明日に備え各々自分たちの部屋に戻りベッドに潜る。

「ハル…もう寝た？」

うす暗い静寂な部屋で真琴は隣のベッドに横たわる遙に声をかけた。

「いや…起きてる」

「眠れないよね」

「そうだな…」

「明日は…決勝まで残りたいね」

「あぁ…」

眠くなったのか真琴は小さく欠伸をする。その彼に背を向きながらも遙は小さく彼の名を呼んだ。

「真琴」

「んー…？」

呼ばれた真琴はゆっくりと目を開くと遙のほうを不思議そうに見つめた。

「お前と蒼が居てくれて…良かった…。ありがとな」

驚きの言葉に真琴は眼を見開き上半身を起こす。

「ハル！？」

だが、そんな彼を放って遙はベッドから起き上がる。

「少し、走ってくる」

「え、ちょ！今から！？」

真琴の静止に気を止めず遙は部屋から出ていった。そしてバタンと閉まる音がした後、真琴は小さく笑うのだった。


対して隣の部屋では…

「ねぇ…レイちゃん」

「なんです？？」

渚の声に答えるように眠りに付けない怜が目を開ける。
だが、怜の予想に反した答えが帰ってくる。

「駄目だよ〜…この床は食べちゃ駄目…」

「って！！寝言ですか！！」

渚のはただの寝言だったのだ。それにたまらず小さくツッコミを入れる怜。そんな彼の近くで小さく携帯のバイブレーションが鳴る。気づいた怜は己の携帯に手を伸ばすのだった。

一方…蒼はというと

やはり彼らと同様でベッドに入って寝付けずに居た。
明日へ備えてベッドに潜るがなかなか睡魔が訪れることは無かったのだ。
眠ろう眠ろうと必死に目を瞑るが聞こえるのは自身の早まる鼓動だけ。
そんな時、携帯の音が鳴る。こんな時間に誰だと携帯に手を伸ばし画面を開くとなんと遙からのメールだった。

『俺今外に出てるから部屋にいるの真琴だけだから』


なぜ彼はこの事をわざわざ私に教えたのだろうか？

蒼は真意が掴めず思考がフリーズする。
でもその文面で蒼は面白いことを思いついてしまう。

お陰で頭は更に覚醒してしまい、蒼は実行に移すためベットから降りた。そして部屋を出る準備を終え廊下ヘ。


彼女の行き先はもちろん真琴の居る部屋。


いないはずの私が急に現れたら真琴はビックリするに違いない！


真琴の反応を想像するだけで思わずニヤけてしまう蒼。




だが、数分後にやらねば良かったと後悔する羽目になるとは今の彼女は知らなかった…