無人島合宿
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「だれっがでるかな??」
「だれっがでるかな??」
二人が用意したのは正方形のダンボール箱。その表面6面に皆の名前を書きサイコロ代わりにして転がしていたのだ。
「「レイちゃんだ!!」」
上を向いた面に書かれていたのは『怜』。
「あの…僕だけ2面も名前があるんですけど?」
「まぁレイちゃんだからね…」
「6面あるからどうしても一人だけ2面書かないといけなくて…
レイちゃんならいいかなぁ…って」
「二人共…なんですかそれ」
怜一人困惑する中、ダンボール箱を持って戻ってきた二人が輪の間に入り座り込む。
「じゃ…レイちゃん。恥ずかしい話どうぞ!!」
「しかも恥ずかしい話って…」
「ほら!!レイちゃん早く!!」
蒼と渚の満面の笑み。怜は二人を見て毒素を抜かれたようにため息を吐くと話を始めた。
それは、怜が小学校の頃の話。
林間学校に行ったとき、怜はあるものがないと荷物を漁っていた。ないないと慌てる怜の耳に聞こえてきたのは先生の声。
「おーーい、風呂場でパンツの忘れ物があったぞ!!誰だ??」
男性教員が持っていたのはビニール袋に入った怜のパンツだったのだ。
「あ〜…パンツか」
「…言わないでください」
話を終えた怜は俯き頭を抱えていた。
「怜…えっと…」
落ち込む怜にどう話かければいいか真琴が言いよどむ中、渚が彼の肩に手をかけた。
「大丈夫だよ。もし部室で落としても僕が拾ってあげるから…」
「落としません!!」
渚の言葉にガバっと凛は顔をあげ突っ込む。
「ん…じゃあ次いこ!次!!」
蒼は慌てた様子でダンボール箱を振った。コロコロと転がるダンボール箱。そして上を向いたのは…
「ハルちゃんだね!!
お題は恋のお話!!略して…恋バナ!!
どうぞ!!」
渚がお題を提示する。恋バナ!?と真琴と怜が驚きの声を上げる中、遙が俺かと立ち上がる。
「遙先輩…恋バナあるんですか!?」
呆ける真琴に怜は詰め寄る。
「いや…俺も知らない」
ずっと一緒にいるはずの真琴にも心当たりはなかった。
「小学校のとき…」
話し始めた遙に皆興味津々の目で凝視する。
「親に連れられて、近くの山に登りにいったんだ。
そこで…俺は出会った。
目が…離せなかった。
その力強い美しさ。ほとばしる生命力。キラキラと輝きながら流れる
滝!!」
「「「「滝!?!?」」」」
皆目をパチパチと瞬きすると深く息を吐いた。
「それ恋バナって言わないよ!!ハルちゃん!!」
渚は期待していた分だけため息が大きかった。
「アハハ…ハルらしいや」
蒼は目を閉じ滝の姿を浮かべているのだろう遙を横目にダンボール箱を振った。そして彼女は上に出た名前を見て固まった。
「お!!次はアオちゃんだね!!
お題は…またしても恋バナ!!」
「さっきハルがやったじゃん!!」
「だってハルちゃんの話じゃ消化不良なんだもん」
不服そうに渚は頬を膨らます。そして彼は真琴の近くに走り寄る。
「それに!!マコちゃんも気になるでしょ!!」
「え…あ…うん…」
突然話を振られた真琴は困惑気味に返事をした。が、内心蒼の話には凄く興味があった。
ジッと見てくる4人の瞳。蒼は小さく息をつく。
「恋は...したことないけど、強いて言うなら」
一体何なのだろうと聞いている皆は息を呑む。
「遙の泳ぎ!!」
「それは僕も同感です!!」
「僕も僕も!!」
蒼の言葉に怜や渚が賛同する。その姿を見た蒼は視線を移す。その相手は真琴。急に菫色の瞳が自分を写しているとわかった真琴は心拍数が急激に上がるのを感じたの。
「後は...真琴の綺麗な瞳かな!!」
弾ける笑顔で笑う蒼。直視された本人は茹でダコかくらいに顔が赤く染まる。だが、それは蒼も同じだった。
「うわぁ!!顔凄く暑いや!!
恥ずかしいからサッサと次いこ!!」
慌てて蒼はダンボール箱を転がした。そして次に出た名前は渚だった。
「次は僕!!かくし芸をやります!!」
渚はそう宣言すると実行し始める。
「なんだそれ…」
渚がやり始めたものがわからず思わず遙が呟く。その反応にえ!!と渚が驚きの声を上げると自信満々に答えるのだった。
「わかるでしょ!!イワトビペンギンのマネだよ!!」
「どこが??」
「全然わかりません」
「さすがの私でもわからなかった」
遙・怜・蒼が驚きの答えに唖然とする。
「うぇ!!なんでわかんないの!?」
渚がコレ!!コレ!!と先ほどと同じようにペ両手をピンと伸ばし手の甲を上に向けるように手首を折り曲げ身体の脇にくっつけ、ペタペタと左右に体重を移動させ足踏みをした。
そんな必死な彼を見て、真琴はようやく笑みをこぼし笑った。そんな彼を見て、あ!!と渚が動きを止め真琴を見た。
「マコちゃん…やっと笑ったね!」
「え?」
「良かったぁ。なんかマコちゃん、落ち込んでるみたいだったから」
「ごめん。心配かけて」
申し訳無さそうに俯く真琴。そんな彼を見て、怜が口を開いた。
「あの…気になってたんですが…
僕を助けようとしてくれた時、いつもの真琴先輩じゃなかった気がしたんですが…」
「その話はもう…いいよ」
「そうだ…ほっといてやれ!」
怜の言葉に蒼と遙がそれぞれ口を開いた。蒼は悲し気に呟き、遙は逆に珍しく大きな声で怒鳴るように。
二人共自分のためだとわかっているからこそ、真琴は小さく微笑むと二人をやんわりと止めた。
「ありがとう、蒼、ハル。大丈夫だよ。やっぱり二人には言っておきたいから」
そう言った真琴は一呼吸置くとしゃべりはじめた。
「あの時…急に怖くなったんだ」
「怖い…」
「何が怖いの…?」
怜と渚が不思議そうに尋ねた。
「海が……怖いんだ…
隣町の小さな漁港に、子供の頃よく遊びに行ってた。そこに優しい漁師のおじいさんがいて…時々遊んでもらってたんだ。夏に、その漁港の近くでお祭りがあって――俺も金魚すくいがしたかったんだけど、お小遣いを使い果たしちゃって…ゆらゆら泳ぐ金魚を、ずっと見てたそしたら、いつも遊んでくれてたそのおじいさんが、俺にとってきてくれたんだ。すごくうれしかった」
蒼は真琴の話を横で聞きながらもあのときの事を思い起こしていた。優しいおじいさんだった。とても親切にしてくれて…あの夏祭りの後の真琴は嬉しそうにもらった金魚を水槽に入れて眺めていた。
アオちゃん!!アオちゃん!!見てみて
と真琴はキラキラした目で蒼に自慢気に金魚を見せてくれてた。
「でも…その夏の終わり、すごい台風がきて
そのおじいさんが乗ってた船が…沈んだんだ
乗っていた人が何人も亡くなった。船が沈んだのは、漁港から3キロ位沖にいった所だった。3キロなんて、俺たちが毎日泳いでる距離なのに…悲しいというより、怖くなった
ちゃんと餌もやって、水もかえてたのに…金魚も死んでしまった。それ以来、海が怖くなった。
なんだか……海の中には得体の知れない何かが潜んでいるように思えて」
「それなのに…僕を助けようとしてくれたんですね」
真琴の心の内を知った怜は申し訳無さそうに呟いた。
怜が口を開いた後、しばらく皆何も言うことなく沈黙の時間が続く。
その中…渚がゆっくりと口を開いた。
「ねぇ…一つ聞いてもいいかな
どうして海が怖いのに、この合宿に来たの?」
渚の直球な質問に真琴は目を伏せ自分の手を見た。そして己の手をギュッと握りしめた。
「泳ぎたかったから。みんなと…泳ぎたかったから
そう言った真琴が顔を上げ、一人ひとりの顔をゆっくりと見た。
「それに、この5人で泳いだら、どこまでもいけそうな気がするんだ」
微笑んだ真琴が発した言葉に蒼達は目を大きく開いた。
「あ、雨やんだみたいだね」
渚がふと窓を見て声を上げた。渚の声に他の皆も外を見る。すると、先程まで土砂降りだった雨がピタリと止んでいた。
「外でてみようよ!!」
蒼はそう言うと一目散に駆け出す。慌てて他の皆も後に続いて外に出た。
「うわぁ~」
「すごぉ~い!!キレイ!!」
空を見ると雲ひとつなく、満天の星空が広がっていた。
「流石によく見えますね〜
あれが夏の大三角ですねぇ…
琴座のベガ…白鳥座のデネブ…鷲座のアルタイル…」
怜が一つ一つ指を差し説明していく中…
渚と遙が口を開く。
「あれは…イカ座??」
「鯖座はどこだ??」
「イカ座も鯖座もないよ」
そんな二人に蒼は苦笑しながら答える。
「じゃあ…あれは岩鳶ペンギン座??」
「ないですから」
「えー!!盛り上がらないなぁ!!あることにしようよ!!」
渚と怜が星空を見上げてあーだこーだ騒ぐ中、蒼はふと地面を見る。
「みんな!!下みてみて!!」
興奮気味に上ずった声を出す蒼。皆蒼の声に釣られるように地面を見た。
するとそこには空に広がる星が映し出されていた。キラキラと輝くその光景はとても幻想的でキレイだった。
この美しい光景をこのメンバーで見れた。ただそれだけで蒼は嬉しかった。
そして同時に思った。
この光景を二度と忘れることはないだろうと。