッ…ごめんなさい
詫びるように嘆かれた一織の瞳からは滞ることなく涙が溢れた。
普段の大人びた一織から発せられた声とは思えないくらい弱弱しい声に皆悲痛な表情を浮かべた。
そして、初めて見る一織の泣く姿に釣られるように紡も必死に胸の奥にしまっていた感情があふれ出した。
「…一織」
「一織さんのせいじゃありません
現場が混乱することを想定して、私が十分な準備をするべきでした
みんな…本当に、ごめんなさい
ごめ…ッ…ごめんなさい…ヒック…」
「な…泣くなよ…
一織もマネージャーも…
泣いたって…ッ…しょうがねぇんだから」
「…ッ…うぅ…」
紡の嗚咽に、釣られてる形で必死に涙をこらえていた三月や陸も泣き出してしまった。他の者も暗い表情をしていた。
だが、その暗い空気を払拭しようとする者もいた。
「…OK」
小さく微笑むとナギは目の前にあった階段を上りきると、皆の方を向いた。
「…ナギさん!?」
「1、2…ワタシ踊ります
皆さんの好きな歌、歌います
なにがいいですか?」
「…何言ってるんだよ」
夜空に輝く満月をバックにしたナギから発せられた言葉に三月をはじめ一同は彼の取ろうとしている行動が読めなかった。
「Oh、ワタシアイドルです
人を笑顔にするのが仕事
皆さんに笑って欲しいです
ほら、ターン得意です
トゥエル、得意。バッククラップ、OK
でも…キックウォーク苦手」
「…ハハ」
皆を和ますようにおどけるナギに、思わず環が笑みを溢す。
「一人でも踊れます
でもまだ、一人では見栄えしない
うーーん…誰か手伝ってくれるといいですけど…
Oh、ガール!!」
困ったように顔を曇らせたナギは、唸りながら皆を見渡した。そして、彼は紡に手を差し伸べた。
「わ…ワタシ!?」
「Yes!カモン!
ハーイ、ラブリーガール
今夜は舞踏会…星空の下で貴女だけの王子になります」
階段を上ってきた紡の手をとってナギは近くに引き寄せた。そして、状況が掴めず困惑する紡の前でナギは跪くとダンスのお誘いをするのだった。
Dance with me?
「えっ、私踊ったことなんか…」
戸惑う紡の言葉を遮るようにナギは彼女を自分の手で一回転させてみせた。
「イージーイージ
ワタシに体を預けて…体を揺らして
怖がることはひとつもないよ」
「な…ナギさん!?」
「OH…ソーリー
ここにいる音楽家たちは気が利かないです
せっかくのダンスパーティーなのに
プリーズミュージック!」
「あ…」
ナギの一声に困惑する一行にナギはやれやれと肩をすくめた。
「OH、返事がない
もう一度、マネージャーからおねだりしてみて
ここにあるミュージックボックスにコインはいりません
聞かせてと誰かが言えば何度でも蘇ります
月が満ちるように朝日が昇るように
ワタシたちのハートビート
決して、決して、絶えることはありません」
そして、紡の一声に応じて皆が歌いだす。その中央でナギにリードされながらもぎこちなく足を動かし踊る紡がいた。
星空に吸い込まれるように彼らの澄み切った声が響き渡る。そのハーモニーを奏でる声は、偶然通りかかったギターケースを背負った彼女の耳にも聞こえてきた。一瞬で彼らの声だと気づいた女性は、背負っていたギターケースからアコースティックギターを取り出すと、彼らの楽し気な声の裏に潜む哀しい音に合わせるようにギターを鳴らした。
えっ!!
突如どこからか合わせるように聞こえてくるギターの音色に一同は耳を疑った。そして、音の根源を探ろうと視線を移すとそこにはサックスブルー色の髪を靡かせてギターを弾く女性…天羽琴音がいた。手元のギターに目線を落としていた琴音だが彼らの視線に気づくと顔を上げ小さく笑って軽く片目を瞑って続けてと目線で合図を送った。
「…アンコールしてもいいですか?」
一曲歌い終わった彼らに、琴音はギターを抱えたままおねだりした。それに答えるように再び、優しい音色が奏でられ、その声は琴音のギターの音に包まれるのだった。