「見たことないまた景色見れるかな？」

「見るんだ俺たち5人で」

「はい！！」

「……行こう」

プールサイドに続く道を4人は歩く。
想いを一つに4人は、蒼の想いを背負い泳ぐ。

男子メドレーリレー400ｍ　予選1組


観客席で皆が見守る中、真琴がスタート体勢に入る。

「真琴！！」

「真琴せんぱ〜い！！」

「…真琴！！！！」

観客席から笹部・江・蒼の声援が飛ぶ。



ピーーーー

よーーい

せい！！！

合図とともに真琴がスタートを切る。


「あの時の景色！！」

泳ぐ真琴の目に突如映ったのは一面に広がる青空。
そして、優雅に楽しげに泳ぐ2頭のイルカ達。

彼らに導かれるように懸命に泳ぐ真琴の泳ぎはグングン加速していく。



「渚！！！」


タッチした真琴が水面に顔を出すと同時に渚が飛び込む。


渚の瞳に突然一匹のシャチが現れる。
そのシャチの背びれを渚は楽しげに掴む。そしてシャチは渚を乗せたまま勢いよく加速し水面から飛ぶ。その時に見えた景色に渚は目を輝かせた。




渚は壁にタッチすると怜の名前をありったけの声で呼ぶ。



「レイちゃん！！！」


泳ぎだした怜の周囲には沢山のペンギン達。
グングンと怜を抜き泳ぎを加速していくペンギンたちを追うように怜も後に続く。


そして、怜は壁にタッチする。
水面から顔を上げた怜は遙の名を呼んだ。



「遙先輩！！！」






泳ぐ遙の周囲にある水玉が黄色く光る蝶に。それらは遙を導くように水中の光る場所に誘う。
その蝶は一気に弾け散ると、そこには皆が現れる。

真琴

渚

怜

そして蒼


遙は皆の想いを胸に泳ぐスピードを上げていったのだった。




壁をタッチし水面から顔を出した遙の耳に入ってきたのは大歓声。そして、遙は真琴に引っ張り上げてもらうと、既に涙目になる怜と泣きじゃくる渚がいた。

真っ先に行動に移したのは渚。

勢いよく真琴と遙に泣きながら飛びつくように抱きつく。つられるように怜もその輪に加わる。

そんな4人は、最後の大舞台で

最高の景色…

最高のリレーを仲間たちと出来たのだ。


思い切り4人は肩を組んで輪になり喜ぶを分かち合う。
そんな彼らの瞳にはキラリと光る涙。


観客席では、彼らを見て、大きな雫を瞳から落とすのは蒼。


「……いいチームだねホントに」


泣く蒼の隣にはいつの間にか雪菜がいることに蒼は驚く。が、考えるより先に雪菜の胸に飛び込んだ。


「なんでいるの？雪菜？？」

「絶対に蒼は泣くだろうと思ってさ」

雪菜は笑いながらそっとハンカチを手渡す。

「さっさと泣きやめ！！
笑顔で出迎えてやんなよ！」

雪菜の言葉に蒼はコクコクと頷きながらそれを受け取った。




嬉しそうに泣きじゃくる彼らの声は会場の歓声に負けていなかった。


彼らの声は蒼には鮮明に聞こえた。







彼らのリレーは、全国大会6位という結果で幕を閉じる。



だが、この試合は彼らの中で色鮮やかに残るであろう…




彼らにとって、


最後の集大成となったこのリレーは最高の形として現れたのだから