千州千里村
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「ヨナーっ」
ハクとルイが皆の元に戻ってきた頃合いに、どこかに行っていたユンが駆け戻ってきた。だが、彼の着ているものはさきほどとは全く異なっていて、ヨナはユンの姿を見て目を輝かせた。
「可愛いっ!どうしたの、その衣装。」
「どうもこうもないよ、助けて!」
嬉しそうに見るヨナに冗談じゃないとユンは形相な顔をして声を荒げた。ユンが着ていてのは女物の衣装だった。その姿にヨナ以外はなにあったらこんな短時間にこのような事態になるのかと目を点にした。その彼らの視線を一心に集めたユンは渋々と事情を説明する。
「この村でいい感じの作物
イザの実ってのを見つけたんだけど…」
「さすがユン、仕事が早いわ」
「イザの実を管理してる(?)おじいさんが実はあげられないけど…
俺がこの服着て今夜の祭で踊り子やったらイザ料理を食べさせてくれるって」
実は、彼らからすぐに離れたユンは探索をしていたのだ。その時に見つけたのがイザの実だった。ただ覗き見ていただけなのに、見ていたユンはおじさんに泥棒と勘違いされ、咄嗟に旅芸人と名乗ったのだが、おじさんに踊り子さんと盛大な勘違いされたのだった。そのおじさんはイザの実はあげられないが、ある条件を満たしてくれれば今日振る舞うイザの料理を味見していっていいと提示したのだ。その条件とは、今夜の祭りで踊りを披露することだった。そしてあれよこれよと着せられたものは、花嫁衣装。
「踊り子?ステキじゃない。私も見たい♡」
手を合わせてヨナは声を上ずらせた。なんでもできるユンのことだ。踊りもきっと…っと思っていたヨナ。だが、ヨナの想像と反してユンは困惑しきった表情を浮かべていた。
「俺、踊りなんてわかんないよ!
花嫁衣装着て晩酌とかちやほやするとかなら別にいいんだけどさ〜」
目を伏せユンはため息混じりにそう嘆いた。そのユンのせめて踊り子以外ならと他の選択肢について半端諦めながら漏らす言葉に耳にしたキジャは目を点にする。
「別にいいのか?」
「もう、ユンは自暴自棄になってるね」
キジャの言葉に、ルイが半笑いして相槌を打った。そんな彼らの心配する声が聞こえていないユンは言葉を続ける。
「でもイザ料理は食べてみたいんだよね。
んで使えそうなら千州の村々を訪ねて分けてもらう~」
踊りはできないからおじさんの要望通りに踊り子はできない。だが、どうしてもイザの料理を食べてみたいというユンの興味心が膨れ上がる。そして、なんとしてもおじさんの要望を達成しようとユンは微かな記憶を頼りにガシッと縋るようにヨナの肩を掴んだ。
「ヨナ!!
確か舞や琴は得意って言ってたよね?」
「ん?得意なんて言ってないわ、少し出来るってくらいで…」
その言葉に対してヨナはキョトンとしながら答える。得意とは言ってはいないとやんわりと訂正しようとするヨナ。だが、彼女の言葉を遮るようにユンは確かめるように強い口調で言葉を投げかけた。
「出来るんだよね!?」
「だってそのおじ様はユンの踊りが見たいんでしょう?
ユンの可愛い姿じゃないと意味な…」
「ヨナの方が可愛いよ!!」
ヨナの言葉に咄嗟にユンは感情が口走ってしまう。勢いで言ってしまった言葉。その意味合いを数秒後に気づいたユンは、カァっと顔を赤らめた。
「あ…いや違…そーゆー話じゃなくて……」
顔を赤らめて咄嗟に言葉の意味合いについて下心はないと必死に否定しようとするユン。そんな彼にルイはクスッと堪えきれられずに笑いを漏らしてしまった。
「ちょっとルイ!
笑ってないでフォローしてよ!」
「ごめんごめん…」
ガッと反応したユンがジト目を向けて噛み付くように声を荒げた。それに対してルイは、愛想笑いをして返した。そんなルイの肩をポンポンとジェハが軽く叩く。
「そうだよ。
笑ったらユン君に悪いだろ?」
「……そういうジェハも笑いを堪えるのに必死だっただろ」
「ジェハもルイと同罪だよ!同罪!!」
やんわりとルイが悪いと指摘するジェハに人のことを言えないだろうとルイは冷たい視線を向けた。その言葉に対して、ユンは遠い目をして声を上げた。
「あまりにもユン君の反応が可愛らしくてね…
それにヨナちゃんが言っていることも一理あるなって思ってね」
「そうそう!
ユンは美少年だからね!」
「…どんだけ煽てようと二人が愉しんでる事実は変わらないからね」
慌てふためきフォローしようとする二人の様子にユンは呆れたように冷めた口調で毒を吐くのだった。が、ユンはここであることに気づき、ジッと視線をルイに投げた。その視線にやな予感しかしないルイは半笑いを浮かべていた。
「…えっと、ユン?どうしたんだい?」
「俺としたことが見落としてたよ!」
目を輝かしたユンは、一先ずヨナを放ってルイに矛先を向けた。そしてユンは畳み掛けるように、踊りはできるかとルイに尋ねるのだった。差し迫った勢いのあるユンにルイはタジタジに。そんなルイの様子を愉しんで見ていたジャハは火に油を注ぐかのように、ユンにルイが踊りができる事実を伝えた。
「ホントに!じゃあ、ルイが踊って!!」
「私、ルイが踊るとこ見たいわ!!」
案の定、ヨナが入ってきて二人のキラキラと期待の眼差しを一心に受けてしまったルイは顔を引き攣らせた。だが、端から踊る気はないルイはやんわりと断りを入れるのだった。
「折角のユンからの頼みだけど僕は先約が入ってるんだ。
だから踊り子は出来ないよ。
ごめんね」
「…先約って?」
「祭りを盛り上げるために演奏を頼まれたんだよ」
不思議そうに尋ねるヨナにルイは爽やかな笑みを浮かべて先程頼まれたことに関して話した。その話を聞き終えるとジェハは相変わらずのルイの行動に半場呆れ果てながら尋ねる。
「いつの間に取り付けてきたんだい…」
「ついさっきさ。
ということで頼むよ、相棒」
「別に僕は構わないけど。
できれば前もって言って欲しいなぁ」
呆気からんと答えたルイはジェハを見上げると口元を緩め、彼の肩を軽く叩くのだった。それにやっぱりかとジェハは肩を竦め、溜息を吐くと困ったように眉尻を下げた。その表情に対してルイは全く詫びる素振りを見せず口端を吊り上げた。
「事後報告するだけでもマシだろ?」
「まぁーね…」
毎度毎度のルイの先走った行動にジェハは何度目かわからない小さい息を吐き出すのだった。
「じゃあ仕方がない、やっぱりお願い!ヨナ踊って!!
踊り方がわかれば俺もやるよ?
屈辱だけど知らないんだ~っ」
「へぇ、姫さんが踊るのか。
やめた方がいいんじゃないですか?あのヨタヨタヒヨコ踊り。」
一方でルイの話を聞いたユンは潔く諦めてヨナにお願い!っと頭を下げた。そのイザの料理がかかった重責のある役目なんかできないとヨナは断ろうとする。が、その退路を断つかのようにハクが彼女を煽るように茶々を挟むのだった。その挑発に乗ったヨナは額に青筋を立てると、見返してやると意気込むのだった。
「やるわ」
「ありがとう、ヨナっ!
俺、次はきっと踊り覚えるからっ!!」
ギュッと拳を握りしめるヨナに、ユンは目を輝かせて両手を組んで喜ぶ。一方で煽ったハクは思い通りに行き過ぎだと彼女の背後で密かに口元を押さえて小さく笑みを零すのだった。