「うわぁーー」

窓に広がるのは広大なパノラマ。青い空に映えるように下には白い雲が浮かぶ。たまらずミアは窓に張り付き覗き込んでいた。そんな彼女は目を輝かせ、あどけない表情をしていた。が、すぐにその表情を引っ込める。

「どうしたんだ？」

窓から身体を離し、先程とは打って変わった哀しみに満ちた表情を見せるミアに思わずバッシュは声をかけた。

「アマリアは大丈夫かな...」

ミアの脳裏に浮かぶのはアマリアの顔。気が強く誰にも頼ろうとしない彼女は、今囚われの身。彼女の事を考えるだけで胸が弾けそうだったのだ。

「大丈夫だ。あの方はお強い」

「そうかもしんないけど、やっぱり不安で」

俯くミアをバッシュは安心させようと頭を撫でた。

「そんな顔で会う気か？」

「....！？」

ミアがパッと顔を上げると、バッシュは優しい眼差しで彼女のことを見ていた。

「そんな顔を見たら、きっと心を傷めてしまうぞ」

バッシュの言葉でミアは気付かされた。今あーだこーだ考えても仕方ないのだと。せっかく乗せてもらったのに楽しまないなんて勿体ない。

「そうだね！私は私らしく」

ニシシと笑うとミアはおもむろに立つと、自動操縦に切り替えリラックスしているバルフレアを引っ張った。

「ねえねえ！！この艇の事もっと知りたいから案内してよ」

「ミアだけずりー！俺も！！」

ミアの言葉に敏感に反応したヴァンも声を上げる。気ダルそうにバルフレアが顔を向ける。そこには仔犬のように目をキラキラさせるミアとヴァンがいた。それを見たら断れるもののも断れない。バルフレアは深く息を吐くと立ち上がった。

「しゃーないな...ついて来い」

その言葉に二人は歓喜しハイタッチをし、彼の後を追うように奥へ消えていった。


「ミアも飛空艇に興味があるなんて」

「彼女は機械弄りが好きだからな」

コックピットに残された二人は自然と話し始めた。

「そうなのね」

「まぁそれもあるだろうが...」

バッシュは昔の事を思い出す。幼い時からずっと騎士として鍛錬を続けてきたミア。弱音を吐くことなく、国を守るためだと頑張ってきたミアはまたたく間に頭角を現した。そんな彼女には他の同年代のように遊ぶなんて自由は無かった。

「楽しいのだろうな。初めて見るものばかりだから」

目を細めるバッシュを見てフランもつられるように頬を緩めた。

「まるで視点がお父さんね」

「そうだな。娘のように思ってる」

コックピットでは二人の静かな時が流れた。

一方別の場所では

「ねぇ？これは何？」

「ん...これはだな...」

「バルフレア！！なんだこれ？」

「ヴァン！勝手に触るな！！」

物珍しそうに各々ギャアギャアとヴァンとミアは騒ぎ、その対応にバルフレアは追われるのだった。