真琴の転機
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「水泳嫌いの子が泳げる方法ですか〜?」
どうにか颯斗を泳がせたい真琴は練習の休憩中に皆に尋ねていた。
「なんか良いアイディアないかなぁ??」
「簡単ですよ!!
まず力まず浮くことに専念して
腰が沈まないようにバランスをとりそこから足の甲から蹴るようにして…」
意気揚々に答える江に渚は首を傾げる。
「江ちゃん泳げたってけ?」
「泳げないけど」
キョトンとした表情で答える江にたまらず怜がツッコミを入れる。
「それ全く信憑性ありませんよ」
その横では渚が遙に話しかける。
「ハルちゃんはなんてアドバイスしたの??」
「水に抗うな…存在を受け入れろ」
「ハルちゃんらしいね。じゃあアオちゃんは??」
「水とお友達になる!!」
「アオちゃんは、水大好きだもんね!!
あ!!それならこの前まで泳げなかったレイちゃんのアドバイスが一番効果的なんじゃない??」
遙と蒼の言ったことを聞き終えた渚は、思い出したかのように怜に話を振る。
「そうですよ…皆さん。気づくのが遅すぎます」
待ってました!!とばかりに自身有りげな顔をする怜。皆、怜の言葉の続きが気になり急かし始める。
「あるのか…アドバイス」
「はい!!」
「なになに!!」
「教えて!!レイちゃん」
「僕が泳げなかったのは何をやっても沈んでしまうからなので、今回のパターンとは異なります。でよって…」
「そうか」
「そうだった〜…」
「そうよね」
「そうだよな」
怜と今回の案件は事情が違かったと渚・蒼・江・真琴は嘆き天を仰ぐ。その反応に対して、持論を妨げれた怜は声を上げる。
その怜の悲鳴に近い声が聞こえる中、江が真琴に耳打ちする。
「なにかいい案浮かびそうですか??」
「うーん…ないわけじゃないんだけど」
唸るように声を漏らすと真琴はもう一度天を見上げるように顔をあげるのだった。
「皆のアドバイス…颯斗くんに教えるにはちょっと難しそうだな」
「お前のときはどうしたんだ??それを考えればわかるんじゃないのか?」
「俺のときは...」
帰宅の途中、いつも通り海岸沿いを歩いているとき、真琴がボヤいた言葉に遙が聞き返す。その言葉に真琴は思いますように目を細めた。
真琴!!泳がないの??
水が...怖い
プールの水を見て震え上がる真琴。
そんな彼に手を差し出したのは蒼だった。真琴の思いもよらぬ言葉にハッと目を見開く蒼は、ウーンと唸るように考え始めた。
どうすれば、真琴と水が仲良くなれるかなぁ
アオちゃんは水と友達なの?
うん!!友達だよ!
だから真琴に水を怖がって欲しくないんだ!
不思議そうに尋ねる真琴に蒼は満面の笑みを浮かべた。そして、蒼は数秒後閃いたように顔を上げる。
水を見なければ怖くない??震えたりしない??
た...多分
じゃあその方法でいこう!!
キョトンとする真琴を置き去りに蒼は事は急げと彼の手を掴みグイグイ歩く。
そして自ら先にプールの水に入ると真琴に手を差し出す。
ほら!真琴おいで!!
え...でも...
口籠る真琴に蒼は力強く言葉を紡ぐ。
大丈夫!!絶対真琴から手を離さないから!
「背泳ぎをした時に空が見えたから」
その時の事を懐かしむように真琴は呟いた。真琴にとって違う意味でコレは大きな気持ちの変化を与えた。
ただの幼馴染から一人の女の子として意識するようになったのだ。
「でも…いきなり背泳ぎから教えるのは一般的なやり方じゃないから」
またまた考え込む真琴の背を押すように遙は声をかけるのだった。
「そんなの関係ないだろ?お前のやり方でやればいい」
「そうだね…やってみるよ」
後日…
見事に真琴は颯斗の水嫌いを克服させることに成功し、確かな達成感に心が満たされていた。
と、同時に毎週水泳を子どもたちに教えることに喜びを感じ始めていた。
だが、真琴の手伝いは来週で最後と突然笹部に言い渡される。元々人手不足のため真琴が手伝いをしていたのだが、先日の面接で無事にバイトが採用されたから、もう手伝いは大丈夫になったのだ。
喜ぶべきなのかもしれないが、その事実を知り真琴は複雑な心境に陥った。
そして真琴はその感情を抱えたまま、来ていた蒼を送っていたのだが、二人の間には会話は全く無かった。
「ねぇ…真琴」
痺れを切らした蒼がようやく口を開く。
その言葉に真琴が横にいる蒼に視線を下ろす。
「どうしたの?蒼」
「どうしたのって…コッチのセリフだよ」
ぎこちない真琴の笑みに流石の蒼も心配になる。
不安そうに揺れる菫色の瞳に真琴は隠し事はできないなと小さく息をつくとクシャと彼女の頭に手を置いた。
「心配かけちゃったね…ごめん」
申し訳無さそうに笑う真琴に蒼は大きく首を振った。
「俺さ…今日背泳ぎをした後の颯斗くんにこう言われたんだ。
『あのね…僕泳ぐの怖くなくなった、楽しかったよ。
ありがとう、橘コーチ!!』」
嬉しそうにあの時のことを話す真琴に蒼は思わず笑みを浮かべた。
「…そっか。確かにすごく嬉しそうな表情浮かべてたもんね颯斗くん」
上で、貴澄と一緒に見ていた時に見た嬉しそうに背泳ぎを泳ぐ颯斗のことを思い出し蒼は頬を緩ます。
「あのね…楽しかったんだ
子どもたちに水泳教えるの。最初はただの手伝いでやってたんだけど、いつからか教えてる子どもたちが嬉しそうに泳ぐ姿を見るのが楽しくなったんだ。
だから、来週でそれが最後だとわかった途端にぽっかり心に穴が開いたような気分になって…」
真琴は夜空に広がる星を見ながら、瞳を細める。
途端に表情が柔らかくなった真琴を蒼は覗き込んだ。
「真琴は子どもたちに水泳の楽しさを教えるのがよほど合ってたんだね!真琴らしいや」
ニコニコと嬉しそうに笑う蒼から発せられた言葉に真琴はようやくハッとする。
ようやく気づいた、心のぽっかりの正体…
そして自分のやりたいことがわかった瞬間だった。
嬉しそうにニコニコと真琴は笑うと蒼をギュッと抱き寄せた。
「蒼…俺見つけたよ。夢!!」
「真琴にピッタリだと思うよ!水泳の先生!!」
声を上ずらせながら喜ぶ真琴の背に蒼はゆっくりと手を回した。
「……俺、勉強するために東京に行くよ」
真琴の決意の籠もった瞳。
そんな彼を見て蒼の心臓がドキリと跳ねた。
夢を見つけ、その夢を叶えるために頑張ろうとする人の表情はいつ見てもカッコいい…
蒼は目の前の真琴や凛そして雪菜のことを思い浮かべるのだった。
「応援するよ…真琴の夢」
「ありがと、蒼」
そして二人は夜道を歩き出す。
そんな両者の間には先程と打って変わり会話が弾むように進むのだった。
どうにか颯斗を泳がせたい真琴は練習の休憩中に皆に尋ねていた。
「なんか良いアイディアないかなぁ??」
「簡単ですよ!!
まず力まず浮くことに専念して
腰が沈まないようにバランスをとりそこから足の甲から蹴るようにして…」
意気揚々に答える江に渚は首を傾げる。
「江ちゃん泳げたってけ?」
「泳げないけど」
キョトンとした表情で答える江にたまらず怜がツッコミを入れる。
「それ全く信憑性ありませんよ」
その横では渚が遙に話しかける。
「ハルちゃんはなんてアドバイスしたの??」
「水に抗うな…存在を受け入れろ」
「ハルちゃんらしいね。じゃあアオちゃんは??」
「水とお友達になる!!」
「アオちゃんは、水大好きだもんね!!
あ!!それならこの前まで泳げなかったレイちゃんのアドバイスが一番効果的なんじゃない??」
遙と蒼の言ったことを聞き終えた渚は、思い出したかのように怜に話を振る。
「そうですよ…皆さん。気づくのが遅すぎます」
待ってました!!とばかりに自身有りげな顔をする怜。皆、怜の言葉の続きが気になり急かし始める。
「あるのか…アドバイス」
「はい!!」
「なになに!!」
「教えて!!レイちゃん」
「僕が泳げなかったのは何をやっても沈んでしまうからなので、今回のパターンとは異なります。でよって…」
「そうか」
「そうだった〜…」
「そうよね」
「そうだよな」
怜と今回の案件は事情が違かったと渚・蒼・江・真琴は嘆き天を仰ぐ。その反応に対して、持論を妨げれた怜は声を上げる。
その怜の悲鳴に近い声が聞こえる中、江が真琴に耳打ちする。
「なにかいい案浮かびそうですか??」
「うーん…ないわけじゃないんだけど」
唸るように声を漏らすと真琴はもう一度天を見上げるように顔をあげるのだった。
「皆のアドバイス…颯斗くんに教えるにはちょっと難しそうだな」
「お前のときはどうしたんだ??それを考えればわかるんじゃないのか?」
「俺のときは...」
帰宅の途中、いつも通り海岸沿いを歩いているとき、真琴がボヤいた言葉に遙が聞き返す。その言葉に真琴は思いますように目を細めた。
真琴!!泳がないの??
水が...怖い
プールの水を見て震え上がる真琴。
そんな彼に手を差し出したのは蒼だった。真琴の思いもよらぬ言葉にハッと目を見開く蒼は、ウーンと唸るように考え始めた。
どうすれば、真琴と水が仲良くなれるかなぁ
アオちゃんは水と友達なの?
うん!!友達だよ!
だから真琴に水を怖がって欲しくないんだ!
不思議そうに尋ねる真琴に蒼は満面の笑みを浮かべた。そして、蒼は数秒後閃いたように顔を上げる。
水を見なければ怖くない??震えたりしない??
た...多分
じゃあその方法でいこう!!
キョトンとする真琴を置き去りに蒼は事は急げと彼の手を掴みグイグイ歩く。
そして自ら先にプールの水に入ると真琴に手を差し出す。
ほら!真琴おいで!!
え...でも...
口籠る真琴に蒼は力強く言葉を紡ぐ。
大丈夫!!絶対真琴から手を離さないから!
「背泳ぎをした時に空が見えたから」
その時の事を懐かしむように真琴は呟いた。真琴にとって違う意味でコレは大きな気持ちの変化を与えた。
ただの幼馴染から一人の女の子として意識するようになったのだ。
「でも…いきなり背泳ぎから教えるのは一般的なやり方じゃないから」
またまた考え込む真琴の背を押すように遙は声をかけるのだった。
「そんなの関係ないだろ?お前のやり方でやればいい」
「そうだね…やってみるよ」
後日…
見事に真琴は颯斗の水嫌いを克服させることに成功し、確かな達成感に心が満たされていた。
と、同時に毎週水泳を子どもたちに教えることに喜びを感じ始めていた。
だが、真琴の手伝いは来週で最後と突然笹部に言い渡される。元々人手不足のため真琴が手伝いをしていたのだが、先日の面接で無事にバイトが採用されたから、もう手伝いは大丈夫になったのだ。
喜ぶべきなのかもしれないが、その事実を知り真琴は複雑な心境に陥った。
そして真琴はその感情を抱えたまま、来ていた蒼を送っていたのだが、二人の間には会話は全く無かった。
「ねぇ…真琴」
痺れを切らした蒼がようやく口を開く。
その言葉に真琴が横にいる蒼に視線を下ろす。
「どうしたの?蒼」
「どうしたのって…コッチのセリフだよ」
ぎこちない真琴の笑みに流石の蒼も心配になる。
不安そうに揺れる菫色の瞳に真琴は隠し事はできないなと小さく息をつくとクシャと彼女の頭に手を置いた。
「心配かけちゃったね…ごめん」
申し訳無さそうに笑う真琴に蒼は大きく首を振った。
「俺さ…今日背泳ぎをした後の颯斗くんにこう言われたんだ。
『あのね…僕泳ぐの怖くなくなった、楽しかったよ。
ありがとう、橘コーチ!!』」
嬉しそうにあの時のことを話す真琴に蒼は思わず笑みを浮かべた。
「…そっか。確かにすごく嬉しそうな表情浮かべてたもんね颯斗くん」
上で、貴澄と一緒に見ていた時に見た嬉しそうに背泳ぎを泳ぐ颯斗のことを思い出し蒼は頬を緩ます。
「あのね…楽しかったんだ
子どもたちに水泳教えるの。最初はただの手伝いでやってたんだけど、いつからか教えてる子どもたちが嬉しそうに泳ぐ姿を見るのが楽しくなったんだ。
だから、来週でそれが最後だとわかった途端にぽっかり心に穴が開いたような気分になって…」
真琴は夜空に広がる星を見ながら、瞳を細める。
途端に表情が柔らかくなった真琴を蒼は覗き込んだ。
「真琴は子どもたちに水泳の楽しさを教えるのがよほど合ってたんだね!真琴らしいや」
ニコニコと嬉しそうに笑う蒼から発せられた言葉に真琴はようやくハッとする。
ようやく気づいた、心のぽっかりの正体…
そして自分のやりたいことがわかった瞬間だった。
嬉しそうにニコニコと真琴は笑うと蒼をギュッと抱き寄せた。
「蒼…俺見つけたよ。夢!!」
「真琴にピッタリだと思うよ!水泳の先生!!」
声を上ずらせながら喜ぶ真琴の背に蒼はゆっくりと手を回した。
「……俺、勉強するために東京に行くよ」
真琴の決意の籠もった瞳。
そんな彼を見て蒼の心臓がドキリと跳ねた。
夢を見つけ、その夢を叶えるために頑張ろうとする人の表情はいつ見てもカッコいい…
蒼は目の前の真琴や凛そして雪菜のことを思い浮かべるのだった。
「応援するよ…真琴の夢」
「ありがと、蒼」
そして二人は夜道を歩き出す。
そんな両者の間には先程と打って変わり会話が弾むように進むのだった。