その背には
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「タレ目、平気か??」
「はぁぁ…
このやり取りで一気にやつれた気分だよ…」
ヨナがルイを連れて浴場に向かい、男性陣のみになった場でハクが珍しく気遣う言葉をポツリと投げかける。その言葉にジェハは疲れ切ったように大きく息を吐いた。
「あ!ホントだ!!
緑龍の顔ゲッソリしてる!!」
笑みを浮かべてゼノが俯くジェハの顔を覗き込む。そんな無邪気に覗くゼノの顔をジェハは俯いたまま引き離そうとする。
「ゼノ君
もしかして君楽しんでない??」
「そんなことないぞ〜
ゼノはいつもどおり正常運転だよ!」
「ってかなんでお前ルイが女だって気づいたんだ??」
あっけからんと答えるゼノにこの子はそうだったとジェハが溜息をつく背後ではそのゼノを不思議そうにハクが見ていた。
そのハクの疑問に対してゼノは笑みを絶やさず答える。
「だって姉ちゃんいい匂いしたから〜」
人目を気にすることなく誰に対しても抱きつくゼノの発した言葉に、ジェハが静かに殺気を身に纏わせ始める。そのピリピリとした空気の変化を敏感に察したゼノは愛想笑いして嘘嘘!!と弁明するのだった。
「知ってたからさ〜
巫女の力が宿るのは女の子だけってことをさ!!」
「ゼノ…
それ先に言ってよ!!」
ゼノの明るい声に対して、遠い目をしたユンが絶叫に近い声を上げるのだった。そしてゼノの身体を力いっぱいに揺り動かした。
そんな二人のやり取りを横目にキジャが不思議そうに傍観しているハクを見た。
「そういえば、ハクはいつ気づいたんだ??」
「んん…そうだな…」
腕を組んでいたハクはそれを外すとどう言おうかとハクは言葉を濁す。
「経緯はおいといて
加淡村ではもう知ってたぜ」
「な…なんと…」
ガラガラと音をたてるようにキジャは崩れ落ちた。そんな彼を宥めるようにシンアがそっと彼の肩に手を置いた。
「ってかルイもルイだよ!!
もっと早く言ってくれればいいのにさ!!
それにジャハも知ってたんなら促してくれれば良かったのに…」
プンスカと怒るユンにジェハはごめんねと申し訳無さそうに呟いた。そのジェハにハクがふと沸き起こった疑問を投げかける。
「そういや、ルイっていつから男装してるんだ?」
「さぁ??」
その問いにジェハは首を捻った。その間の抜けた反応に一同はえっ…と驚きの声を漏らした。
「ジェハ、知らないの??」
「だって僕が出会った時は既に男装していたからね」
「…マジか」
「僕も気になって聞いたことあるんだけど
覚えてないやってはぐらかされたんだよね〜」
半笑いしながら嘆かれたジェハの言葉に一同は絶句。その中で、ユンが難しい表情をしながら口を開いた。
「と…いうことは…
ルイはずっと自分を偽って生きてきたってこと??」
「まぁ…そういうことにはなるかなぁ…」
「そんなの駄目だよ!!」
目を伏せて答えるジェハの言葉にユンは悲鳴に近い声を上げた。確かに性別を偽らないと生きていけない場所に身を置いていたかもしれない。でもこれからはちゃんと偽らないで自分らしく生きて欲しいとユンは心の底から願ったのだ。
「そうだね…ユン君の言う通りだよ」
「まぁ、姫さんかユンが言えば止めんじゃねーの??」
ユンが抱いた想いは他の皆も同意だといわんばかりに頷いて見せた。その皆の顔を見渡したユンは胸を張って啖呵を切るのだった。
「もう金輪際!ルイには男装はさせないから!!」
*****
ジー―――
「ちょっとヨナ、そんなに見つめないでよ…」
「どうして??」
場所を変えて脱衣所。そこでは脱ごうとしていたルイがヨナの純粋な眼差しに愛想笑いを浮かべていた。ヨナの紫紺の瞳が興味津々でルイの胸元を見つめながら、彼女の言葉にキョトンと首を傾げたのだ。
「どうしてって…」
苦笑しながらもこれは彼女の興味が引くまでは真っ直ぐなヨナの眼差しが逸れることはないだろうとルイは諦めて服を脱ぐのだった。服を脱ぎ胸元に撒いてあるサラシを解いていく。そしてようやく現れたものを確認したヨナは本当だったんだと目を丸くする。そんなヨナにルイがジト目を向けた。
「ちょっとヨナ〜〜」
「ごめんなさい
ちょっと気になっちゃって…」
「まぁ…別にいいけど…」
苦笑いして謝るヨナにルイは仕方ないかと肩を竦める。そんなルイにヨナはようやく実感が湧いてきたのか嬉しそうに笑みを零すのだった。
「ルイが女の子だったなんて驚きだわ
そしてとっても嬉しい!!」
「ゴメンね…なかなか言い出せなくて」
「ううん……いいの」
無邪気に笑うヨナの言葉にルイは今まで黙っていた後ろめたさを感じて表情を曇らせる。が、彼女なりの事情があったのだろうとヨナは小さく首を横に振ると真っ直ぐとルイを見つめた。
「でもこれからは気兼ねなく接してほしいわ
ルイのこともっともっと知りたい!」
真っ直ぐなヨナの言葉にルイは目を見開き瞬きを繰り返した。彼女の言動には出会ったときから驚かされてばかりだ。
屈託のない無邪気な笑顔、純粋な想いが乗せられた言葉には心揺さぶられる。
どうしてなのだろうか??
胸に広がる温かいものがルイにとっては心地よく、ルイの表情は無意識に柔らかくなるのだった。
*****
「「気持ちいい!!」」
脱衣所を出て露天風呂のお湯に一緒に肩まで浸かった二人は丁度いいお湯加減に頬を緩ませ感嘆の声を漏らした。
その声は男湯にまで響いており、同じくお湯に浸かっていたユンが反応をする。
「白いお湯ね!
美容が含まれてるのかな?
まぁ、確かにお肌すべすべになりそうだけど…」
「お肌すべすべ!!」
一枚の壁を隔てて聞こえるユンの言葉にヨナとアオが目を輝かせた。
「ヨナは、十分肌白いしすべすべだと思うけど…」
「ルイに言われたくない!!」
のんびりと身体を沈めていたルイが苦笑混じりに言うが、それに対してヨナはムクッと頬を膨らませるのだった。そのヨナにルイはえっ…と間の抜けた表情をした。そんな彼女にヨナがグッと顔を近づけた。
「だって、ルイスタイルいいし肌も白いし…
綺麗で羨ましい…」
拗ねた声を漏らすヨナに、不意打ちを喰らってしまったルイは拍子抜けしてしまう。ヨナの言葉を呑み込むのに数秒かかってしまったルイは何度も瞬きした後ほんのりと照れくさそうに頬を染めた。
「いや…何言ってるの…」
「だって本当のことだし!!」
「いや…でも…
所々に傷があるから…」
ヨナの真っ直ぐな言葉にルイは言葉を濁しながら水面下に顔の半分を沈めた。ブクブクと泡を立てて目を逸らすルイの照れ隠しにヨナはクスクスと頬を緩ました。
「ルイもこんな表情浮かべるのね!
ジェハに是非見せたいわ!!」
「絶対に言わないでよね
アイツに知られたら恥ずかしすぎて死ぬ…」
「えぇ~?どうしようかしら〜」
「ちょっとヨナ!!」
戯けるヨナにルイが水面から顔を上げると上ずった声を上げた。そしてこんな表情を見れると思わなかったヨナは愉しそうに笑う。
「格好良くて優しいお兄さんとして見てたからなんか新鮮ね!」
「もぉ…そんな風に見てたの…」
「大丈夫よ!今からはお姉さんとして見るから!!」
「はぁ…全く…
私は随分と可愛らしくてお転婆な妹を持っちゃったらしいね…」
期待の眼差しを向けるヨナに、ルイは前髪を掻き上げながら苦笑いする。が、そんな言葉と裏腹にルイは嬉しそうに頬を緩ましていたのだった。
「可愛い!?
でも…お転婆は余計な気が…」
「なんで??愛嬌あっていいと思うけど??」
一喜一憂するヨナは複雑な表情を浮かべる。そんなヨナにルイはニヤリと不敵な笑みを零した。
「なんかいつものルイと違うような…」
「あれはあくまで演技だからね!
それにヨナはいじりがいがあるからツイツイ…」
「もう!!ルイったら!!」
クスクスと笑い出すルイに釣られてヨナも笑みを零す。二人の笑い声は暫く止まることはなかった。