抱え込んでいるもの
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ある日の台風の中、電車が動かず帰れない人達がいる中、IDORISH7は駅前で電車が動くまで路上ライブを行った。
だが、ライブを終えて皆で達成感を味わっていると、急に陸が苦しみだし倒れてしまった。
すぐに気づいた一織が陸に駆け寄る。
「七瀬さんの荷物を探ってください
発作度目の吸入器があるはずです
…七瀬さんは呼吸器系の病気を患っています
長時間の激しい運動は出来ないんです」
唯一、日頃の練習でまさかと疑惑を抱いていた一織の仮説が斯くてした瞬間だった。だが、それ以外のメンバーは思わぬ事実に唖然としてしまった。
だが、すぐさま各々が陸のために行動を移す。それでも陸の発作は静まること無く救急車を呼ぶことになり彼は病院に送られたのだった。
翌朝…大事には至らなかった陸は無事に寮へ戻っきた。そんな彼に喜んでもらおうとメンバーは好きなタイミングで彼の部屋を訪れていた。そのさなか、大和はどうすればいいかと考えふけ込んでいた。苦情の言っていた欠陥とは十中八九このことだろう。だからこそ、リーダーとしてもっと早く気づいてあげられたらと悔やまれた。
一先ず、見舞い品を探すかと街に繰り出した大和だが、良いものは中々見つからず、結局、唯一陸が喜びそうなのは彼の兄貴である九条天の姿が見れるDVDかという結論に至った。そして、早速TRIGGERのDVDが売られている場所へ。流石にTRIGGERは今人気絶頂ということもあり大規模に売り出されていて、すぐに見つかった。
「やっぱ、スゲェ〜な」
一人大和は感嘆していると、ふと肩をトントンと叩かれた。それに大和は振り向くと彼の視界に映ったのはニコニコと笑みを浮かべる琴音だった。
「ヤッホー!大和さん
こんなことで何してるの??TRIGGERファンではないよね??」
遠目越しで見つけた大和の後ろ姿に半信半疑で声をかけたのだが、まさかの本人で琴音は不思議そうに尋ねた。それに大和は顔を曇らせながら答えた。
「実は、体調不良のメンバーがいてなその見舞い品を探してたんだよ
琴音は??」
「私はもちろんコレが目当てだよ」
大和の質問に琴音は答えながら棚から一つDVDを取り出すと、彼に見せつけるようにDVDをチラつかせた。
へぇ〜と大和は相槌を打つと自分もその棚からDVDを取り、目の前にチラつかされた琴音が持っていたDVDを掻っ攫うように奪い取った。
「えっ!?」
「買ってやるよ」
「え…悪いよ」
「お前、まだ学生だろ??」
「そうだけど…大和さんだってそこまで稼ぎないでしょ?」
「そんな生々しい話しないの!!」
「だって!!」
「じゃあさ…俺たちがデビューしてくれたら祝ってくれよ
それでいいだろ?」
「………わかった」
「オッケー、交渉成立だな」
「ハイ、どうぞ」
「…ありがと」
大和から手渡されたDVDを受け取った琴音は嬉しそうに頬を染めた。そんな彼女を見て大和は照れくさそうにそっぽ向いた。
「この後、予定ある??」
「……帰るだけだよ」
「じゃあ途中まで一緒にどう??」
「いいね!!」
大和の誘いにすぐに琴音はノッた。そのままお店を出た彼らは久しぶりに二人っきりで歩いていた。
「そういえば…TV見たよ!!
台風の中凄かったね!!」
実は先日のライブは、情報番組で一部放送されていたのだ。それに大和は苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「あぁ…あれな
どうせずぶ濡れになるなら足止めされた人たちを楽しませようってなってさ!
踊って帰ることにしたんだ」
「なるほどねぇ…
それで??大和さんは何浮かない顔してるの??」
「なんのことだがさっぱりわかんないなぁ〜」
「…大和さん、はぐらかそうとしてもバレバレだからね」
琴音が、大和が何を抱え込んでいるのかと目を光らせる。それに対して白を切る大和だったが、折れる気がない琴音に大和は小さくため息を零した。そして、天を仰ぐとポツリポツリと心の奥底にしまいこんでいたものを喋り始めた。
「…どんな言葉をかけてやれば、相手が傷つかずに済むかなって思い始めたら
なかなか声をかけづらくてさ…」
「ふぅ~ん…
でもさそこまで気に病むことじゃないと私は思うなぁ」
「なんでだ?」
大和は視線を琴音に向け尋ねる。そんな彼の不安げに揺らぐ瞳を琴音は確認すると、ゆっくりと柔らかく微笑んだ。そして、大丈夫だと安心されるためにそっと彼の手を包み込むと優しく語り始める。
「だって…
どんな言葉だって声さえかけてくれれば嬉しいもんだよ
飾り付けても気持ちが籠もってなかったら伝わらないけど…
そこまでその人について考えることが出来る大和さんの言葉ならきっと伝わるよ」
「…そうかなぁ」
「そうだよ!!もっと自信持っていいと思うよ、リーダー!!」
「イヤイヤ、たまたま俺が最年長だからリーダーを任されただけだよ」
励ましのつもりの琴音の言葉に、大和は小さく否定する。だが、そんなわけないと琴音はバッサリ切り捨てた。
「皆そう言ってるだけだよ
ホントは任せたいって皆思ったからリーダーをお願いしたんだよ
私だったら、そんな理由で頼まないよ」
もっと自信を持てばいいのに。どうして彼はこんなにも臆病なのだろうか?理由はわからないが、琴音は少しでも彼に伝わってほしいと願いを込めて言葉を紡いだ。残念ながらメンバー全員の素顔を琴音は知らない。それでも、彼らが一人一人を大切に思っているのは伝わってきた。彼らの愛情を自分よりも知っている大和はきっと心の奥底では気づいているはずだと琴音は思っていた。
「…そうか
琴音のお陰で少し勇気出たよ、ありがとな」
琴音の言葉に大和の心は大きくざわめいた。わかっている、アイツラが特に陸がそう簡単に拒絶するわけがないことを、ニコニコと嬉しそうに笑いかけてくれることも。ただ、勇気が欲しかった。臆病な自分に踏み出す一歩というものを。
「早くその子の体調治ると良いね
じゃあ私コッチだから」
やっと強張った表情を崩す大和に、琴音はホッと胸を撫で下ろす。そして、琴音は自分の役目は終わりだと彼が帰る場所とは反対にある自分の家に足を向ける。が、それは大和に遮られた。
「…ちょっと待って」
琴音の腕を取った大和は、彼女をそのまま自分の腕に閉じ込めた。唐突な彼の行動に目を白黒と琴音はさせた。
「…どうしたの??」
「ちょっと充電させてくんね?」
甘えるように肩元に埋める大和に、しょうがないなと琴音は小さく笑いそっと両手を彼の背に回した。
「…ありがとな、悩み聞いてくれて」
「どういたしまして…」
太陽が沈みかけ空色がオレンジ色に染まる中、二人は暫くの間この状態を続けるのだった。
だが、ライブを終えて皆で達成感を味わっていると、急に陸が苦しみだし倒れてしまった。
すぐに気づいた一織が陸に駆け寄る。
「七瀬さんの荷物を探ってください
発作度目の吸入器があるはずです
…七瀬さんは呼吸器系の病気を患っています
長時間の激しい運動は出来ないんです」
唯一、日頃の練習でまさかと疑惑を抱いていた一織の仮説が斯くてした瞬間だった。だが、それ以外のメンバーは思わぬ事実に唖然としてしまった。
だが、すぐさま各々が陸のために行動を移す。それでも陸の発作は静まること無く救急車を呼ぶことになり彼は病院に送られたのだった。
翌朝…大事には至らなかった陸は無事に寮へ戻っきた。そんな彼に喜んでもらおうとメンバーは好きなタイミングで彼の部屋を訪れていた。そのさなか、大和はどうすればいいかと考えふけ込んでいた。苦情の言っていた欠陥とは十中八九このことだろう。だからこそ、リーダーとしてもっと早く気づいてあげられたらと悔やまれた。
一先ず、見舞い品を探すかと街に繰り出した大和だが、良いものは中々見つからず、結局、唯一陸が喜びそうなのは彼の兄貴である九条天の姿が見れるDVDかという結論に至った。そして、早速TRIGGERのDVDが売られている場所へ。流石にTRIGGERは今人気絶頂ということもあり大規模に売り出されていて、すぐに見つかった。
「やっぱ、スゲェ〜な」
一人大和は感嘆していると、ふと肩をトントンと叩かれた。それに大和は振り向くと彼の視界に映ったのはニコニコと笑みを浮かべる琴音だった。
「ヤッホー!大和さん
こんなことで何してるの??TRIGGERファンではないよね??」
遠目越しで見つけた大和の後ろ姿に半信半疑で声をかけたのだが、まさかの本人で琴音は不思議そうに尋ねた。それに大和は顔を曇らせながら答えた。
「実は、体調不良のメンバーがいてなその見舞い品を探してたんだよ
琴音は??」
「私はもちろんコレが目当てだよ」
大和の質問に琴音は答えながら棚から一つDVDを取り出すと、彼に見せつけるようにDVDをチラつかせた。
へぇ〜と大和は相槌を打つと自分もその棚からDVDを取り、目の前にチラつかされた琴音が持っていたDVDを掻っ攫うように奪い取った。
「えっ!?」
「買ってやるよ」
「え…悪いよ」
「お前、まだ学生だろ??」
「そうだけど…大和さんだってそこまで稼ぎないでしょ?」
「そんな生々しい話しないの!!」
「だって!!」
「じゃあさ…俺たちがデビューしてくれたら祝ってくれよ
それでいいだろ?」
「………わかった」
「オッケー、交渉成立だな」
「ハイ、どうぞ」
「…ありがと」
大和から手渡されたDVDを受け取った琴音は嬉しそうに頬を染めた。そんな彼女を見て大和は照れくさそうにそっぽ向いた。
「この後、予定ある??」
「……帰るだけだよ」
「じゃあ途中まで一緒にどう??」
「いいね!!」
大和の誘いにすぐに琴音はノッた。そのままお店を出た彼らは久しぶりに二人っきりで歩いていた。
「そういえば…TV見たよ!!
台風の中凄かったね!!」
実は先日のライブは、情報番組で一部放送されていたのだ。それに大和は苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「あぁ…あれな
どうせずぶ濡れになるなら足止めされた人たちを楽しませようってなってさ!
踊って帰ることにしたんだ」
「なるほどねぇ…
それで??大和さんは何浮かない顔してるの??」
「なんのことだがさっぱりわかんないなぁ〜」
「…大和さん、はぐらかそうとしてもバレバレだからね」
琴音が、大和が何を抱え込んでいるのかと目を光らせる。それに対して白を切る大和だったが、折れる気がない琴音に大和は小さくため息を零した。そして、天を仰ぐとポツリポツリと心の奥底にしまいこんでいたものを喋り始めた。
「…どんな言葉をかけてやれば、相手が傷つかずに済むかなって思い始めたら
なかなか声をかけづらくてさ…」
「ふぅ~ん…
でもさそこまで気に病むことじゃないと私は思うなぁ」
「なんでだ?」
大和は視線を琴音に向け尋ねる。そんな彼の不安げに揺らぐ瞳を琴音は確認すると、ゆっくりと柔らかく微笑んだ。そして、大丈夫だと安心されるためにそっと彼の手を包み込むと優しく語り始める。
「だって…
どんな言葉だって声さえかけてくれれば嬉しいもんだよ
飾り付けても気持ちが籠もってなかったら伝わらないけど…
そこまでその人について考えることが出来る大和さんの言葉ならきっと伝わるよ」
「…そうかなぁ」
「そうだよ!!もっと自信持っていいと思うよ、リーダー!!」
「イヤイヤ、たまたま俺が最年長だからリーダーを任されただけだよ」
励ましのつもりの琴音の言葉に、大和は小さく否定する。だが、そんなわけないと琴音はバッサリ切り捨てた。
「皆そう言ってるだけだよ
ホントは任せたいって皆思ったからリーダーをお願いしたんだよ
私だったら、そんな理由で頼まないよ」
もっと自信を持てばいいのに。どうして彼はこんなにも臆病なのだろうか?理由はわからないが、琴音は少しでも彼に伝わってほしいと願いを込めて言葉を紡いだ。残念ながらメンバー全員の素顔を琴音は知らない。それでも、彼らが一人一人を大切に思っているのは伝わってきた。彼らの愛情を自分よりも知っている大和はきっと心の奥底では気づいているはずだと琴音は思っていた。
「…そうか
琴音のお陰で少し勇気出たよ、ありがとな」
琴音の言葉に大和の心は大きくざわめいた。わかっている、アイツラが特に陸がそう簡単に拒絶するわけがないことを、ニコニコと嬉しそうに笑いかけてくれることも。ただ、勇気が欲しかった。臆病な自分に踏み出す一歩というものを。
「早くその子の体調治ると良いね
じゃあ私コッチだから」
やっと強張った表情を崩す大和に、琴音はホッと胸を撫で下ろす。そして、琴音は自分の役目は終わりだと彼が帰る場所とは反対にある自分の家に足を向ける。が、それは大和に遮られた。
「…ちょっと待って」
琴音の腕を取った大和は、彼女をそのまま自分の腕に閉じ込めた。唐突な彼の行動に目を白黒と琴音はさせた。
「…どうしたの??」
「ちょっと充電させてくんね?」
甘えるように肩元に埋める大和に、しょうがないなと琴音は小さく笑いそっと両手を彼の背に回した。
「…ありがとな、悩み聞いてくれて」
「どういたしまして…」
太陽が沈みかけ空色がオレンジ色に染まる中、二人は暫くの間この状態を続けるのだった。