県大会
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そして翌朝…
気持ちよくベッドに寝ていた渚は携帯の着信音に起こされる。半分寝ぼけながらも音源の場所に手を伸ばし渚は応答した。
「はい、もしもし…」
だが、事情を理解した渚は一気に眼が醒め飛び起きる。
「え!?ハルちゃんが!?」
「泳いでくれるんですね!」
「良かったぁ~!天方先生にもすぐに電話します!」
それは渚だけでなく、連絡を受けた怜も江も同様だった。
「本当に大丈夫?リレーの練習は一度もしてないんでしょう?」
昨日と同じ会場にやってきた岩鳶水泳部一同。そして江から連絡を受け駆けつけた天方であったが心配そうに真琴と遙の方を見て尋ねた。その言葉に真琴は苦笑いを浮かべる。だが、過去にやらなかった練習のことを嘆いても仕方がないと真琴は前を見ていた。
「わからないけど、やるだけやってみます」
天方を見て言った真琴は遙の方を見た。
「それに、俺たちは初めてじゃないし」
「でも竜ヶ崎くんは…」
確かに真琴と遙と渚はリレーをしたことがあるから感覚が残っているかもしれない。だが、怜はリレー自体が初めての経験だ。流石に天方も心配していたのだ。
「渚くんたちまだ来ない」
そして未だに此処に現れない渚と怜。加えて何故か蒼もいない。このことにいつ来るのかと江も曇り顔に。
そんな中…前方から三人の姿が見えてくる。
「ごめーーん!!」
「ごめん遅れちゃった!」
「すみません!」
手を上げて走ってくる蒼と渚、そしてしっかり腕を振り走る怜だった。そんな彼らに江は声を上げた。
「もぅ、3人とも何してたの!?遅かったじゃない!」
その言葉に3人はそろって顔を見合わせた。そして得意げな顔をするのだった。
「それがね!!」
「実は!」
「僕たち!さっきまで学校のプールで、リレーの引継ぎの練習をしてたんです!」
実は連絡を受けた二人は会場に行く前に学校に寄っていたのだ。ちなみにそこに一足先にいたのは蒼。彼女の姿を見た渚達は眼を丸くし驚く。が、蒼は二人の取るだろう選択を先読みして待っていたのだ。そしてブレの渚からのバッタの怜へのリレーの引き渡しの練習を時間の許す限りやっていたのだ。
「これでレイちゃんの失敗フラグは回避だよ!」
事情を知った彼らは唖然とする。
「いつの間に…」
思わず声を漏らす真琴。三人はたまらずクスクスと笑った。
そして渚と怜は遙の前に行く。
「ハルちゃん。僕ね、また一緒にハルちゃんとリレーできるの、嬉しいんだ!」
「一緒に頑張りましょう。遥先輩」
彼らの言葉にパシパシと瞬きを遙は繰り返す。そんな遙を見た蒼と真琴は顔を見合わせると小さく微笑む。
「よーし!特訓の成果、みせちゃうぞぉ!」
「えぇ!見せる為に来たんですから!」
「さぁ!!みなさん!!頑張って行きましょ!!」
「「「「オ〜〜!!!」」」」
江の掛け声に真琴達は拳を青空に向かって突き上げるのだった。
そして遂に岩鳶水泳部のリレーの番が近づく。
刻々と時間が迫る中、蒼はある人物を探していた。
その目的の人物は廊下にあるベンチに座り込んでいた。彼の後ろ姿を見つけた蒼は思い切り彼の名を叫んだ。
「り〜〜〜〜ん!!」
蒼の声だと凛はすぐわかる。が、昨日のこともあり彼は聞こえないふりをした。だが、蒼はお構いなしに凜の手を掴んだ。
「凛!!見せたいのがあるの!!」
蒼は凜を無理やり立たせた。そして凛を引っ張る。
「ちょ...!オイ!!蒼!」
引かれるがままの凛が慌てた声を上げる。しかし、蒼はそんな凛の事を気にせずグイグイと引っ張った。引っ張って行った先は、プールサイド。そこでようやく凛は解放される。が、眼の前に見える光景に我が目を疑った。
今の種目はメドレーリレー。
フリーしか泳がないと一点張りの遙がいるのに、この種目にエントリーしてるとは凛は思わなかったのだ。
そんな彼を見て蒼はクスクスと笑った。
「驚いたでしょ!!」
「あぁ…エントリーしてたんだな」
そう紡ぐ凛の視線は遙達から離れることがなかった。そして何故か心の奥底で渦巻く感情にたまらず無意識に唇をかみしめていた。
観客席では江と天方、
プールサイドでは蒼と凛が
見守る中、笛が鳴り響く。
最初は、バックの真琴。笛の音と共にプールに入り、体制を整える。
「よーーーい……せい!!」
合図とともに真琴が泳ぎ始める。
あの泳ぎ…
何物も寄せ付けない、荒々しいダイナミックな泳ぎ…
真琴の泳ぎを見て凛の脳裏に思い浮かぶのは小学生の頃の真琴の泳ぐ姿。
あの頃とちっともかわんねぇ、真琴の泳ぎ…!
そして真琴が100メートル泳ぎきる。
タッチと同時にプールに飛び込んだのはブレを泳ぐ渚。
忘れやしねぇ…あの渚のストローク。
次に凜の脳裏に流れるのは小学生の頃の渚の泳ぎ。
後半の追い上げ、手が伸びるような錯覚をおこす、ストローク!
そして渚がタッチしたのと同時に飛び込んだのはバッタを泳ぐ怜。見事、今朝の特訓が功を奏したのか引き継ぎのタイミングはバッチリ。蒼は心の中で小さくガッツポーズをした。
そんな蒼の隣では凛がピクリと片眉をひそめ、拳をギュッと握りしめた。
アイツは…
なんだそのバッタは!!なってねぇ!!
怜の泳ぎを見て沸き起こってくるのは静かな苛立ち。
なんで…お前みたいなのが…あいつらと一緒に泳いでやがんだ!!
この光景を見なければ思うことはなかっただろう。凛がいま純粋に思うのはアイツラのリレーの中に自分が何故いないのかという疑問。
湧き上がってきた感情に戸惑う凛。瞳が揺らぐ凛とスタート台に立った遙は視線が交差した。
その時、何故か一瞬だけ二人の間に風が吹く。まるで時から切り離され二人だけが別の空間に移動してしまったかのように。
答えは…まだ見つからなくていい。今はただ...
遙は視線を凛から移しゴーグルを嵌める。それと同時に遙の時間が動き出す。遙はジッと怜が泳ぎきるのを静かに待つ。
そして、遙は怜がタッチしたのと同時に勢いよくプールに飛び込んだ。
5位で引き継いだ遙は泳ぐスピードがどんどん増していき、折返しの前に二人抜かし3位に浮上。皆が遙の名前を呼ぶ。
もしかしたら…
かすかな希望が見えてきて観客席で見ていた江と天方は興奮のあまり抱きつく。
一人抜き…そして一番前を泳ぐ人物へじわりじわりと確実に距離を遙は縮める。二人並び、若干遙がリードした状態でレースは終わる。
遙が泳ぎきり思い切り水面から顔を出す。そんな彼が聞いたのは、大声援とチームメイトがヤッター!!と思い切り叫ぶ声だった。
キャップとゴーグルを外し息を整える遙。一瞬、電光掲示板に眼を移す。その電光掲示板には岩鳶高校の隣に数字の1が書かれていた。遙はその事実に表情を変えることなく、プールサイドに視線を移そうとする。そんな遙に差し出されたのは見覚えのある大きな手。目線を上げると喜びに満ち溢れる真琴と渚と怜がいた。
「ハル!すごいよ!!」
「ハルちゃんやったよ!」
「遥先輩!僕感動しました!」
「僕も!すっごいドキドキしたよ!!」
「俺も!まだドキドキしてる!!」
笑い合う彼らの輪に入るように遙は真琴の手により引き上げられた。
「地方大会まで行けるなんて!」
「ハルちゃん愛してるよー!」
「遥せんぱぁーい!!」
遙にそう言って抱きつくのは渚と怜。為されるままの遙はそのまま渚と怜を受け入れた。
その光景は昔、リレーで優勝したときに己が抱きついた光景にダブって凛には見え、表情に影を落とした。
「……凛??」
不安になった蒼が彼の名を呼ぶ。が、凛はそのまま踵を返すように消えようとする。思わず、蒼は彼の腕を掴んだ。
「凛!!」
「わりぃ…一人にさせてくれ」
俯いたままの凛。蒼は何かを察したのか、ゆっくりと手を離す。凛はそのまま一言も発することなく歩く。
彼の後ろ姿になんとなくだが、あの頃の凛が少しだけだが戻ってきたように蒼は感じる。
なにか声をかけたいがどう伝えればいいかわからなかった。そんな蒼の思考を中断させたのははしゃぎ蒼の名を呼ぶ真琴達だった。
後ろ髪を引かれながらも蒼は、彼らの輪に入るのだった。
気持ちよくベッドに寝ていた渚は携帯の着信音に起こされる。半分寝ぼけながらも音源の場所に手を伸ばし渚は応答した。
「はい、もしもし…」
だが、事情を理解した渚は一気に眼が醒め飛び起きる。
「え!?ハルちゃんが!?」
「泳いでくれるんですね!」
「良かったぁ~!天方先生にもすぐに電話します!」
それは渚だけでなく、連絡を受けた怜も江も同様だった。
「本当に大丈夫?リレーの練習は一度もしてないんでしょう?」
昨日と同じ会場にやってきた岩鳶水泳部一同。そして江から連絡を受け駆けつけた天方であったが心配そうに真琴と遙の方を見て尋ねた。その言葉に真琴は苦笑いを浮かべる。だが、過去にやらなかった練習のことを嘆いても仕方がないと真琴は前を見ていた。
「わからないけど、やるだけやってみます」
天方を見て言った真琴は遙の方を見た。
「それに、俺たちは初めてじゃないし」
「でも竜ヶ崎くんは…」
確かに真琴と遙と渚はリレーをしたことがあるから感覚が残っているかもしれない。だが、怜はリレー自体が初めての経験だ。流石に天方も心配していたのだ。
「渚くんたちまだ来ない」
そして未だに此処に現れない渚と怜。加えて何故か蒼もいない。このことにいつ来るのかと江も曇り顔に。
そんな中…前方から三人の姿が見えてくる。
「ごめーーん!!」
「ごめん遅れちゃった!」
「すみません!」
手を上げて走ってくる蒼と渚、そしてしっかり腕を振り走る怜だった。そんな彼らに江は声を上げた。
「もぅ、3人とも何してたの!?遅かったじゃない!」
その言葉に3人はそろって顔を見合わせた。そして得意げな顔をするのだった。
「それがね!!」
「実は!」
「僕たち!さっきまで学校のプールで、リレーの引継ぎの練習をしてたんです!」
実は連絡を受けた二人は会場に行く前に学校に寄っていたのだ。ちなみにそこに一足先にいたのは蒼。彼女の姿を見た渚達は眼を丸くし驚く。が、蒼は二人の取るだろう選択を先読みして待っていたのだ。そしてブレの渚からのバッタの怜へのリレーの引き渡しの練習を時間の許す限りやっていたのだ。
「これでレイちゃんの失敗フラグは回避だよ!」
事情を知った彼らは唖然とする。
「いつの間に…」
思わず声を漏らす真琴。三人はたまらずクスクスと笑った。
そして渚と怜は遙の前に行く。
「ハルちゃん。僕ね、また一緒にハルちゃんとリレーできるの、嬉しいんだ!」
「一緒に頑張りましょう。遥先輩」
彼らの言葉にパシパシと瞬きを遙は繰り返す。そんな遙を見た蒼と真琴は顔を見合わせると小さく微笑む。
「よーし!特訓の成果、みせちゃうぞぉ!」
「えぇ!見せる為に来たんですから!」
「さぁ!!みなさん!!頑張って行きましょ!!」
「「「「オ〜〜!!!」」」」
江の掛け声に真琴達は拳を青空に向かって突き上げるのだった。
そして遂に岩鳶水泳部のリレーの番が近づく。
刻々と時間が迫る中、蒼はある人物を探していた。
その目的の人物は廊下にあるベンチに座り込んでいた。彼の後ろ姿を見つけた蒼は思い切り彼の名を叫んだ。
「り〜〜〜〜ん!!」
蒼の声だと凛はすぐわかる。が、昨日のこともあり彼は聞こえないふりをした。だが、蒼はお構いなしに凜の手を掴んだ。
「凛!!見せたいのがあるの!!」
蒼は凜を無理やり立たせた。そして凛を引っ張る。
「ちょ...!オイ!!蒼!」
引かれるがままの凛が慌てた声を上げる。しかし、蒼はそんな凛の事を気にせずグイグイと引っ張った。引っ張って行った先は、プールサイド。そこでようやく凛は解放される。が、眼の前に見える光景に我が目を疑った。
今の種目はメドレーリレー。
フリーしか泳がないと一点張りの遙がいるのに、この種目にエントリーしてるとは凛は思わなかったのだ。
そんな彼を見て蒼はクスクスと笑った。
「驚いたでしょ!!」
「あぁ…エントリーしてたんだな」
そう紡ぐ凛の視線は遙達から離れることがなかった。そして何故か心の奥底で渦巻く感情にたまらず無意識に唇をかみしめていた。
観客席では江と天方、
プールサイドでは蒼と凛が
見守る中、笛が鳴り響く。
最初は、バックの真琴。笛の音と共にプールに入り、体制を整える。
「よーーーい……せい!!」
合図とともに真琴が泳ぎ始める。
あの泳ぎ…
何物も寄せ付けない、荒々しいダイナミックな泳ぎ…
真琴の泳ぎを見て凛の脳裏に思い浮かぶのは小学生の頃の真琴の泳ぐ姿。
あの頃とちっともかわんねぇ、真琴の泳ぎ…!
そして真琴が100メートル泳ぎきる。
タッチと同時にプールに飛び込んだのはブレを泳ぐ渚。
忘れやしねぇ…あの渚のストローク。
次に凜の脳裏に流れるのは小学生の頃の渚の泳ぎ。
後半の追い上げ、手が伸びるような錯覚をおこす、ストローク!
そして渚がタッチしたのと同時に飛び込んだのはバッタを泳ぐ怜。見事、今朝の特訓が功を奏したのか引き継ぎのタイミングはバッチリ。蒼は心の中で小さくガッツポーズをした。
そんな蒼の隣では凛がピクリと片眉をひそめ、拳をギュッと握りしめた。
アイツは…
なんだそのバッタは!!なってねぇ!!
怜の泳ぎを見て沸き起こってくるのは静かな苛立ち。
なんで…お前みたいなのが…あいつらと一緒に泳いでやがんだ!!
この光景を見なければ思うことはなかっただろう。凛がいま純粋に思うのはアイツラのリレーの中に自分が何故いないのかという疑問。
湧き上がってきた感情に戸惑う凛。瞳が揺らぐ凛とスタート台に立った遙は視線が交差した。
その時、何故か一瞬だけ二人の間に風が吹く。まるで時から切り離され二人だけが別の空間に移動してしまったかのように。
答えは…まだ見つからなくていい。今はただ...
遙は視線を凛から移しゴーグルを嵌める。それと同時に遙の時間が動き出す。遙はジッと怜が泳ぎきるのを静かに待つ。
そして、遙は怜がタッチしたのと同時に勢いよくプールに飛び込んだ。
5位で引き継いだ遙は泳ぐスピードがどんどん増していき、折返しの前に二人抜かし3位に浮上。皆が遙の名前を呼ぶ。
もしかしたら…
かすかな希望が見えてきて観客席で見ていた江と天方は興奮のあまり抱きつく。
一人抜き…そして一番前を泳ぐ人物へじわりじわりと確実に距離を遙は縮める。二人並び、若干遙がリードした状態でレースは終わる。
遙が泳ぎきり思い切り水面から顔を出す。そんな彼が聞いたのは、大声援とチームメイトがヤッター!!と思い切り叫ぶ声だった。
キャップとゴーグルを外し息を整える遙。一瞬、電光掲示板に眼を移す。その電光掲示板には岩鳶高校の隣に数字の1が書かれていた。遙はその事実に表情を変えることなく、プールサイドに視線を移そうとする。そんな遙に差し出されたのは見覚えのある大きな手。目線を上げると喜びに満ち溢れる真琴と渚と怜がいた。
「ハル!すごいよ!!」
「ハルちゃんやったよ!」
「遥先輩!僕感動しました!」
「僕も!すっごいドキドキしたよ!!」
「俺も!まだドキドキしてる!!」
笑い合う彼らの輪に入るように遙は真琴の手により引き上げられた。
「地方大会まで行けるなんて!」
「ハルちゃん愛してるよー!」
「遥せんぱぁーい!!」
遙にそう言って抱きつくのは渚と怜。為されるままの遙はそのまま渚と怜を受け入れた。
その光景は昔、リレーで優勝したときに己が抱きついた光景にダブって凛には見え、表情に影を落とした。
「……凛??」
不安になった蒼が彼の名を呼ぶ。が、凛はそのまま踵を返すように消えようとする。思わず、蒼は彼の腕を掴んだ。
「凛!!」
「わりぃ…一人にさせてくれ」
俯いたままの凛。蒼は何かを察したのか、ゆっくりと手を離す。凛はそのまま一言も発することなく歩く。
彼の後ろ姿になんとなくだが、あの頃の凛が少しだけだが戻ってきたように蒼は感じる。
なにか声をかけたいがどう伝えればいいかわからなかった。そんな蒼の思考を中断させたのははしゃぎ蒼の名を呼ぶ真琴達だった。
後ろ髪を引かれながらも蒼は、彼らの輪に入るのだった。