抱え込んでいるもの
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「わぁ!!大トリだ!!」
「大トリってなんだよ」
緊張した面持ちで大和は陸の部屋を開ける。すると、拍子抜けするような陸の嬉しそうな笑みに迎え入れられた。思わず突っ込みを入れる大和に陸は笑みを絶やさずまま、メンバーが皆来てくれて大和が一番最後だと言うこと、そして来てくれた皆に要望している逆立ちのことを話した。
「逆立ち??あぁ言ってたな…
具合はいいのか?」
「元気です」
「そりゃあよかった。ハイ、見舞いの品」
先程琴音の分と買ってきた包装してあるTRIGGERのDVDを大和は陸へ差し出す。それに、陸は大きく目を見開いた。
「え!?わざわざ良かったのに!中、開けてもいいですか?」
「おー、いいよ」
どんな反応をしてくれるだろうかと恐る恐る大和が顔色を伺う中、陸はまるでクリスマスプレゼントをもらった子供のようにワクワクとしながらその包装を解いていった。
「…わっ!!TRIGGERの新しいDVDだ!」
「持ってないやつか?なら良かった
本当は迷ったんだけどな
リクが九条の顔見て元気になるかどうかさ」
満面の笑みを浮かべる陸に、大和はホッと胸を撫で下ろす。そんな大和に、陸は真っ直ぐな瞳を向けた。
「元気になりますよ
俺のこと考えて、大和さんが探してくれたんだもん
…どんなものでも元気になります」
「…そっか」
「はは…
大和さんが最後に来ると思いました。大和さん優しいから」
「なんだそりゃ、優しいやつならすぐに来るだろ」
陸の返しに照れ臭さを隠しつつ大和は笑い飛ばす。そんな彼に陸は必死に言葉を選びながら語り始めた。
「うーんと、俺のことまで考えちゃう優しいい人だから
学校や病院にもそういう人がいました
どうしたらいいいかわからない感じでそっと困ったように苦手なものみたいに俺を扱う人…
でもすごく優しいからなんです
なんて話しかければいいか、凄く考えて悩んでから接してくれる
優しくしたら傷つけるんじゃないかとか、普通にしたら傷つけるんじゃないかとか…
普通の人の倍以上に考えてくれるんです
大和さんもそう。きっと色んな人の気持ち考えちゃうんだなぁ
だから、一織の言ってた情…じょう…」
「…情感?」
「…そうそれ!情感深い表現が出来るんですね」
言葉が出てこず難しい顔をして唸る陸に、大和は思いついた言葉を呟く。それにそれだ!と陸は頷いた。そして陸は改めて大和に向き直った。
「こんばんは、大和さん
会いに来てくれるのを待ってました」
「…こんばんは、リク
買いかぶり過ぎだよ。俺はそんな奴じゃない…
今日だってただぐうたらしてお前の見舞いにこなかっただけだ。」
真っ直ぐな陸の眼差しに大和は耐えきれず眼鏡を押し上げて視線を逸らす。そして連連と大和は事実と全く異なる、虚偽を陸へ伝える。自分は陸が言うようなそんな出来た人間では無いと。その大和の言葉に眉尻を下げて陸は悲しげな表情を浮かべた。
「その言葉、俺が信じて凹んだら大和さんの方が凹むと思うなぁ
あーあ、ぐうたらの後回しにされた…」
駄々を捏ねる子供のように声を上げて落胆する陸に、大和の良心が燻られた。
「…わかった、悪かった
本当はお見舞いの品を買いに行ってたんだ
なんにするか思ったより迷っちまった」
陸のこの表情に弱い大和は、恥ずかしいと思いながらもようやく事実を述べた。そんな彼の行動に陸は、真面目だと声を漏らして驚いた。そんな陸に大和はそんなんじゃない!と声を上げて否定した。でも、陸を元気づける為に珍しく真剣に考えた事は事実だ。それを陸に伝えると、陸は何も言葉を掛けることなく穴が開くほどジッと大和を見続けた。それに大和は遂に耐えきれなくなり声を上げた。
「…沈黙するな。ジッと見んな」
「照れることないのに…」
「お兄さんは、シリアスな人間関係とか無理なんだよ」
「人間関係ってたいがいシリアスじゃないです?」
「俺の場合は茶番だったんだ…
あぁ…もう何の話をしてんだかな」
論点がズレ始める話に大和は小さく苦笑いを浮かべた。そんな彼に陸は真っ直ぐな思いを言葉に乗せる。
「次はすぐに会いにきてください
言葉に迷ったら何も言わなくていいし、どんな顔してても大和さんなだけで嬉しいから
大和さんが思うより俺は傷つかないし、大和さんが思うより大和さんはちゃんと優しい人ですよ」
そして陸はニコニコと笑い太鼓判を押した。
「俺が保証します
俺、病気がちで皆に優しくされてきたから、優しい人見つけるの上手いんです」
そんな陸が大和は琴音とダブって見えた。くよくよと悩んでいるのがアホらしくなってきた。どれだけ陸の、琴音の笑顔や言葉に救われているだろうか。その事実を実感する度に大和は思うのだ。彼らのこの笑顔を曇らせることはしたくないと。
「ハハ、陸らしい」
「えへへ
俺のこといっぱい考えてくれてお見舞いまで買ってきてくれてありがとうございます」
鼻を擦って嬉しそうにお礼を述べる陸に大和は敵わないなぁと声を漏らした。
「わかった、次はすぐ来るよ
退屈している青少年のためにコンビニでエロい雑誌買ってきてやる」
「えッ…!?!?」
「お?期待した??」
「し…してないです」
「アハハ…お年頃だな」
「違いますって!!」
大和のからかい混じりの言葉を真に受けて陸は顔を真っ赤に染める。そんなムキになる陸を大和は笑い飛ばしてイジった。
「よし…じゃああれやりますか」
「…!!やってくれますか!」
「おぉ、大サービスだ
シャッターチャンス逃すなよ
行くぞ〜、せーの…ッ」
大和は陸に向かって逆立ちを披露する。それに陸は嬉しそうな声を出してシャーターボタンを押すのだった。