県大会へ向けて
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合宿も無事終え、学校に戻った彼らはなお一層練習に励んでいた。
そして県大会5日前…
「遙先輩すご~い!また自己新記録です!地獄の合宿の成果ですね!」
泳ぎきった遙と渚が水面から顔を出す。そしてタイムを測っていた江が驚きの声を上げた。
「僕は僕は!?」
興味津津に聞く渚に対し、ストップウォッチを見る江の顔が少し曇る。
「んー、渚くんはもう少し頑張りましょうって感じ?」
えー!!と嘆く渚。そんな彼を江の隣で見ていた真琴が口を開く。
「だけど、みんな短期間でよくここまでこられたと思うよ。怜のバッタもタイムが上がってきてるし」
「怜くんは元々棒高跳びやってたおかげで、各種筋肉も出来上がってましたしね。でも!この程度で満足してちゃダメです!みんなもっと上を目指しましょう!ちゃんとしたコーチもつけて!」
「えー!今からぁ?」
水面から顔を出す渚。そんな彼を横目に江が興奮気味に話を続ける。
「何かを始めるのに遅すぎる事はありません!最後の調整だけでも見てもらえれば、より完璧なコンディションで大会にのぞめます!」
「そりゃ…コーチは居た方がいいけど、やってくれる人がいな」
「だったらもっと真剣に探すんですよぉ!!」
江がずんずんと自分の意見を言い、真琴が江の勢いに押される中、プールから上がった遙が二人の話し合いを鶴の一声のように止める。
「必要ない」
「まぁ、確かにハルには必要ないか」
その翌日…
お昼休みに皆で仲良く屋上で食事をしていたとき、屋上の入り口が開き江が入ってきた。
「みなさーん、合宿の写真プリントしてきましたよ!」
彼女の一言に皆が興味を見せる。
「みせてみせてぇ!」
「みたーーーい!!」
渚と蒼が身を乗り出す。そして江は印刷してきた写真を広げた。
「わぁ~!いっぱいあるねぇ!」
「あっはは!みんなたのしそぉ!」
それは遠泳している姿を中心に遊んでいる姿など様々な合宿の光景がおさめられていた。
「あ…これ鮫柄水泳部??江ちゃんいつの間に!?」
遙が手にとった一枚の写真。そこには凜の後ろ姿が写っていた。
渚の一言に江はえへへと笑った。
「合宿二日目にちょっと偵察に!」
「へえ…流石敏腕マネージャー!!」
「またあの部長に色仕掛け…」
渚が持つ一枚の写真には満面の笑みで映る御子柴の姿。
「色仕掛けじゃない!!」
渚に一言突っ込みを入れた江はノートを取り出す。
「写真だけじゃなくて、データもバッチリ!渚くんがエントリーしてるブレの100と200はこの人達。真琴先輩のバックは、この人達。怜くんのバッタはこの人。それぞれの選手の泳ぎ方の特徴やデータを、この秘密のデータブックにまとめておきますね!大会までに!ちなみにお兄ちゃんは…」
「フリーの100」
江の集めた情報によると凛は遙と対決するためにフリー100の1本に絞ったらしい。
じっと写真を見つめる遙を横目に渚が真琴のところに移動し耳打ちする。
「ハルちゃんタイムや勝負にはこだわらないって言ってたけど、凜ちゃんとだけはやる気まんまんだよね」
渚の言葉を聞いた真琴は遙が手に持つ写真を見てそして遙の横顔を見た。その表情は真琴から見ても真剣そのものに見えた。
そんな遙の手から写真を取り上げるように風が吹きその一枚だけ青空に消えていく。それを遙はジット見えなくなるまで見つめた。
「あれ??」
渚がおもむろに手をとった写真に目を丸くする。
「どうしたの…ナギちゃん…」
隣にいた蒼が渚の持つ写真を覗き込む。が、彼女はそれを見た途端固まった。そして、この写真を撮った張本人に声を張り上げた。
「ちょっと!!江ちゃん!!なに撮ってるの!!」
渚から写真をひったくると江にそれを突きつけた。
「あはは…いい絵だなぁと思って…」
その写真は蒼と凛が夕日をバックに写っている写真だった。
「なになに!!二人共凛ちゃんに会ったの!?」
渚が身を乗り出す。
「調味料を借りに民宿に行く道でたまたま会っただけ!!」
「で…江ちゃんを追いかけた私もたまたま凛に会っただけで…」
渚の勢いにおどおどしながら江と蒼は答えた。
「マコちゃん気になんないの…って、えぇ!?!?」
話に一向に加わってこない真琴を不思議に思った渚が真琴に視線を移す。が、彼は声をかけられても反応を示すことなく一枚の写真を見ていた。
「ちょっと!!マコちゃん!!」
渚が真琴の持つ写真を覗き込む。が、渚自身もそれを見て目を白黒させた。
「渚くん…どうしたん…」
黙り込む渚に違和感を覚えた怜と遙も覗く。が二人同様に固まってしまう。
その光景を一人楽しげに見ているのは江。隣にいた蒼はそんな彼女を訝しげに見た。
「ちょっと…江ちゃん。何撮ったの??」
「見てからのお・た・の・し・み」
隠せない笑みをこぼす江を横目に蒼は真琴の手にある写真をひったくる。
「うわ!!アオちゃん駄目!!」
顔を真っ赤に染めた真琴が慌てたように蒼から写真を取り戻そうと動くが、蒼はそれをサラリと避けた。
「私だけに見せないのはズルい!!…ってなにこれ」
その写真に写るのは、砂浜に寝そべる蒼と真琴。仲睦まじげな光景なのだが、添い寝している二人は何故か手をつないでいる状態だったのだ。
「……江ちゃん!!」
珍しく顔を赤く染めた蒼は江を追いかけ回す。
「ごめんなさい!!
でもとってもいい雰囲気だったからつい!!」
「つい…じゃない!!」
ちなみに放り投げられた写真はヒラヒラと舞いおりる。それを真琴は慌てて拾うのだった。
*
放課後…練習を終えた彼らは近くの神社で必勝祈願をしていた。
おみくじを引いている遙と江を上に残し蒼達は神社の鳥居近くの階段に座って話をしていた。
「凜ちゃん、バッタにもリレーにも出ないのかぁ~。やっぱりハルちゃんが出ないからなのかな」
「どうして遙先輩が出ないと出ないんですか?」
納得がいかないと怜が声を上げる。
「そういう関係なんだ…あの二人は」
「なんなんですかそれ!」
思わず突っ込みを入れる怜。蒼は苦笑気味に答えた。
「ん〜…言葉では言い表せにくいんだよねあの二人の関係」
まだ納得がいかない顔をする怜をなだめるように真琴が彼の肩に手を置いた。
「まぁまぁ。今回は俺達も個人種目だけに絞って、それぞれの力を出し切ろう」
「できれば僕もリレーに出てみたかった…」
怜がポツリと呟いた言葉に蒼達は目を見開いて彼を凝視した。まさか、怜がそう言ってくれると思わなかったから。
そして弾けるような笑顔を浮かべた。
「怜ちゃんも出たいのぉ!?」
「はい、こないだレンタルでオリンピックの試合を見たんです。異なる種目の4人が、力を合わせて一つのコースを繋いで泳ぐ姿の美しさ…」
怜は目を輝かせ、少し興奮しきった様子で喋りだした。
「特にタッチの瞬間のバッタのフォームの美しさといったら…
たとえば、僕ならラストのひとかきをいかに無駄なく美しくできるか考えているわけですが、やはり世界を相手に戦う選手たちも、まさに僕と同じような――」
怜が熱く語る中、上の方で江の驚きの声が聞こえてくる。
「うわぁ!遙先輩何ですかこれ!?」
気になった蒼達は話を中断し、慌てて階段を登るのだった。
「なになに、どうしたの?」
渚が一番に遙が引いたおみくじを覗き込む。蒼たちも同じように見る。
「半吉!?!?」
遙が引いたのは半吉だった。
「そんなの初めて見た」
「半分吉って事ですか?」
「後の半分は??」
「優しさ!!」
「それなんか違いません??」
「え〜〜あってるよ!!」
「違うと思うよ」
「私も真琴にさんせー」
「え〜!?じゃあなんなの!?」
半吉の意味をあーだこーだと言ってる中、おみくじを一通り見終わった遙が顔を上げる。
遙が見上げた空は夕日によりオレンジ色に染まっていたのだった。
そして県大会5日前…
「遙先輩すご~い!また自己新記録です!地獄の合宿の成果ですね!」
泳ぎきった遙と渚が水面から顔を出す。そしてタイムを測っていた江が驚きの声を上げた。
「僕は僕は!?」
興味津津に聞く渚に対し、ストップウォッチを見る江の顔が少し曇る。
「んー、渚くんはもう少し頑張りましょうって感じ?」
えー!!と嘆く渚。そんな彼を江の隣で見ていた真琴が口を開く。
「だけど、みんな短期間でよくここまでこられたと思うよ。怜のバッタもタイムが上がってきてるし」
「怜くんは元々棒高跳びやってたおかげで、各種筋肉も出来上がってましたしね。でも!この程度で満足してちゃダメです!みんなもっと上を目指しましょう!ちゃんとしたコーチもつけて!」
「えー!今からぁ?」
水面から顔を出す渚。そんな彼を横目に江が興奮気味に話を続ける。
「何かを始めるのに遅すぎる事はありません!最後の調整だけでも見てもらえれば、より完璧なコンディションで大会にのぞめます!」
「そりゃ…コーチは居た方がいいけど、やってくれる人がいな」
「だったらもっと真剣に探すんですよぉ!!」
江がずんずんと自分の意見を言い、真琴が江の勢いに押される中、プールから上がった遙が二人の話し合いを鶴の一声のように止める。
「必要ない」
「まぁ、確かにハルには必要ないか」
その翌日…
お昼休みに皆で仲良く屋上で食事をしていたとき、屋上の入り口が開き江が入ってきた。
「みなさーん、合宿の写真プリントしてきましたよ!」
彼女の一言に皆が興味を見せる。
「みせてみせてぇ!」
「みたーーーい!!」
渚と蒼が身を乗り出す。そして江は印刷してきた写真を広げた。
「わぁ~!いっぱいあるねぇ!」
「あっはは!みんなたのしそぉ!」
それは遠泳している姿を中心に遊んでいる姿など様々な合宿の光景がおさめられていた。
「あ…これ鮫柄水泳部??江ちゃんいつの間に!?」
遙が手にとった一枚の写真。そこには凜の後ろ姿が写っていた。
渚の一言に江はえへへと笑った。
「合宿二日目にちょっと偵察に!」
「へえ…流石敏腕マネージャー!!」
「またあの部長に色仕掛け…」
渚が持つ一枚の写真には満面の笑みで映る御子柴の姿。
「色仕掛けじゃない!!」
渚に一言突っ込みを入れた江はノートを取り出す。
「写真だけじゃなくて、データもバッチリ!渚くんがエントリーしてるブレの100と200はこの人達。真琴先輩のバックは、この人達。怜くんのバッタはこの人。それぞれの選手の泳ぎ方の特徴やデータを、この秘密のデータブックにまとめておきますね!大会までに!ちなみにお兄ちゃんは…」
「フリーの100」
江の集めた情報によると凛は遙と対決するためにフリー100の1本に絞ったらしい。
じっと写真を見つめる遙を横目に渚が真琴のところに移動し耳打ちする。
「ハルちゃんタイムや勝負にはこだわらないって言ってたけど、凜ちゃんとだけはやる気まんまんだよね」
渚の言葉を聞いた真琴は遙が手に持つ写真を見てそして遙の横顔を見た。その表情は真琴から見ても真剣そのものに見えた。
そんな遙の手から写真を取り上げるように風が吹きその一枚だけ青空に消えていく。それを遙はジット見えなくなるまで見つめた。
「あれ??」
渚がおもむろに手をとった写真に目を丸くする。
「どうしたの…ナギちゃん…」
隣にいた蒼が渚の持つ写真を覗き込む。が、彼女はそれを見た途端固まった。そして、この写真を撮った張本人に声を張り上げた。
「ちょっと!!江ちゃん!!なに撮ってるの!!」
渚から写真をひったくると江にそれを突きつけた。
「あはは…いい絵だなぁと思って…」
その写真は蒼と凛が夕日をバックに写っている写真だった。
「なになに!!二人共凛ちゃんに会ったの!?」
渚が身を乗り出す。
「調味料を借りに民宿に行く道でたまたま会っただけ!!」
「で…江ちゃんを追いかけた私もたまたま凛に会っただけで…」
渚の勢いにおどおどしながら江と蒼は答えた。
「マコちゃん気になんないの…って、えぇ!?!?」
話に一向に加わってこない真琴を不思議に思った渚が真琴に視線を移す。が、彼は声をかけられても反応を示すことなく一枚の写真を見ていた。
「ちょっと!!マコちゃん!!」
渚が真琴の持つ写真を覗き込む。が、渚自身もそれを見て目を白黒させた。
「渚くん…どうしたん…」
黙り込む渚に違和感を覚えた怜と遙も覗く。が二人同様に固まってしまう。
その光景を一人楽しげに見ているのは江。隣にいた蒼はそんな彼女を訝しげに見た。
「ちょっと…江ちゃん。何撮ったの??」
「見てからのお・た・の・し・み」
隠せない笑みをこぼす江を横目に蒼は真琴の手にある写真をひったくる。
「うわ!!アオちゃん駄目!!」
顔を真っ赤に染めた真琴が慌てたように蒼から写真を取り戻そうと動くが、蒼はそれをサラリと避けた。
「私だけに見せないのはズルい!!…ってなにこれ」
その写真に写るのは、砂浜に寝そべる蒼と真琴。仲睦まじげな光景なのだが、添い寝している二人は何故か手をつないでいる状態だったのだ。
「……江ちゃん!!」
珍しく顔を赤く染めた蒼は江を追いかけ回す。
「ごめんなさい!!
でもとってもいい雰囲気だったからつい!!」
「つい…じゃない!!」
ちなみに放り投げられた写真はヒラヒラと舞いおりる。それを真琴は慌てて拾うのだった。
*
放課後…練習を終えた彼らは近くの神社で必勝祈願をしていた。
おみくじを引いている遙と江を上に残し蒼達は神社の鳥居近くの階段に座って話をしていた。
「凜ちゃん、バッタにもリレーにも出ないのかぁ~。やっぱりハルちゃんが出ないからなのかな」
「どうして遙先輩が出ないと出ないんですか?」
納得がいかないと怜が声を上げる。
「そういう関係なんだ…あの二人は」
「なんなんですかそれ!」
思わず突っ込みを入れる怜。蒼は苦笑気味に答えた。
「ん〜…言葉では言い表せにくいんだよねあの二人の関係」
まだ納得がいかない顔をする怜をなだめるように真琴が彼の肩に手を置いた。
「まぁまぁ。今回は俺達も個人種目だけに絞って、それぞれの力を出し切ろう」
「できれば僕もリレーに出てみたかった…」
怜がポツリと呟いた言葉に蒼達は目を見開いて彼を凝視した。まさか、怜がそう言ってくれると思わなかったから。
そして弾けるような笑顔を浮かべた。
「怜ちゃんも出たいのぉ!?」
「はい、こないだレンタルでオリンピックの試合を見たんです。異なる種目の4人が、力を合わせて一つのコースを繋いで泳ぐ姿の美しさ…」
怜は目を輝かせ、少し興奮しきった様子で喋りだした。
「特にタッチの瞬間のバッタのフォームの美しさといったら…
たとえば、僕ならラストのひとかきをいかに無駄なく美しくできるか考えているわけですが、やはり世界を相手に戦う選手たちも、まさに僕と同じような――」
怜が熱く語る中、上の方で江の驚きの声が聞こえてくる。
「うわぁ!遙先輩何ですかこれ!?」
気になった蒼達は話を中断し、慌てて階段を登るのだった。
「なになに、どうしたの?」
渚が一番に遙が引いたおみくじを覗き込む。蒼たちも同じように見る。
「半吉!?!?」
遙が引いたのは半吉だった。
「そんなの初めて見た」
「半分吉って事ですか?」
「後の半分は??」
「優しさ!!」
「それなんか違いません??」
「え〜〜あってるよ!!」
「違うと思うよ」
「私も真琴にさんせー」
「え〜!?じゃあなんなの!?」
半吉の意味をあーだこーだと言ってる中、おみくじを一通り見終わった遙が顔を上げる。
遙が見上げた空は夕日によりオレンジ色に染まっていたのだった。