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「おじゃまします!!」
「おう!よく来たなぁ!」
笹部のご厚意により家に招待された一行なのだが、部屋に通された途端に感じるのは尋常にない暑苦しさ。
それを出している正体は机に置かれている熱々の鍋だった。
「…嘘でしょ」
「何故この真夏に鍋を…」
グツグツと鳴る鍋。確かに美味しそうだが、普通こんな真夏に食べるものではない。この鍋を見て皆顔を顰める中、笹部がこの鍋について語りだす。
「それは水泳選手のスポーツ性栄養学的見地からに決まってるだろ?
俺特性の、たんぱく質ミネラルたっぷりの笹部鍋だ」
「鍋するならせめてエアコンを…」
暑さに身体が参っている渚の後ろには扇風機だけが回っている状態。ヘロヘロの彼に笹部がピシャリと意見をはねのけた。
「んなもんねぇよ!」
「そんなぁ〜〜」
「渚も蒼もだらしねーぞ」
「やっぱりやめにしませんか?」
そう一言言った怜の取皿に問答無用と笹部が具材を入れ差し出した。
「なぁに言ってんだ!絶対うめぇから!さぁ、食え!」
もう食べるしかないと意を決して天方が口に運ぶ。すると口を抑え眼を丸くするのだった。
「ほんと!おいしい!!」
「でしょう!?この鍋、俺が水泳部だった時に開発したんですよ!」
彼女の一声に皆箸を掴みだす。
渚は前髪を縛って我武者羅に頬張る。
怜は湯気で白くなるメガネを吹きながら、真琴と蒼は汗をかきながら…
横目に遙を見ると汗一つかいてなく、蒼は羨ましいと内心思う中、天方が笹部にそういえば…と口を開く。
「笹部さんってうちの水泳部のOBなんですよね」
「あ、はい。しかも最後の水泳部員。後輩が入ってこないまま、俺が卒業した後…つぶれちまったんだよなぁ」
あはは…と笑う笹部に対し、食べていた手を止め渚が身を乗り出す。
「その水泳部を僕達が復活させたんだから、最初からコーチしてくれても良かったのに」
「だぁ~からぁ!ピザ屋のバイトが忙しかったんだよ!」
と言いながら笹部が鍋をかき回す。そしてあるものを渚に見せるように鍋から上げた。
「ほら、これ中にご飯が入ってんだぞ」
「入れて入れてぇ!」
その言葉にその具材を取皿にいれようとするのだが、手が滑って失敗。
勢い余ってそれは鍋へ。それと共に熱い汁が思い切り飛び跳ね、それが怜と渚へ。
避けようと身を反らすが、一部はやはり降りかかり、渚はその反動で後ろにあった小さい机に激突。その衝撃で上に沢山積んであった雑誌が床に。
「すまん!大丈夫かぁ?」
「あら、大変!」
天方が慌ててそれを拾い集める中、何だそれと皆の視線はその雑誌に集まる。
「何これ?」
「何年も前のバックナンバー?」
渚がそのうちの一冊を手に持つ。それを遙が横目で見る。
「あぁ~いいですいいです。俺がやりますから」
「笹部コーチ、ひょっとしてこういうの捨てられない人ですか?」
真琴の茶化すような言葉を横目に雑誌を笹部は揃える。だが、床に置いたそれは扇風機の風で一枚一枚とページがめくれていく。
「はい……笹部さん」
天方が拾った雑誌を差し出すのだが、当の笹部の表情は一変する。ニコリと笑った天方を見つめながら、めくれた雑誌を握りしめ眼をパチパチさせる。
「ま、まりんちゃ…」
一方の天方も笹部が持つ雑誌を見て発狂する。
そして注目をそらそうと天方は鍋を指をさすのだった。
「あぁあああーーー!!!カニが燃えてます!カニ!!!!」
なんだかんだで鍋を食べ終わると次に出てきたのはスイカと花火だった。
ついたついたと渚が持つのは花火。そしてそれを持って怜を追いかけ始める。向けられた本人は当然のことながら逃げ始める。
「ほらほら!!レイちゃん!!」
「ちょっと!!こっち向けないでください!!」
駆け回る彼らを見ながら、2年生組は静かに線香花火を灯す。
「花火なんて久しぶりだ」
「ホントだね」
「そっか...蒼はずっとアメリカにいたんだもんね??」
「まぁ…そうだね。あ!!でも」
「でも??」
蒼は思い起こすように眼を細めた。
「あっちで日本人の知り合いができて、彼らと花火をやったなぁ」
蒼これやらない??
花火を手にもつのは中学時代に知り合った彼ら。
その彼らとは
ニコニコと笑い黒縁眼鏡から鶸色の瞳を覗かせる少年
と
青緑色の髪の少年
今頃なにしてるのかな?と蒼が久しぶりに留学時代の思い出を思い出している頃...
「みっ、水着関係のお仕事をされていたとは聞いていましたが…まさか…どおりでどこかで見た事が…じ、自分大ファンだったもので!!まりんちゃ」
笹部が思い切って振り向こうとしようとするが、その先ではピシリと物騒な音が聞こえてきて、彼は口を閉じ振り向くのもやめた。
「その話は終了…って事でよろしくお願いしますね?」
ニコニコと上辺っ面に笑う天方。だが、瞳の奥は笑ってなく冷たくそれを見た笹部の背筋は凍りつく。
そんな空気が流れる部屋の空気を切り裂くように江の声が響き渡る。
「あー!笹部コーチなんですかこれぇ!」
江の興奮した声になになに?と皆振り向く。
江の手にはどこで見つけたのかある物が握られていた。
「スイミングクラブのアルバム!」
江が皆に見えるようにと床に置きアルバムを広げる。
「「おぉ~!懐かしい!」」
そこにある写真を見て渚と蒼が感嘆の声を漏らす。
「江ちゃんもうつってる!これ、クラブの裏でBBQやったときのだー!」
渚が指したのは江が写っている下にあるBBQの写真。それを見て江は不平を漏らす。
「あ!それ私しらない!」
「これ、凜が転校してくる前のだからだよ」
蒼がのぞき込みながら小さく微笑んだ。
「七瀬くん、このころから大人びてる」
「写真に写るときくらい笑えよなぁ」
「ハルちゃんはいつも心で笑ってるんだよね」
天方と笹部の言葉に渚が笑みを溢して返した。
「これ、小5の夏の大会の時のだ!」
真琴が声をあげたのは小5の大会の写真。遙と蒼は貰った賞状とトロフィーをもって最前列にその後ろに並ぶようにと真琴達がいる写真。
「この時もハルちゃん優勝したんだっけ」
「私もしたよ!!」
「あれ、これ、お兄ちゃん……?」
江がある一角を指さす。それは右横。
そこには遠くて姿が小さいが確かにメダルをぶら下げた凛がいた。
「この時はまだ凛とは知り合ってなかった」
遙が呟いたその言葉に怜は顔を曇らせる。
しかし、誰一人夢中でその表情には気づかなかった。
「すごい!!僕たち出会う前から出会ってたんだ!!」
渚がこの事実に嬉しそうに目を光らせる。
「運命の赤い糸ってやつね」
「男同士でも赤い糸って言うの?」
小さく微笑んだ天方の言葉に疑問を抱く江が聞き返す。
その中、蒼があ!!と声を張り上げた。
「私と真琴が優勝した時の写真だ!」
その写真は蒼と真琴が二人でトロフィーをもって満面の笑みを浮かべている写真だった。
「懐かしいなぁ~」
そう言う蒼を横目に真琴は小さく微笑む。
「なんだ?お前ら二人の写真ならいくらでもあるぞ!!」
笹部がページをめくると、泳いでいる時の写真や大会の時の写真・イベントの時の写真が出てくる。
何故かたいてい一枚くらいのペースで遙も含めた三人の写真か真琴と蒼の二人だけの写真が出てきた。
「なんだかんだアオちゃん皆の輪の中心にいるかマコちゃんたちの傍にいたもんね」
「そ…そうだっけ??」
「おっ、この辺からは凛も写ってるな」
「転校してきたころだ!」
大雪が降り、皆で雪だるまを作った写真
大会前に行った強化合宿の写真
卒業前に岩鳶SCでやったパーティーの写真
怜にとってその写真どれも一枚一枚が輝いて見えた。
皆楽し気に笑っている光景が。
そして疑問に思うのだった。
どうして彼ら5人の関係は崩れてしまったのかと…
浮かない表情を浮かべる怜に気づいた遙は心配そうに彼を見つめるのだった。
「おう!よく来たなぁ!」
笹部のご厚意により家に招待された一行なのだが、部屋に通された途端に感じるのは尋常にない暑苦しさ。
それを出している正体は机に置かれている熱々の鍋だった。
「…嘘でしょ」
「何故この真夏に鍋を…」
グツグツと鳴る鍋。確かに美味しそうだが、普通こんな真夏に食べるものではない。この鍋を見て皆顔を顰める中、笹部がこの鍋について語りだす。
「それは水泳選手のスポーツ性栄養学的見地からに決まってるだろ?
俺特性の、たんぱく質ミネラルたっぷりの笹部鍋だ」
「鍋するならせめてエアコンを…」
暑さに身体が参っている渚の後ろには扇風機だけが回っている状態。ヘロヘロの彼に笹部がピシャリと意見をはねのけた。
「んなもんねぇよ!」
「そんなぁ〜〜」
「渚も蒼もだらしねーぞ」
「やっぱりやめにしませんか?」
そう一言言った怜の取皿に問答無用と笹部が具材を入れ差し出した。
「なぁに言ってんだ!絶対うめぇから!さぁ、食え!」
もう食べるしかないと意を決して天方が口に運ぶ。すると口を抑え眼を丸くするのだった。
「ほんと!おいしい!!」
「でしょう!?この鍋、俺が水泳部だった時に開発したんですよ!」
彼女の一声に皆箸を掴みだす。
渚は前髪を縛って我武者羅に頬張る。
怜は湯気で白くなるメガネを吹きながら、真琴と蒼は汗をかきながら…
横目に遙を見ると汗一つかいてなく、蒼は羨ましいと内心思う中、天方が笹部にそういえば…と口を開く。
「笹部さんってうちの水泳部のOBなんですよね」
「あ、はい。しかも最後の水泳部員。後輩が入ってこないまま、俺が卒業した後…つぶれちまったんだよなぁ」
あはは…と笑う笹部に対し、食べていた手を止め渚が身を乗り出す。
「その水泳部を僕達が復活させたんだから、最初からコーチしてくれても良かったのに」
「だぁ~からぁ!ピザ屋のバイトが忙しかったんだよ!」
と言いながら笹部が鍋をかき回す。そしてあるものを渚に見せるように鍋から上げた。
「ほら、これ中にご飯が入ってんだぞ」
「入れて入れてぇ!」
その言葉にその具材を取皿にいれようとするのだが、手が滑って失敗。
勢い余ってそれは鍋へ。それと共に熱い汁が思い切り飛び跳ね、それが怜と渚へ。
避けようと身を反らすが、一部はやはり降りかかり、渚はその反動で後ろにあった小さい机に激突。その衝撃で上に沢山積んであった雑誌が床に。
「すまん!大丈夫かぁ?」
「あら、大変!」
天方が慌ててそれを拾い集める中、何だそれと皆の視線はその雑誌に集まる。
「何これ?」
「何年も前のバックナンバー?」
渚がそのうちの一冊を手に持つ。それを遙が横目で見る。
「あぁ~いいですいいです。俺がやりますから」
「笹部コーチ、ひょっとしてこういうの捨てられない人ですか?」
真琴の茶化すような言葉を横目に雑誌を笹部は揃える。だが、床に置いたそれは扇風機の風で一枚一枚とページがめくれていく。
「はい……笹部さん」
天方が拾った雑誌を差し出すのだが、当の笹部の表情は一変する。ニコリと笑った天方を見つめながら、めくれた雑誌を握りしめ眼をパチパチさせる。
「ま、まりんちゃ…」
一方の天方も笹部が持つ雑誌を見て発狂する。
そして注目をそらそうと天方は鍋を指をさすのだった。
「あぁあああーーー!!!カニが燃えてます!カニ!!!!」
なんだかんだで鍋を食べ終わると次に出てきたのはスイカと花火だった。
ついたついたと渚が持つのは花火。そしてそれを持って怜を追いかけ始める。向けられた本人は当然のことながら逃げ始める。
「ほらほら!!レイちゃん!!」
「ちょっと!!こっち向けないでください!!」
駆け回る彼らを見ながら、2年生組は静かに線香花火を灯す。
「花火なんて久しぶりだ」
「ホントだね」
「そっか...蒼はずっとアメリカにいたんだもんね??」
「まぁ…そうだね。あ!!でも」
「でも??」
蒼は思い起こすように眼を細めた。
「あっちで日本人の知り合いができて、彼らと花火をやったなぁ」
蒼これやらない??
花火を手にもつのは中学時代に知り合った彼ら。
その彼らとは
ニコニコと笑い黒縁眼鏡から鶸色の瞳を覗かせる少年
と
青緑色の髪の少年
今頃なにしてるのかな?と蒼が久しぶりに留学時代の思い出を思い出している頃...
「みっ、水着関係のお仕事をされていたとは聞いていましたが…まさか…どおりでどこかで見た事が…じ、自分大ファンだったもので!!まりんちゃ」
笹部が思い切って振り向こうとしようとするが、その先ではピシリと物騒な音が聞こえてきて、彼は口を閉じ振り向くのもやめた。
「その話は終了…って事でよろしくお願いしますね?」
ニコニコと上辺っ面に笑う天方。だが、瞳の奥は笑ってなく冷たくそれを見た笹部の背筋は凍りつく。
そんな空気が流れる部屋の空気を切り裂くように江の声が響き渡る。
「あー!笹部コーチなんですかこれぇ!」
江の興奮した声になになに?と皆振り向く。
江の手にはどこで見つけたのかある物が握られていた。
「スイミングクラブのアルバム!」
江が皆に見えるようにと床に置きアルバムを広げる。
「「おぉ~!懐かしい!」」
そこにある写真を見て渚と蒼が感嘆の声を漏らす。
「江ちゃんもうつってる!これ、クラブの裏でBBQやったときのだー!」
渚が指したのは江が写っている下にあるBBQの写真。それを見て江は不平を漏らす。
「あ!それ私しらない!」
「これ、凜が転校してくる前のだからだよ」
蒼がのぞき込みながら小さく微笑んだ。
「七瀬くん、このころから大人びてる」
「写真に写るときくらい笑えよなぁ」
「ハルちゃんはいつも心で笑ってるんだよね」
天方と笹部の言葉に渚が笑みを溢して返した。
「これ、小5の夏の大会の時のだ!」
真琴が声をあげたのは小5の大会の写真。遙と蒼は貰った賞状とトロフィーをもって最前列にその後ろに並ぶようにと真琴達がいる写真。
「この時もハルちゃん優勝したんだっけ」
「私もしたよ!!」
「あれ、これ、お兄ちゃん……?」
江がある一角を指さす。それは右横。
そこには遠くて姿が小さいが確かにメダルをぶら下げた凛がいた。
「この時はまだ凛とは知り合ってなかった」
遙が呟いたその言葉に怜は顔を曇らせる。
しかし、誰一人夢中でその表情には気づかなかった。
「すごい!!僕たち出会う前から出会ってたんだ!!」
渚がこの事実に嬉しそうに目を光らせる。
「運命の赤い糸ってやつね」
「男同士でも赤い糸って言うの?」
小さく微笑んだ天方の言葉に疑問を抱く江が聞き返す。
その中、蒼があ!!と声を張り上げた。
「私と真琴が優勝した時の写真だ!」
その写真は蒼と真琴が二人でトロフィーをもって満面の笑みを浮かべている写真だった。
「懐かしいなぁ~」
そう言う蒼を横目に真琴は小さく微笑む。
「なんだ?お前ら二人の写真ならいくらでもあるぞ!!」
笹部がページをめくると、泳いでいる時の写真や大会の時の写真・イベントの時の写真が出てくる。
何故かたいてい一枚くらいのペースで遙も含めた三人の写真か真琴と蒼の二人だけの写真が出てきた。
「なんだかんだアオちゃん皆の輪の中心にいるかマコちゃんたちの傍にいたもんね」
「そ…そうだっけ??」
「おっ、この辺からは凛も写ってるな」
「転校してきたころだ!」
大雪が降り、皆で雪だるまを作った写真
大会前に行った強化合宿の写真
卒業前に岩鳶SCでやったパーティーの写真
怜にとってその写真どれも一枚一枚が輝いて見えた。
皆楽し気に笑っている光景が。
そして疑問に思うのだった。
どうして彼ら5人の関係は崩れてしまったのかと…
浮かない表情を浮かべる怜に気づいた遙は心配そうに彼を見つめるのだった。