阿波の海賊
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「やぁ!ヨナにユン!」
「あら!ルイじゃない!!」
翌朝、勧誘のために一足先に船を出たジェハに遅れるように街に出ていたルイはバッタリとヨナとユンに出くわしていた。そして自然に並んで歩きはじめていた。
「そういえばヨナ達は何をしてるんだい?」
「実は人を探しているの」
「へぇ〜、それなら僕も手伝おうか?」
「ホントに!!ルイ!!」
旅人だとハクから聞いていたルイはこの街での彼女たちの目的が気になってふと尋ねてみた。すると人探しだということでそれなら役に立てるのではないかとルイは提示したのだ。その思いも見なかった提案にユンは目を輝かせた。
「特徴がわかればある程度検討つくと思うんだけど…」
「ルイ、実はね特徴さっぱりわからないの」
「え?どういうこと?」
「俺たち会ったことない人を探しててさ」
「名前もわからないの?」
「……うん」
だが、ヨナとユンはルイに探してもらおうとしても名前も外見も何も特徴を知らないことに今更気づき表情を曇らせた。思いもしなかったことにルイは思わず目を丸くした。一体彼らは何も情報を持っていない中どうやって1人の人物を探そうとしたのだろうかと。
「そういえば、この人相書きってルイよね!」
「え…」
歩いていた足を止めてヨナがある壁を指差す。それにルイが人相書き?と不思議に思いながらその方へ視線をやる。するとそこにはずらり人相書きが貼られていて、ハクのものとジェハのものもあり思わずルイは顔を引きつらせた。
「アハハ…役人ってこういうことに関しては手が早いよね」
どす黒い笑みを浮かべながらルイは自分のものと思われる人相書きをベリッと剥がしてぐしゃぐしゃに丸めた。
「でね、私この人に会ってみたいの!
ルイ知り合いなんでしょ?」
ルイの行動に苦笑いを浮かべながらヨナはその隣に貼られているジェハの人相書きを指差した。それにルイは表情を一変させて翡翠色の瞳を細めた。
「確かに知り合いだけど、どうして会いたいんだい?」
「なんとなくよ!」
「会わせたくない理由でもあるの?」
一気に真剣味を帯びたルイにユンが疑問を抱く。そのユンの指摘にルイは苦笑いを零した。
「ちょっとね…
まぁでもヨナがそこまで言うならいいよ」
*****
「ハク、お待たせ。あら、どなた?」
ユンとルイを引き連れて歩いていたヨナはハクの後ろ姿を見かけて駆け寄った。するとそこにはハク以外にももう1人の人物がいてヨナは視線を彼にやった。それはハクをしつこく勧誘しているジェハだった。にこやかな表情を浮かべていたジェハ。だが、ヨナの声に心臓がドクリッと鼓動を感じたことで表情を変貌させる。ヨナを見て大きく目を見開くジェハの異変にルイは違和感を覚えた。
ヨナを見てふらついたジェハは大きな力が押し寄せ彼女の目の前に跪いていた。疼いていた右足が今までで一番疼きだし、沸騰しているかのように熱い血液が全身を駆け巡る感覚をジェハは抱いていたのだ。そんな彼の脳裏で語り掛けるように重たい声が響き渡った。
『四龍の戦士よ
これよりお前達は我々の分身
緋龍を主とし
命の限り
これを守り これを愛し
決して裏切るな』
呻き声を漏らすジェハの様子にハクとヨナが心配そうに近づいて声を掛ける。が、今の彼はその問いに答えるほどの余裕がなかった。そんなジェハにヨナは右目にかかる前髪をサラリと払うと彼の額に自分の手を当てた。
「すごい熱…!」
心配そうに見つめるヨナをよそにジェハはこの押し寄せる感情の渦に困惑していた。今までずっと遠ざけてきた四龍を統べる者が目の前の少女だとジェハは気づいたのだ。直ぐにこの場を離れないとかろうじて残っている理性が叫ぶ。だが、手に力を入れても身体が動かせなかった。理性の更に奥にある本能が離れたくないと訴えているのだ。
この感情に戸惑いながらもジェハはヨナを見上げてようやく口を開く。
「ありがとう…お嬢さん、もう大丈夫…」
「緑龍…?
あなた緑龍でしょう…?」
ヨナは目の前のジェハを緑龍と本能的に感じて彼の額から手を離すとマジマジと彼を見つめた。その言葉にジェハがハッと目を開く傍ではハクが不思議そうに首を傾げていた。一方でこの不思議なやり取りにようやくルイは合点がいった。ジェハが最近挙動不審な理由が彼らで、ヨナ達が探していたのはジェハだということに。
「なんで…」
「なんとなくそんな気がするの。違う?」
「…何の事だか。僕は通りすがりの…」
再び視線を向けられたジェハはゆっくりと立ち上がると平然と白を切ろうとする。が、そのジェハの言葉を遮るように背後から大きな声が上がる。
「姫様、その者が緑龍です!」
その声にハッとしてその場を立ち去ろうとするジェハ。だが、俊敏に反応したハクがそれを阻止するように彼の首に腕を回し羽交い絞めにし首を絞めるのだった。