戦の火種
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この国には指導者が要る
強い力でこの国を守る指導者が…
高華国の5部族を一つに纏め上げる強固な指導者がいないと、またこのような反乱が起こりかねない。そう感じたヨナは上空に羽ばたく一羽の鷹の鳴き声にハッとする。その鳴き声に釣られヨナは顔を上げる。すると宙で弧を描いていた鷹はヨナの視界の先でバサッと羽音を鳴らすと馬に跨る一人の青年の肩に留まるのだった。その人物を捉えてヨナは大きく目を見開いた。
あぁ…だから貴方はこの国の王になったのね…
ヨナは全てを察したように遠目に見える青年…スウォンを見つめるのだった。
「姫さん、どうし…」
弓を引いていたヨナが両手を下ろしている様子を視界の端に捉えたハクは息を整えながら彼女に声をかける。しかし、ヨナはある一点を見つめたっきり。ハクは不思議に思いヨナの視線の先に目をやる。するとそこにいたのは憎き相手だった。青藍色の瞳をカッと開いたハクは怒りのあまり無意識のうちに大刀を持つ手に力がこもっていた。
その二人の視界の先にいたスウォンも二人の存在に驚きを隠せずにいた。そんなスウォンの後方から遅れてジュドとグンテが兵を引き連れてやってきた。
「陛下!」
「もの凄い力の連中とは如何に?」
ジュドとグンテはスウォンの両脇を固めて彼の視線の先に目をやる。見覚えのあるものを遠目でも捉えることが出来た二人は状況を把握して絶句するのだった。
一方で、ユンは続々と集まってきた兵士に気づきこのままここにいるのは不味いと判断して未だに一点を見つめているヨナの名を力強く叫んだ。
「ヨナ、撤退しよう。ヨナ!」
その声にスウォンの視線から己の視線を振り切るようにヨナは外すと静かに目を伏せた。そして数秒目を伏せていたヨナはカッと瞼を開けると力強い言葉で指示を出した。
「撤退する!ハク、キジャ。突破口を作って。」
「お任せ下さい!」
その声にすぐさまキジャは反応を示す。しかし、ハクは未だにスウォンの方を見つめたままだった。そんな彼を諭すようにヨナは小さい声で彼の名を紡いだ。
「ハク」
「…了解」
ヨナに呼ばれたハクは渋々ながらもわかっていると了解の意思を示す。そしてようやくスウォンから視線を外すのだった。そのままハクは感情を吐き出すかのように大刀を振るい始める。その様子を横目に捉えながらキジャはゼェゼェと息を荒げながらジェハへ向けて大きな声を叫んだ。
「ジェハ!姫様とユンを頼む」
「わかってるよ」
言われるまでもないとジェハは既にユンを抱えた状態で返答した。そしてジェハはヨナの名を呼んで彼女も抱える。対して、両脇に二人をそれぞれ抱えたジェハの背後に丁度バク宙してきたルイが着地する。跳ぼうとしたジェハは背に感じる気配に地面を蹴りだす足を止めると視線を前に向けながら彼女に向けて声をかけた。
「…無茶だけはしないでよね」
「大丈夫さ…
無事に全員を帰還させてみせるよ」
「その全員にちゃんと自分を入れているんだろうね?」
「もちろんさ
ここでくたばる気は更々ないよ」
呆れた口調で話すジェハに対してルイは力強い言葉で返した。そのルイの翡翠色の瞳は力強く輝いていた。
「ほら、早く行った行った」
あしらうように言葉を放ったルイは押し出すようにジェハの背に手を一瞬置いた。その一瞬で
走り回って得物を振るっていて体力が限界で所々に切り傷を負っているにも関わらず
「青龍が
ゼノもやるー」
「ゼノは先に行って…」
「えーっ」
対して後方では剣を構えるシンアに無邪気にゼノが声を掛けていた。が、シンアはその申し出をやんわりと断った。それに不服そうなゼノの肩を追いついたルイが軽く叩いた。それに振り返ったゼノにルイは笑いかけた。
「ココは僕らに任せて先に行って」
戦地にも関わらず柔らかい笑みを浮かべるルイの裏に隠れ見える疲労感をゼノは感じ取ったものの、有無を言わせない力強い口調に押される形で彼は息を小さくつくと仕方なく従った。
「わかった~!
じゃあゼノはお言葉に甘えてお先に~」
心配そうにルイを見つめていた表情を一変させ明るい表情に戻ったゼノは二人に背を向けて走り出していった。その前方に行った3人の背を守るようにシンアとルイは立ち塞がった。
「…ルイも」
「シンア1人残して先には行けないよ」
ここは自分だけで平気だと言おうとしたシンアの言葉を遮る形でルイが軽い調子で声を掛けて片目を瞑って見せた。そんなルイにシンアは呆気にとられてしまうが、ルイはシンアを放置して鋭い眼差しを前方に向けていた。
「さて、もうひと踏ん張りしましょうか?」
ペロッと舌を出して唇を舐めたルイは右手を薙ぎって突風を巻き起こした。その風に巻き込まれて構えていた兵士が地面に投げ出される。
「僕の
得意げに軽く笑ったルイはシンアをいざなってハク達が作り出した突破口へ駆け出す。その最中襲い掛かってくる相手をシンアは切り捨て、ルイは的確に兵の脚に暗器を投げつけていった。そして最低限の攻撃のみで逃げ道を保ち後方を駆け抜けた二人は戦地を後にするのだった。