道中、武器も何も持たないバッシュは身一つでモンスターに立ち向かい、ヴァン達を守る盾になった。そんな彼を見てヴァンはふつふつと疑問を覚えてきた。

ホントにコイツがやったのか？と

そんな中、モンスターがくる気配がない開けた場所にたどり着き休息をとは事になった。バッシュは干からびた兵士から武器を拝借していた。剣を振り下ろす姿はまさしく将軍だった。

「流石は将軍閣下」

その様子を見てバルフレアが称賛する。が、その反応を気に喰わない者がいた。

「裏切り者だ」

冷たい目でバッシュを見るヴァンだった。

「どうだかな、この目で見た訳じゃない」

「………兄さんが、見た」

冷たくあしらうバルフレアに対し、暫し沈黙を貫いたヴァン。そしてゆっくりと彼が口に出したセリフ。それに反応したのはバッシュだった。

「レックスか！？」

「レックス...ってもしかして！？」

ヴァンが挙げた名前を聞き、ミアは頭を殴られたかのようにボヤケた記憶が鮮明に蘇った。

あの時何故戦場にいるのかと思うほど、剣の使い方がおぼつかなかった青年がいた。そういえば彼は軽い脳震盪でぶっ倒れていた気がする。そんな彼をウォースラは足手まといだと言っていたなぁ。でもまさかヴァンの兄とは...。よく見たら面影があると今更になってミアは思ったのだった。

「………二つ下の弟がいると言っていた。
そうか、君なのか。彼はあれから...」

「死んだ」

「残念だ」

「お前がやったんだろ！」

「君に真実を伝えるのが、私のつとめだな」

ミアも知らないホントの真実をバッシュは話し始めるのだった。その事実は驚かされる事だった。先程いたジャッジマスターは、バッシュの双子の弟ガブラス。あの夜、バッシュに成り代わりラミナス国王を殺したのはガブラスだったのだと言う。元々、帝国は和平を結ぶ気など無かったのだ。バッシュは陰謀に巻き込まれ、レックスは国王暗殺の目撃者として仕立てられてしまったのだ。

「信じられるかよ」

「私はいい、レックスを信じてやってくれ。
彼は立派な若者だった。最後まで祖国を守ろうとした。
...いや、弟を守りたかったんだろうな」

「あんたが決めるな！」

「なら、お前が決めろ。楽になる方を選べばいい。

...どうせ、戻らない」

バッシュに噛み付くヴァンに対してバルフレアは吐き捨てるように言葉を放った。衝撃すぎる真実を聞きミアは気づかなかった。背を向けたバルフレアの表情が哀しげだったことに。