夏祭り
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「よぅし、あのゲーム機狙うぞ…」
射的屋で獲物を狙っていた渚。隣では満足そうに取ったぬいぐるみを抱える蒼・逆サイドでは遙が的を狙っていた。その中、渚の携帯が鳴る。
「もう、はずしちゃったじゃない!」
文句を言いながら渚は慌てたように真琴に向き直る。
「マコちゃん、ちょっと持ってて」
携帯を開くため銃を真琴に持たせた渚は背を向けるようにしゃがみこんだ。
『現在、星は海岸沿いの屋台を抜け、大通りに向かっています。オーバー』
それにりょうかいと返事をした渚の後方では…
「トイレ行ってくる」
射的を終えた遙のその言葉に真琴は場所を提示する。
「ここからだと大通りのコンビニが近いかな」
「わかった…」
その言葉に渚が慌てたように遙を止めた。
「待って!もうちょっと我慢出来ない?」
「は?」
その言葉に流石に訝し気な表情を浮かべる。蒼も流石にその止め方はないと苦笑い。当の本人もやっちまったと顔が引きつる。
そんな渚をフォローするように口を開いたのは真琴だった。
「ああ、そうだ。あっちに仮設トイレがあったかも。そっちの方が近いよ」
「分かった」
「ああ、俺も行く」
二人が消えた場で渚が大きく息をつく。
それを半端呆れたように蒼は見ていた。そこまで凛と遙を合わせずにする必要が果たしてあるのかと思っていたからだ。
「ナギちゃん…」
「ん??なに??」
「凛は今どこ??」
蒼の疑問に答えようと、渚が携帯の画面を見せる。その文面を覗いた蒼は、なんだかんだ怜もやる気満々になっていることに苦笑する。
「ねぇ!アオちゃん!それより次どこいこっか?」
「え…あ~…そうだね…」
渚の言葉で蒼はキョロキョロ辺りを見渡す。そして渚の方に視線を戻すと彼はもう決めているのかニコリと笑っていた。
「祭りではかかせないよね~?」
「かかせない…??」
少し考え込むように首を傾げるがすぐに蒼は閃き、あ~!!と声をあげるのだった。
「あれね!!」
二人顔を見合わせ笑いあった二人が、トイレから戻ってきた彼らを連れ次の屋台に向かった。
「っ、ああっ!」
隣で真琴の声がして、蒼はヒョイッとヨーヨーを釣り上げた後、真琴の手元を見て苦笑いした。
「真琴…相変わらずだね」
「こういうのホントに無理」
肩を落とす真琴の逆サイドで渚はヒョイッと軽々しくヨーヨーを釣り上げる。
「えいっ。力入ってない方がうまくいくんだよ。人生と同じだ」
「ナギちゃん良い例え!!真琴ももう一回トラーイ!!」
渚のを見てか、蒼は負けずにもう一つ釣り上げる。そんな二人の様子を見て真琴は小さく笑う。
対して渚の隣にいる遙の隣ではいいなぁ…と羨ましそうな瞳で見る子ども達がいた。それを見ていた遙はヒョイッとヨーヨーを差し出した。
「欲しいなら、やる」
わぁ~!!いいの!!と嬉しそうに遙からヨーヨーを受け取る子ども達。
そんな様子を横目に渚は携帯を確認。
そしてヒソヒソト報告を始める。
「マコちゃん、アオちゃん。
凛ちゃん、今三丁目の公園にいるって」
渚の言葉に二人は訝しげに首を傾げた。
「三丁目の公園……?あの先には……」
「小学校があるね…」
一方…
後を尾行していた怜は岩鳶小学校に来ていた。そこには凛が一人。ずっと付いてくる似鳥に先に戻っていろと言い残してきたのだ。そして凛はフェンス越しに見える大きな木をぼんやりと見つめた。それを隠れて見ていた怜はそこで立ち止まった彼を不思議そうに見る。
もし怜ではなく蒼が尾行していたら気づいただろう。この木が凛達にとって大切な思い出の一つだということに。そして、彼の気持ちの変化に。
実際、この木を凛はじっと見ていたわけではない。
この木を通して、凛は思い起こしていた。
小学校最後のリレーで見えた景色。
そして
先日見た彼らのリレーの光景を。
自然にフェンスを掴む力が強くなる。
ようやく気付いた自分の想い。
でもいくら切望しようとそれは叶わない。気づいた瞬間に感じたのは強い胸の痛み。
思わず、凛は逃げるようにその場から走って立ち去る。
それを怜は戸惑いながら、怜の後ろ姿が見えなくなるのを見届ける。そんな怜の懐では、彼の携帯が小さく鳴る。それは、渚からのメール。
見失ってしまった事をメールで伝え、怜はそっと携帯を閉じた。