出稼ぎ
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「うっわ…
ハク、どんだけ女性を虜にしているのよ」
「うっせ…不可抗力だ
っーかその言葉そっくりそのままてめぇーに返してやる」
「別に私なにもしてないわよ?」
「俺だってなんもしてねーよ」
ハクが連れてきた大勢の女性客に流石のルイも大きく目を見開いて驚いた。そんなルイが思わず漏らした冷やかし混じりの言葉に、どっかりと座り込んだハクが鬱陶しそうに言葉を吐き捨てた。そんな彼らの軽い言い争いに客が口を挟んだ。
「ねぇ?
お姉さん!この方、彼女さんいますか?」
「もちろんいませんよ~
口説き落とすなら今がチャンスです!お客さん」
その一声にガラリと口調を変えたルイがニッコリと笑みを浮かべて微笑んだ。そのルイの言葉にハク目当ての女性客はやる気の満ちた声を上げた。
「おい!
この姉ちゃんももちろん彼氏さんいないよな?」
「ちょっとなに失礼なことを聞いてるの?!
こんなにお綺麗な方に彼氏がいない方がおかしいわ!!」
するとその話に乗じてルイ見当ての男性陣がハクに尋ねる。が、その質問に対して女性達がまるで自分のことのように声を荒げた。
「どっちだ!!」
「どっちですか!!」
グッと顔を近づけられたハクは大きくため息を吐きながらもニヤリと口元を吊り上げた。
「もちろん、いらっしゃいませんよ
俺が言ったらなんですが、いい優良物件ですよ?彼女は」
その一声に男性陣は雄叫びを上げた。その太く低い大きな声にルイは半笑いしながら、元凶のハクを秘かに睨みつける。だが、やられたのはこっちも同じだと云わんばかりにハクは愉快気に青藍色の瞳を細めるのだった。
「ねえねえ、名前教えてよ!」
「姉ちゃん、名前なんって言うの?」
無論、彼らがまいた火種は鎮火することなく二人への質問攻めが始まった。
「あ?薬売り助手だよ」
「すみません、お答えできません」
「それよりお客さん、どっか体調悪いとこねーっスか?」
「どこか痛い場所はありますか?」
「お兄さんが診察してくれるの?」
「姉ちゃん診てくんね?」
「俺は医者じゃアリマセン」
「すみません、専門外です」
言い寄られる二人は適当にあしらっていく。そのやり取りに、ユンはジト目を向けた。
「ねぇ!
俺の店は花街じゃないんだけど」
「違ェよ、客引きだろ
あんたら買わねェんなら帰れ!」
そのユンの言葉に反論したハクは慌てふためいて群がる女性に声を荒げる。それに女性達は動じることなくうっとりとした眼差しでハクを見つめるのだった。
「わかった、買う!買うからおまけ付けて」
「おまけだってよ、ユン君」
「抱きしめて下さい!!」
「スイマセーン、この店のおまけ意味がわかりませーん」
「お安い御用だよ、お客様」
「うおーい、安売りすんな俺の身体」
赤面させて祈るようにおまけをお願いした女性の言葉に拍子抜けしたハクが呆れた口調を溢す。が、それに対してお金に釣られたユンは目を輝かせてゴーサインを出すのだった。
「坊主!!
こっちにはおまけくんねーの??」
そのやり取りに聞き耳を立てていた男性陣がこっちにもよこせと云わんばかりに声を上げた。それに、とばっちりを受けたルイが思わず声を漏らした。
「お兄さんたちはどんなおまけが欲しいの?
ちなみにお持ち帰りは禁止だからね」
「わかってるわかってる!!」
その不機嫌な声に対して、ユンは視線を鋭く光らせる。それに軽快に男性達は笑いながらルイを指さした。
「買ったら、姉ちゃんとの抱擁タイム頂戴」
「よし、その話乗った!!」
「え?!ユン!!」
「しゃーない、ユンが言うなら仕方ない
諦めろ」
ユンがその話に乗るとは思わなかったルイは驚きの声を上げる。が、ユンの耳に入ることはなかった。当然、おまけを無しにすることはできないことに、頭を抱えるルイに、同じく被害者のハクが大きくため息を吐いて軽く彼女の肩を軽く叩くのだった。
*****
「きゃー!!いいなぁ!!」
「次私っ」
「私よっ」
「いーから買えよ」
ハクが知らない綺麗な女性を抱き寄せている。その1カットを目の当たりにしたヨナはズキッと胸の苦しみを覚えた。その感覚にヨナは戸惑いながら胸を擦る。そして、ヨナは困惑を覚えたままクルリと身体を反転させてその場を一人で離れてしまう。そんな彼女を視界の端に入れた者が1人いた。彼は店の前で繰り広げられている光景から目を逸らすように緑色の髪を靡かせて彼女の赤い髪色を追うのだった。