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「ダメです、まだ…帰ってないみたいです」
「ダメだ!!鍵かかってる」
息を切らして着いたのは遙の家。もう日は既に落ちているのに明かりは点いておらず人の気配はなかった。蒼がガチャガチャやっても玄関の扉は開かないため施錠がきちんとされていた。
「裏から入ろう!」
真琴が先頭になり裏口に回る。蒼や渚・江も後に続く。
「わかった!!」
「いいんですか!!勝手に入って!!」
人一番真面目な怜が慌てながらも追いかける。そして裏口から入った一行は家の中をくまなく探す。しかし、どこにも遙の姿は見当たらなかった。
「ハル…」
「…どこいっちゃたんだろ」
遠い目で空に浮かぶ月を見上げるのは真琴と蒼。
そんな二人の背に向けて怜が強い目を向ける。
「帰ってくるまで、待ちましょう」
怜のその手には一枚の写真があった。その写真は小学校最後に出たリレーで優勝した時のもの。そっぽ向く遙の肩を組んで満面の笑みを浮かべる凛の姿。その両サイドには蒼と真琴と渚の姿。皆とても嬉しそうな表情をしていて見た怜は目を輝かせた。皆とリレーに出たらこんな風に笑いあってみたいと思ったからだ。
「ハルちゃん、リレー…出てくれるかな…」
その写真を横目に渚がボソリと呟く。それは静寂な場で響き小さく消えていった。
その後会話をすることなく遙の帰りを今か今かと待った。しかし一向に遙が現れることがなかった。
「帰ってこない…」
「何処行っちゃったんだろう」
机を囲むように座って待っていた江と渚が呟く中、同じくその場に座っていた怜は顔を青ざめていた。
「まさか…」
その言葉にガバッと渚が身を乗り出す。
「って怜ちゃん!不吉な顔して不吉な事言わないでよ!」
「まだ何も言ってません!でも…」
言いよどむ怜に真琴はそっと語り掛ける。
「大丈夫だよ。ハルはそんなに弱くない」
「そうだ携帯!電話してみればいいんだ!」
渚がハッと思いついて自分の携帯を取り出し操作し始める。
「遙先輩携帯持ってたの!?」
「それを早く言ってください!」
驚いた江と怜が電話番号を打つ渚を取り囲む。
「だってハルちゃん、携帯つかってる所もあんまり見たことなかったから…」
「とにかく、早くかけてみましょう!」
コール音が静かに鳴る。しかし、応答はなく留守設定に切り替えられる。
「ダメだ出ないよ!」
「メッセージを残しましょう!」
怜の一言で渚と江と怜が必死に遙に想いが届くように言葉を残す。そんな彼らの姿を見て蒼は小さく微笑んだ。
こんなにも遙には慕ってくれる人たちがいる。一緒に泳ぎたいと言ってくれている人たちがいる。それがどれだけ凄いことなのか。今の蒼にはわかる。だが、同時に遙の話を聞いた蒼には遙の気持ちがなんとなくわかる気がした。
きっと遙が一番一緒に泳ぎたいのは…
そしてそれはきっと凛も…
蒼が物思いにふける中、渚たちがぎゃぎゃと騒ぎ始める。
「こんなグダグダなメッセージで遙先輩帰ってきてくれるのぉ?」
「大丈夫!!こんなメッセージだからこそきっとハルちゃんの心に響いてくれる!!
って…ハルちゃん携帯おいてってるーーー!!!!!」
渚の目に留まったのはテレビの隣に置かれている小さい机の上に置かれた携帯電話。
「ハルは普段、あんまり携帯を持ち歩かないから…」
「あ…そういえばハルが携帯もっているの見たことないや」
真琴と蒼が慌てふためく渚達を見て苦笑いを浮かべる。
「今日はもう遅いよ!みんな帰った方がいい。
多分、ハルは泳がない。棄権しよう」
真琴の隣に座っていた蒼はそれを静かに聞いていた。軒の下に座っていたためか、雲一つない空に浮かぶ大きく丸い月が綺麗に見えた。
真琴達が待っていた遙はというと、岩鳶高校のプールで無心に泳いでいた。結局、自分が何を望んでいたのか、どうしたかったのか、何のために泳いでいるのかわからなかった。
だが、その答えは水の中に入っても出てくることはなかった。
そしてようやく帰路につく。自宅の明かりは玄関だけ点いていて訝し気に想いながら遙は扉を開けた。
扉を開けた遙の目に飛び込んできたのは、壁にもたれかかり寝ている真琴。その隣には彼に寄りかかっている蒼がいた。
「真琴、蒼…」
「ん…あれ??ハル!?」
眠りが浅かったのか蒼が重い瞼を上げる。目をこすりながらもぼやけた視界に映ったのは目を見開く遙だった。
「おかえり…ハル」
小さく笑いかけた蒼は、己の手に持っていたものを遙に手渡した。
「…俺の携帯」
「留守電を聞いて欲しいんだ」
それを聞いた遙は己の携帯を操作し耳元にあてた。
メッセージを再生しますという言葉の後に聞こえてきたのは渚達の声だった。
ハルちゃん!今どこにいるの??
早く帰ってきてください。皆心配してます。
遙先輩!ごめんなさい!私勝手にメドレーリレーエントリーしちゃったんです!
そうなんだ。だから、ハルちゃん!!明日みんなで泳ごうよ!
ボクなら大丈夫です。理論は明日の朝までに完璧に頭に叩き込んでおきますから。
レイちゃん…それ失敗フラグ~
メッセージを聞いている遙の脳裏に思い浮かぶのは、今日の試合で一生懸命に応援する彼らの姿。そしてブレを泳ぐ渚、バッタを泳ぐ怜だった。
再生が終わった携帯をゆっくりと遙は耳元から離す。そして腕を下ろした。そして目線を蒼に向けると彼女は頬を緩めていた。
「…答えなんてまだ見つかんなくていいよ。だからさ…皆で泳ごうよ。私はみんなのリレーを見たいなぁ」
ねぇ!!と遙のことを蒼は見上げた。
遙や真琴…そしてナギちゃんやレイちゃん。
皆と泳ぐのが今はすごく楽しい。だからさ、私と一緒に探そ…
皆と一緒に泳げば見つかる気がするんだ。泳ぐ理由…
まっすぐな菫色の瞳を向けられた遙の脳裏に浮かび上がる蒼の言葉。
そして遙が目線を蒼の隣で気持ちよさそうに寝ている真琴に移す。
ハルじゃなきゃだめなんだ…一緒に泳ぎたいんだ!!
合宿時に言われた真琴の言葉と共に今日の真琴の泳ぎが遙の脳裏に浮かんできた。
一瞬、遙は目を伏せる。
もう遙自身の想いは決まった。
「真琴、真琴!」
遙は真琴の肩を掴み揺さぶった。それでようやく真琴が目を覚ます。
「ハル…?」
「泳ぐんだろ?リレー」
意識が覚醒しきってない真琴は遙の言葉を理解するのに数秒かかる。が、ようやく呑み込めた言葉。一気に目が覚めた真琴は、目を輝かせ表情を緩ませた。
そして嬉しさのあまり隣にいる蒼に飛びつくのだった。
「ダメだ!!鍵かかってる」
息を切らして着いたのは遙の家。もう日は既に落ちているのに明かりは点いておらず人の気配はなかった。蒼がガチャガチャやっても玄関の扉は開かないため施錠がきちんとされていた。
「裏から入ろう!」
真琴が先頭になり裏口に回る。蒼や渚・江も後に続く。
「わかった!!」
「いいんですか!!勝手に入って!!」
人一番真面目な怜が慌てながらも追いかける。そして裏口から入った一行は家の中をくまなく探す。しかし、どこにも遙の姿は見当たらなかった。
「ハル…」
「…どこいっちゃたんだろ」
遠い目で空に浮かぶ月を見上げるのは真琴と蒼。
そんな二人の背に向けて怜が強い目を向ける。
「帰ってくるまで、待ちましょう」
怜のその手には一枚の写真があった。その写真は小学校最後に出たリレーで優勝した時のもの。そっぽ向く遙の肩を組んで満面の笑みを浮かべる凛の姿。その両サイドには蒼と真琴と渚の姿。皆とても嬉しそうな表情をしていて見た怜は目を輝かせた。皆とリレーに出たらこんな風に笑いあってみたいと思ったからだ。
「ハルちゃん、リレー…出てくれるかな…」
その写真を横目に渚がボソリと呟く。それは静寂な場で響き小さく消えていった。
その後会話をすることなく遙の帰りを今か今かと待った。しかし一向に遙が現れることがなかった。
「帰ってこない…」
「何処行っちゃったんだろう」
机を囲むように座って待っていた江と渚が呟く中、同じくその場に座っていた怜は顔を青ざめていた。
「まさか…」
その言葉にガバッと渚が身を乗り出す。
「って怜ちゃん!不吉な顔して不吉な事言わないでよ!」
「まだ何も言ってません!でも…」
言いよどむ怜に真琴はそっと語り掛ける。
「大丈夫だよ。ハルはそんなに弱くない」
「そうだ携帯!電話してみればいいんだ!」
渚がハッと思いついて自分の携帯を取り出し操作し始める。
「遙先輩携帯持ってたの!?」
「それを早く言ってください!」
驚いた江と怜が電話番号を打つ渚を取り囲む。
「だってハルちゃん、携帯つかってる所もあんまり見たことなかったから…」
「とにかく、早くかけてみましょう!」
コール音が静かに鳴る。しかし、応答はなく留守設定に切り替えられる。
「ダメだ出ないよ!」
「メッセージを残しましょう!」
怜の一言で渚と江と怜が必死に遙に想いが届くように言葉を残す。そんな彼らの姿を見て蒼は小さく微笑んだ。
こんなにも遙には慕ってくれる人たちがいる。一緒に泳ぎたいと言ってくれている人たちがいる。それがどれだけ凄いことなのか。今の蒼にはわかる。だが、同時に遙の話を聞いた蒼には遙の気持ちがなんとなくわかる気がした。
きっと遙が一番一緒に泳ぎたいのは…
そしてそれはきっと凛も…
蒼が物思いにふける中、渚たちがぎゃぎゃと騒ぎ始める。
「こんなグダグダなメッセージで遙先輩帰ってきてくれるのぉ?」
「大丈夫!!こんなメッセージだからこそきっとハルちゃんの心に響いてくれる!!
って…ハルちゃん携帯おいてってるーーー!!!!!」
渚の目に留まったのはテレビの隣に置かれている小さい机の上に置かれた携帯電話。
「ハルは普段、あんまり携帯を持ち歩かないから…」
「あ…そういえばハルが携帯もっているの見たことないや」
真琴と蒼が慌てふためく渚達を見て苦笑いを浮かべる。
「今日はもう遅いよ!みんな帰った方がいい。
多分、ハルは泳がない。棄権しよう」
真琴の隣に座っていた蒼はそれを静かに聞いていた。軒の下に座っていたためか、雲一つない空に浮かぶ大きく丸い月が綺麗に見えた。
真琴達が待っていた遙はというと、岩鳶高校のプールで無心に泳いでいた。結局、自分が何を望んでいたのか、どうしたかったのか、何のために泳いでいるのかわからなかった。
だが、その答えは水の中に入っても出てくることはなかった。
そしてようやく帰路につく。自宅の明かりは玄関だけ点いていて訝し気に想いながら遙は扉を開けた。
扉を開けた遙の目に飛び込んできたのは、壁にもたれかかり寝ている真琴。その隣には彼に寄りかかっている蒼がいた。
「真琴、蒼…」
「ん…あれ??ハル!?」
眠りが浅かったのか蒼が重い瞼を上げる。目をこすりながらもぼやけた視界に映ったのは目を見開く遙だった。
「おかえり…ハル」
小さく笑いかけた蒼は、己の手に持っていたものを遙に手渡した。
「…俺の携帯」
「留守電を聞いて欲しいんだ」
それを聞いた遙は己の携帯を操作し耳元にあてた。
メッセージを再生しますという言葉の後に聞こえてきたのは渚達の声だった。
ハルちゃん!今どこにいるの??
早く帰ってきてください。皆心配してます。
遙先輩!ごめんなさい!私勝手にメドレーリレーエントリーしちゃったんです!
そうなんだ。だから、ハルちゃん!!明日みんなで泳ごうよ!
ボクなら大丈夫です。理論は明日の朝までに完璧に頭に叩き込んでおきますから。
レイちゃん…それ失敗フラグ~
メッセージを聞いている遙の脳裏に思い浮かぶのは、今日の試合で一生懸命に応援する彼らの姿。そしてブレを泳ぐ渚、バッタを泳ぐ怜だった。
再生が終わった携帯をゆっくりと遙は耳元から離す。そして腕を下ろした。そして目線を蒼に向けると彼女は頬を緩めていた。
「…答えなんてまだ見つかんなくていいよ。だからさ…皆で泳ごうよ。私はみんなのリレーを見たいなぁ」
ねぇ!!と遙のことを蒼は見上げた。
遙や真琴…そしてナギちゃんやレイちゃん。
皆と泳ぐのが今はすごく楽しい。だからさ、私と一緒に探そ…
皆と一緒に泳げば見つかる気がするんだ。泳ぐ理由…
まっすぐな菫色の瞳を向けられた遙の脳裏に浮かび上がる蒼の言葉。
そして遙が目線を蒼の隣で気持ちよさそうに寝ている真琴に移す。
ハルじゃなきゃだめなんだ…一緒に泳ぎたいんだ!!
合宿時に言われた真琴の言葉と共に今日の真琴の泳ぎが遙の脳裏に浮かんできた。
一瞬、遙は目を伏せる。
もう遙自身の想いは決まった。
「真琴、真琴!」
遙は真琴の肩を掴み揺さぶった。それでようやく真琴が目を覚ます。
「ハル…?」
「泳ぐんだろ?リレー」
意識が覚醒しきってない真琴は遙の言葉を理解するのに数秒かかる。が、ようやく呑み込めた言葉。一気に目が覚めた真琴は、目を輝かせ表情を緩ませた。
そして嬉しさのあまり隣にいる蒼に飛びつくのだった。