もう一つの証を求めて
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「あの調印式の夜、父の死を知ったウォースラはラバナスタに戻って私を脱出させました。
ヴェインの手が伸びる前に、あなたに保護を求めようと」
静かな部屋で、アーシェの声が響く。アーシェの眼差しの先には、ジッと彼女の言葉を聞き入れるオードール侯爵がいた。
「ところが、当の私があなたの自殺を発表…。帝国に屈したように見えたでしょうな。…あの発表はヴェインの提案でした。当時は向こうの意図を掴めぬまま、やむなく受け入れましたが…狙いは我らの分断であったか」
「でも、それも終りです。私に力を貸してください!ともにヴェインを!」
アーシェの言葉にオンドール侯爵はたまらず目を細めた。
「抱っこをせがんだ小さなアーシェは…もういないのだな。殿下は大人になられた」
「それでは、おじさま…」
だが、アーシェの予想に反してオンドール侯爵は首を縦に振ることはなかった。
「しかし仮にヴェインを倒せたとして、その後は?王国を再興しようにも王家の証は奪われました。あれがなければブルオミシェイスの大僧正は殿下を王位継承者とは認めんでしょう。
王家の証を持たない殿下に今できることは何ひとつございません。然るべき時までビュエルバで保護いたします」
「そんな…できません!」
必死になるアーシェ。だが、その彼女にとどめを刺すかのようにオンドール侯爵は冷たい言葉を放った。
「では、今の殿下に何ができると?」
「おじさま…」
たまらずアーシェは俯く。
押し問答が終わり静寂する室内。
それを打ち切るかのように啖呵を切ったのは、バルフレアだった。
「それはそうと、王女様を助け出した謝礼はあんたに請求すりゃいいのか?」
「まずは食事だ。最高級のやつをな」
「用意させよう。少々時間がかかるが?」
「だったらそれまで風呂でも借りるさ。それから着替えも必要だな。いくらか冷や汗を掻かされたんでね」
バルフレアがつらつらと要望をつきたてる中、一人暗い目をしたままひっそりとこの場を後にするアーシェがいた。ミアはそんな彼女を遠くから黙ってみる事しか出来なかった。
*
「ふぅー!!サッパリ!」
侯爵の屋敷で一人一部屋ずつ与えられた。ミアは部屋に付属してあったお風呂に入り、身体にこびりついた汗水を洗い流した。
こんな立派な風呂に入れるなんて、いつぶりなのだろうと、少し有り難さを噛み締めたながら入った。たまらず、心地よすぎて今の状況を忘れそうになる。
状況が好転した訳ではない
むしろこれからが本番なのだろう
「まぁ...ウォースラが戻るまで何もできないか」
ふかふかなベッドにフィルはダイブした。そのベッドに堪能しながら、ミアはとある事実に気づく。
「もう、皆と一緒にいれないのか...」
元々、ラバナスタで彼らとの同道は終わりのはずだった。それが何故か運命の悪戯かわからないが、ここまで行動を共にしてきた。
が、それもここで終わり
パンネロを取り戻したヴァンは、彼女と共にラバナスタに帰るだろう。そしてあの二人はあの綺麗な愛機で空を駆け巡るのだろう。
もう彼らと出会うことは無い
そう気づいたミアはベッドから体を起こした。
「最後くらいいいよね?」
自身に投げかけるように呟くと、ミアは部屋の扉を開けた。
既に深夜を回っているため、廊下は消灯していて辺りは暗かった。その中をミアは、ある人物がいるであろう部屋に向かって歩き始める。が、その視界の先にいるシルエットにミアは目を疑った。
え...あれって...アーシェ??
遥か遠い先だがミアが見間違えるはずがなかった。こぼれ落ちる月明かりに照らされた彼女は、キョロキョロと辺りを警戒しながら歩いていた。その姿を見て、ミアはまさかと最悪な事態が脳裏に霞む。
あり得るのか....
いや...ありえる
その予感の可能性をミアは感じた。なんとしてもそれは阻止しないといけないと、ミアは目的を変え彼女を尾行することにするのだった。
*
「あれ?ミア...何してんだよ?」
「あ...ヴァン」
声をかけられたと思ったらヴァンがいた。ミアは口元に指を持っていき人差し指をたてた後、廊下の向こう側を指差した。つられるようにヴァンは見る。そこにいたのは挙動不審なアーシェ。
「アイツ何してんだよ?」
「おそらく...」
ミアの予想を話すとヴァンはギョッとした。
「はぁ!?そんな事考えてんのかよ!?」
「あくまで私の予感だけどね。」
「で、ミアはそれを止めようとしてたわけ?」
「まぁ...そんなところ。
危惧してた事にならなければ良かったんだけど...
どうやら残念な事に当たっちゃったみたい」
後をつけた二人がついたのは屋敷に付随してた発着ポート。そこには先程バルフレアが移動させたシュトラールがある。
アーシェは迷わず、シュトラールの中へ入った。
「アイツ操縦できんのか?」
「できるわけ無いでしょ!早く止めないと墜落しちゃうよ」
ふと思った疑問をヴァンがミアにぶつける。それにミアはピシャリと否定した。その言葉に流石のヴァンも慌てふためいた。
「ヤバいじゃないか!早く行こ!」
咄嗟にヴァンはミアの手を取る。ヴァンにとっても、このアーシェの行動は許せなかった。
「わかってるから!とりあえず落ち着いて」
若干憤りを見せるヴァンをミアは引っ張られながらも宥めようとするのだった。
ちなみにこの場に居合わせたのはもう一人いた。
「はぁ〜〜」
発着ポートから見えない位置の壁にもたれ掛かり遠目で様子を伺っていたのだ。そして状況を咄嗟に理解した彼は面倒なことがまた増えたと盛大に溜息をつくのだった。
ヴェインの手が伸びる前に、あなたに保護を求めようと」
静かな部屋で、アーシェの声が響く。アーシェの眼差しの先には、ジッと彼女の言葉を聞き入れるオードール侯爵がいた。
「ところが、当の私があなたの自殺を発表…。帝国に屈したように見えたでしょうな。…あの発表はヴェインの提案でした。当時は向こうの意図を掴めぬまま、やむなく受け入れましたが…狙いは我らの分断であったか」
「でも、それも終りです。私に力を貸してください!ともにヴェインを!」
アーシェの言葉にオンドール侯爵はたまらず目を細めた。
「抱っこをせがんだ小さなアーシェは…もういないのだな。殿下は大人になられた」
「それでは、おじさま…」
だが、アーシェの予想に反してオンドール侯爵は首を縦に振ることはなかった。
「しかし仮にヴェインを倒せたとして、その後は?王国を再興しようにも王家の証は奪われました。あれがなければブルオミシェイスの大僧正は殿下を王位継承者とは認めんでしょう。
王家の証を持たない殿下に今できることは何ひとつございません。然るべき時までビュエルバで保護いたします」
「そんな…できません!」
必死になるアーシェ。だが、その彼女にとどめを刺すかのようにオンドール侯爵は冷たい言葉を放った。
「では、今の殿下に何ができると?」
「おじさま…」
たまらずアーシェは俯く。
押し問答が終わり静寂する室内。
それを打ち切るかのように啖呵を切ったのは、バルフレアだった。
「それはそうと、王女様を助け出した謝礼はあんたに請求すりゃいいのか?」
「まずは食事だ。最高級のやつをな」
「用意させよう。少々時間がかかるが?」
「だったらそれまで風呂でも借りるさ。それから着替えも必要だな。いくらか冷や汗を掻かされたんでね」
バルフレアがつらつらと要望をつきたてる中、一人暗い目をしたままひっそりとこの場を後にするアーシェがいた。ミアはそんな彼女を遠くから黙ってみる事しか出来なかった。
*
「ふぅー!!サッパリ!」
侯爵の屋敷で一人一部屋ずつ与えられた。ミアは部屋に付属してあったお風呂に入り、身体にこびりついた汗水を洗い流した。
こんな立派な風呂に入れるなんて、いつぶりなのだろうと、少し有り難さを噛み締めたながら入った。たまらず、心地よすぎて今の状況を忘れそうになる。
状況が好転した訳ではない
むしろこれからが本番なのだろう
「まぁ...ウォースラが戻るまで何もできないか」
ふかふかなベッドにフィルはダイブした。そのベッドに堪能しながら、ミアはとある事実に気づく。
「もう、皆と一緒にいれないのか...」
元々、ラバナスタで彼らとの同道は終わりのはずだった。それが何故か運命の悪戯かわからないが、ここまで行動を共にしてきた。
が、それもここで終わり
パンネロを取り戻したヴァンは、彼女と共にラバナスタに帰るだろう。そしてあの二人はあの綺麗な愛機で空を駆け巡るのだろう。
もう彼らと出会うことは無い
そう気づいたミアはベッドから体を起こした。
「最後くらいいいよね?」
自身に投げかけるように呟くと、ミアは部屋の扉を開けた。
既に深夜を回っているため、廊下は消灯していて辺りは暗かった。その中をミアは、ある人物がいるであろう部屋に向かって歩き始める。が、その視界の先にいるシルエットにミアは目を疑った。
え...あれって...アーシェ??
遥か遠い先だがミアが見間違えるはずがなかった。こぼれ落ちる月明かりに照らされた彼女は、キョロキョロと辺りを警戒しながら歩いていた。その姿を見て、ミアはまさかと最悪な事態が脳裏に霞む。
あり得るのか....
いや...ありえる
その予感の可能性をミアは感じた。なんとしてもそれは阻止しないといけないと、ミアは目的を変え彼女を尾行することにするのだった。
*
「あれ?ミア...何してんだよ?」
「あ...ヴァン」
声をかけられたと思ったらヴァンがいた。ミアは口元に指を持っていき人差し指をたてた後、廊下の向こう側を指差した。つられるようにヴァンは見る。そこにいたのは挙動不審なアーシェ。
「アイツ何してんだよ?」
「おそらく...」
ミアの予想を話すとヴァンはギョッとした。
「はぁ!?そんな事考えてんのかよ!?」
「あくまで私の予感だけどね。」
「で、ミアはそれを止めようとしてたわけ?」
「まぁ...そんなところ。
危惧してた事にならなければ良かったんだけど...
どうやら残念な事に当たっちゃったみたい」
後をつけた二人がついたのは屋敷に付随してた発着ポート。そこには先程バルフレアが移動させたシュトラールがある。
アーシェは迷わず、シュトラールの中へ入った。
「アイツ操縦できんのか?」
「できるわけ無いでしょ!早く止めないと墜落しちゃうよ」
ふと思った疑問をヴァンがミアにぶつける。それにミアはピシャリと否定した。その言葉に流石のヴァンも慌てふためいた。
「ヤバいじゃないか!早く行こ!」
咄嗟にヴァンはミアの手を取る。ヴァンにとっても、このアーシェの行動は許せなかった。
「わかってるから!とりあえず落ち着いて」
若干憤りを見せるヴァンをミアは引っ張られながらも宥めようとするのだった。
ちなみにこの場に居合わせたのはもう一人いた。
「はぁ〜〜」
発着ポートから見えない位置の壁にもたれ掛かり遠目で様子を伺っていたのだ。そして状況を咄嗟に理解した彼は面倒なことがまた増えたと盛大に溜息をつくのだった。