次男坊の改心
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「おい、ルイ今暇か??」
「あ、ハクじゃないか?
僕に何か用かい??」
呼ばれたルイは寝っ転がっていた姿勢から立ち上がるとハクを不思議そうに見つめた。そんな彼にハクはニヤリと好戦的な眼差しを向けた。
「手合わせしねーか??」
「ハクと??
ジェハやキジャに頼んだ方がいいんじゃないか?
僕じゃ相手にならないよ」
「そう謙遜すんなって!
一度お前と手合わせしてみたかったんだよ」
愛想笑いするルイ。だが、ハクが矛先を変えることがなくギラついた眼差しをルイに向けるのだった。そんな彼にルイは心折れた。
「うーん、ハクがそこまで言うんだったら…」
「じゃ行こうぜ、コッチだ」
渋々とルイは腰を上げる。そしてハクに連れられて来た先は少し開けた場所だった。そこには一人の少女が木刀を片手に持っていた。彼女はルイの姿を確認すると嬉しそうに声を上げた。
「あ!ルイ!!」
「ヨナ!?」
どうしてヨナが木刀を持っているんだ?と驚くルイを尻目にハクが淡々とヨナに尋ねる。
「姫さん、素振りは終わりましたか??」
「えぇ!終わったわ
次は何をすればいい??ハク」
「次は俺とルイの手合わせを見ててください」
やる気満々のヨナはその言葉に大きく目を見開いた。そのやり取りにハクの意図が読み取れたルイは小さく項垂れた。
「え?ハクとルイが!!」
「ヨナに見せるため僕を呼んだのか…」
「まぁーな」
軽く相槌をするハク。が、ルイは腑に落ちないものがありハクに不思議そうに尋ねた。
「というか意外だね
ハクはヨナには剣を持たせないと思ってたけど…」
「色々あったんだよ」
「ふぅーーん」
ぶっきらぼうに答えるハクの様子に、どうやら彼自身も不本意だったことだとルイは察した。苦虫を潰した表情を浮かべるハクに勘繰る眼差しを向けるルイにヨナが決意の籠もった声を発した。
「私が命じたの
どうしても強くなりたくて…
だからルイも協力して」
「僕、できることあるかな??」
「だってルイは弓も引けるし剣も扱えるんでしょ?」
ヨナの言葉に最初は首をルイは捻る。ハクを師匠としてるのならルイ自身がヨナに教えられることは何もないと思ったからだ。だが、そんなルイの心情と裏腹にヨナが目を輝かせる。
「弓使ってるとこヨナに見せたっけ??」
「ジェハが得意げに話してたわ!」
「なに勝手にペラペラと話してんだ…」
ヨナから知らされる事実にルイが呆れ返る中、ヨナが身を乗り出す。
「そういえばルイはどこに暗器を入れてるの??
ジェハと同じような感じ??」
興味津々に聞いてくるヨナの言葉にルイは小さく頷く。が、あるフレーズが気になり驚きながらヨナに尋ねる。
「そうだね…
って、ヨナは見せてもらったのかい??」
「えぇ!!」
「実は姫さん、俺が剣を教えるの一回断ったときに
タレ目から短剣を奪ったことがあってよ」
茶々を入れるようにハクが横から口を挟んだ。実はハクは以前にもヨナから剣を教えてほしいと言われていたのだ。だが、それをハクは一回断った。だったら自分で鍛錬を積むしかないと考えたヨナはちゃっかりジェハに暗器を見せてもらった時に隙をついて短剣を拝借したことがあったのだ。
「ちょっ!!ちょっと!!ハク!!」
「へぇ~、あのジェハから出し抜いたんだ…
凄いじゃないか!!」
「えへへ…そうかな」
「たまたまですよ、たまたま」
「もう!!ちょっとくらい褒めてくれたっていいじゃない!!
ハクの意地悪」
ルイにより上げられ、ハクにより下げられたヨナは拗ねたようにハクに掴みかかる。そんなヨナにルイは口元を緩めて耳元に囁く。
「これもハクの愛情だよ、ヨナ」
「おい、余計なこと言うな」
「さて、始めようか?」
余計なことを吹き込もうとするルイをハクは鋭い目つきで睨み小突こうとする。が、ルイはさらりとそれを交わして愉しそうに笑ってハクの前を通り過ぎるのだった。
*****
ハクは大刀を持ち、ルイは短剣を持ち、両者は向かい合った。ピリピリと殺気を纏わせた二人は間合いを詰めながら懐に入るタイミングを見計らう。そんな二人の水面下の攻防戦をヨナは息を呑みながら見つめていた。
「サッサとかかってこいよ」
「ハク隙がないから中々飛び込みにくいや
遠慮しなくていいからハクからどうぞ」
「お前も中々隙がねぇーんだよ」
互いに腹の探り合いをしながら相手の隙を突こうとする。が、両者ともに相手に隙を見せるわけがなく、互いに挑発しあいながら膠着状態が続いた。だが膠着状態はルイにより打破される。
ジリジリと間合いを詰めていた両者。だが、ルイはある一瞬足に力を入れて地面を蹴り上げ一気にハクとの距離を縮めた。
カキン!!
大刀と短剣がぶつかり合い金属音が鳴り響く。ハクの下に潜り込んだルイは首元に刃を振り上げようとするのをハクが寸止めして防いだのだ。
「…はぇーな!!」
「力では僕は負けるからね」
鍔迫り合いをしながら両者は口角を上げる。そして瞬時に半歩下がると息つく間もなく、一気に畳み掛けるように風を切るように剣と大刀の打ち合いが始まった。が、完全に受け止められず両者の身体や頬には所々に切り傷が付けられていった。
「やっべ!!」
ルイの頬に付けてしまった切り傷から鮮血が飛び散ったのを視界に捉えるとハクは顔を真っ青にした。そのハクの焦った声にルイは手を止めた。
「え…何が??」
「あ…いや…」
頬に伝る血を拭ったルイはキョトンとハクを見る。その様子にハクは目を右往左往させた。いくら本気の手合わせとはいえ顔に傷を付けてしまった。これをアイツが見たらと考えたらハクはゾッと背筋が凍った。自分自身に置き換えて考えたら憤りを押さえられる気がしないからだ。
あぁ……タレ目、わりぃ…
ハクはこの場にいない彼に内心平謝りした。
「そっちが来ないなら行くよ」
「かかってこいよ!!」
両者仕切り直しと構え直し二人は飛び出す。だが、それを制止する怒声が木霊するのだった。
「何やってんだよ!!二人共!!!」
「「へぇ??」」
飛び出した二人はピタリと急ブレーキをかけて顔を見合わせた。この怒声も持ち主はもっとも怒らせてはいけない相手だ。ハクとルイは目線を合わせ確認し合うと顔から血の気が失せていった。非常に不味いと恐る恐る声のした方向に目をやる。するとそこにいたのは、目尻を吊り上げてコチラを睨むユンだった。
「仕事増やさないでよ!!
二人揃って傷だらけになるまで普通やる!?!?」
完全に怒っているユンが怒鳴り散らす。ユンの言うとおり刃で服はところどころ破けており身体にも薄っすら赤い線が走っていた。
「えっと、ユンはなんでココにいるんだ??」
「ヨナが呼びに来たんだよ」
恐る恐る尋ねるハクにユンが強い口調で答える。その言葉に二人はハッとした。すっかりヨナの存在を忘れていたのだ。
「まぁまぁ、ユン
僕の力で治すから…」
「そんなので力を使わないで!!」
顔を引き攣らせながらルイが宥めようとする。が、ルイは一度力を使ってぶっ倒れているケースがあるためユンがそのままわかったと言うわけがなくピシャリとルイを黙らせてしまうのだった。
見事に言い静められた二人は互いに顔を見合わせて苦笑い。結局勝敗が決まることなく二人はユンの元に重たい足取りで向かうのだった。