その刃が届く前に/揺れる道中
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戒帝国
かつて広大な領土を誇っていた。が、現在は南北に別れていて、昔と比べて持っている力は翳りつつある。
戎帝国の北に位置する北戒はさらに北方の遊牧民族の度重なる攻撃を受けてる。そのため、帝国軍はいくつかの地域を守るので精一杯。そういった事情の為、かわりに北戒の各地では豪族が力を持ち根を張り実質的に支配し始めた。だからこそ全体的に帝国と呼べる状態ではなくなっているのだ。
一方、南に位置する南戎は貴族や官僚、商人が多く移り住んで来ていて北に比べれば気候も安定してるし豊かだ。その南戎のかりすめの玉座には皇帝のイトコが座っている。
一通りのユンからの話を終えると、タイミングを見計らっていたようにゼノが口を開く。
「皇帝の力が無くなり周りの豪族が力をつける、この国のイル王と各部族にも似てるなァ。」
ゼノの言葉に対して、ヨナ、ハクは無表情のまま無言を貫いた。一方で、素直で直球な言葉を吐くゼノの口を顔を顰めたキジャが塞ぐ。その反対側ではジェハが苦笑しながら彼の耳元に小さく囁くのだった。
「ちょっと黙っとこうね、ゼノ君。」
その声を小耳にしながらヨナは難しい顔をしていた。
確かに少し似ている…
あの時、スウォンはユホン叔父上を殺された復讐と言っていたけれど、父上が争いを避けるあまり他部族や他国の言いなりになっていたというのは私も聞いている…
スウォンはこの国が弱くなるのを食い止めたかった…?
ゼノの言いたいことは一理ある。だが、そう決めつけるにはあまりにも確証がなかった。
ゼノの爆弾発言により不穏な空気が漂う。その中で、ルイが話の話題を変えようとユンに視線を向けた。
「それで?これから何処に向かうんだい??」
「千州という地域だよ。
ここは遊牧民族の攻撃も届かず権力の中心からは外れてるから
独自に着々と力をつけている豪族リ・ハザラが支配している土地なんだ」
「危険はないのか?」
余計な言葉をこれ以上吐かれるのを防ぐために未だにゼノの口を塞いでいたキジャが険しい面持ちのままユンに投げかける。
それに対してユンは注意喚起のつもりで重たい口を開いた。
「まずはどこか小さな農村に行くつもりだから大人しくしてれば大丈夫だと思う、
大人しくしてれば。
大人しくしてれば。」
「3回言ったぞ。」
「「大事な事だからね。」」
既にキジャから解放されたゼノは無邪気にシンアと食事を楽しむ。そんな彼らを横目にキジャが神妙な面持ちを浮かべながらジェハとルイに歩み寄る。その彼の言葉に対して、苦笑しながら二人は口を揃えて同じ言葉を吐くのだった。
*****
「よし、天幕完成。」
その夜、皆で大きな天幕を張っていた。それは、ユンとルイの二人が作ったものだった。張られた大きな天幕を見て一同は歓喜の声を上げた。
「すごい、いつの間に作ったの?」
「ルイに手伝ってもらったんだよ
山で寒さと雨露凌ぐのにやっぱいるでしょ。」
「良かった、いつも私達だけ天幕だったから皆の分もあればなって思ってたの。」
自分のことのように嬉しそうにはしゃぐヨナを横目にユンとルイは頬を緩ました。
「人数多いからねー
ようやく広い布手に入ったからこれでキジャも安心して眠れるよ、虫に怯えずに。」
「感謝するユン…!!そなたは天才だっ」
目を輝かせながらキジャがユンの両手を包み込んだ。もしかしたらこの一行の中で一番喜んでいるかも知れないキジャの様子を見てルイは、良かったねと柔らかく微笑むのだった。
「じゃあユン、寝ましょ。」
「あ、今日は俺こっちの天幕で寝るから。
ヨナは雷獣とそっちの天幕で寝て。」
いつもどおりもう一つの天幕に入ろうとするヨナ。だが、ユンの予想だにしない言葉にヨナは硬直してしまった。
「えっ、ど…どうして…?」
「熊が出るかもしれないから。
もし襲われたら俺とヨナじゃ立ち向かえないもん。」
ユンの最もな理由にヨナは困惑しながら視線を泳がせる。
「そ、それならキジャとか。」
「わ私が姫様とですか!?
そそそそそんなおそれおおいわたわしなどはそとでみはりを…っっ」
「ヨナ、キジャをゆっくり休ませてあげて…」
ヨナと二人きり。想像しただけで恐れ多い吃りながら必死に声を上げるキジャを気の毒に思ったユンが呆れ口調で声を出す。
「じゃあルイと」
「別に構わない…」
ヨナが次に矛先を向けたのはルイ。だが、ルイは背後に佇む殺気を素肌に感じとる。瞬間的にこれはハクが発しているものだと察したルイは取り繕った笑みを浮かべた。
「ごめんね
ヨナと二人きりだと手を出しそうだから遠慮しておくよ」
ルイはニッコリとヨナに笑いかけた。そのルイの柔らかい笑みから出された言葉は、ヨナの脳裏で何度も反芻された。そしてルイの言いたいことを呑み込んだヨナはほんのりと頬を染めた。
そんなヨナを横目にジェハとゼノが名乗りを上げる。
「じゃあ僕が♡」
「ゼノもゼノもー」
「黄色は戦力外で危険。
緑は色んな意味で危険!!」
「じゃあシンア…」
次々に選択肢が狭まっていくヨナにハクが口を開く。
「何か…俺と一緒で嫌な事でも?」
その背後からの低いハクの声にヨナはビクッと身体を震わせ、顔を引き攣らせた。そんなヨナの挙動不審な行動にすかさず鋭いジェハが探りを入れ始める。
「どうしたの、ヨナちゃん。
前はハクがいいの、とか言ってたじゃない。
ハクとケンカでもした?」
「ううん、違うの。そうじゃないけど…
ハク、変なことするんだもの…」
変なこと…!?
ジェハはもんもんと変なこととは何か想像しつつもそれを表情に出さずに問う。
「……ふーん…変なことって?」
「………何でもない。」
えー何それ…めっちゃ気になる!!
照れたヨナの顔にジェハの想像が広がっていく。そんな彼の心情など知らずにヨナは天幕の中に入るのだった。そーっとヨナは伺うように天幕を開ける。するとそこには既にハクが占領するように横たわっていた。
「やー天幕って中々快適っすね。
白蛇じゃねーけど虫いないし。
何より寝転がれるのがいい。」
「…ハク、私の寝る場所がないわ。」
困惑するヨナに対して、ハクは何か感じ取ったのかムクッと上半身を起こした。キリッとしたハクの青藍色の瞳にヨナは射すくめられてしまう。いつもより色っぽく見えるハクにヨナは顔を紅潮させる。そんな彼女にハクは身を寄せながら彼女の名を呼ぶ。
「姫さん…」
「ハ、ハク…ちょ…」
どんどん近づいてくるハクの大きな手。自分の頬に触れそうなほどまで近づいた彼の手にヨナはたまらず目を瞑る。だが、ヨナの予想したいた事は起こらずハクが手を伸ばした先は天幕の布だった。グイッと掴んだ布をハクは問答無用に開く。するとそこには腕を組んで興味津々に天幕の中の様子を伺っていたジェハが佇んでいた。
「ユン、こいつ縛っとけ。」
「うんとキツくしていいよ♡」
「えー、なんかヤダ。」
案の定、ハクに渾身の一撃を喰らったジェハは天幕の外に放り出される。そんな彼の様子を遠目で見ていたユンとルイは呆れ顔を浮かべていた。
「駄目だろ、二人の邪魔したら…」
「だって気になるじゃないか…」
全く懲りている様子を見せないジェハにもう何度目かわからない深い溜め息をルイは吐いた。
「その興味が身を滅ぼすことになっても僕は知らないからね」
「ユン君、最近ルイが冷たいんだけど」
「知らないよ!日頃の行いが悪いからじゃない!!」
塩対応のルイに対してジェハは泣きつくようにユンを巻き込む。だが、ユンはメンドクサイと一蹴してサッサと天幕に入ってしまった。
「そんなぁ〜」
「ほら、何時までも駄々こねてないで寝よ」
「僕としては野郎どもの中にルイを入れたくないんだけど…」
ジェハを置き去りにして寝ようとするルイ。だが、ジェハの拗ねたような声にルイは足を止め振り返った。
「はぁ何を今更
阿波の時と対して変わらないだろ?」
「いいや!全然違うね!!」
肩を竦めるルイに対して、ジェハは形相な顔を浮かべてガバっと勢いよく立ち上がった。
「1つの天幕に身を寄せ合うんだよ!!真夜中にあんなことや…こんなことが…起こりかね…」
「ハイハイ
そんなこと断じて起こり得ないから安心しなよ」
ジェハが再び妄想を膨らましていく様子にルイは慣れている様子で適当にあしらう。が、ここでルイの予想だにしないことが発生してしまうのだった。
「じゃ僕がやってもいい??」
「……ジェハ、なっ…何を言ってるんだい??」
妖艶なジェハの声に動揺したルイはジリジリと後ろに後退する。が、ジェハは後ろ足で下がるルイを木の幹に追い詰めた。
「…逆にルイは今何を想像しているのかな??」
「ジェハ!揶揄ってるだろ!!」
顔を染めているルイに顔を近寄せたジェハは喉を鳴らす。そんなジェハにルイは声を荒げた。が、ルイの視界に映ったのはヘラヘラと笑う彼ではなく真剣な面持ちを浮かべているジェハだった。
「揶揄ってないよ
僕はいつだって君とは真剣に向き合ってるつもりだ」
寂し気にジェハは呟くとルイに背を向けた。一方でその場に取り残されたルイはへなりと座り込んでしまった。そんなルイの胸は己の脳裏に残る彼の表情にざわめいていた。
どっちが本心なの??
ジェハの考えていることわからないよ…
ルイは必死に頭を悩ませる。だが、飄々として本当の想いを吐露しないジェハの考えていることなんて結局わからないとルイは早々に諦めて天幕の中に入るのだった。
が、結局空いているのはジェハの隣。仕方なく彼の隣に背を向けて横になるルイだが、直ぐに抱き枕にするかのようにジェハの腕がルイに伸びてきた。そのまま抱き寄せられてしまったルイはジェハの胸板に背中を預けつつ、襲い掛かる眠気に身を委ねて瞼を閉じるのだった。
かつて広大な領土を誇っていた。が、現在は南北に別れていて、昔と比べて持っている力は翳りつつある。
戎帝国の北に位置する北戒はさらに北方の遊牧民族の度重なる攻撃を受けてる。そのため、帝国軍はいくつかの地域を守るので精一杯。そういった事情の為、かわりに北戒の各地では豪族が力を持ち根を張り実質的に支配し始めた。だからこそ全体的に帝国と呼べる状態ではなくなっているのだ。
一方、南に位置する南戎は貴族や官僚、商人が多く移り住んで来ていて北に比べれば気候も安定してるし豊かだ。その南戎のかりすめの玉座には皇帝のイトコが座っている。
一通りのユンからの話を終えると、タイミングを見計らっていたようにゼノが口を開く。
「皇帝の力が無くなり周りの豪族が力をつける、この国のイル王と各部族にも似てるなァ。」
ゼノの言葉に対して、ヨナ、ハクは無表情のまま無言を貫いた。一方で、素直で直球な言葉を吐くゼノの口を顔を顰めたキジャが塞ぐ。その反対側ではジェハが苦笑しながら彼の耳元に小さく囁くのだった。
「ちょっと黙っとこうね、ゼノ君。」
その声を小耳にしながらヨナは難しい顔をしていた。
確かに少し似ている…
あの時、スウォンはユホン叔父上を殺された復讐と言っていたけれど、父上が争いを避けるあまり他部族や他国の言いなりになっていたというのは私も聞いている…
スウォンはこの国が弱くなるのを食い止めたかった…?
ゼノの言いたいことは一理ある。だが、そう決めつけるにはあまりにも確証がなかった。
ゼノの爆弾発言により不穏な空気が漂う。その中で、ルイが話の話題を変えようとユンに視線を向けた。
「それで?これから何処に向かうんだい??」
「千州という地域だよ。
ここは遊牧民族の攻撃も届かず権力の中心からは外れてるから
独自に着々と力をつけている豪族リ・ハザラが支配している土地なんだ」
「危険はないのか?」
余計な言葉をこれ以上吐かれるのを防ぐために未だにゼノの口を塞いでいたキジャが険しい面持ちのままユンに投げかける。
それに対してユンは注意喚起のつもりで重たい口を開いた。
「まずはどこか小さな農村に行くつもりだから大人しくしてれば大丈夫だと思う、
大人しくしてれば。
大人しくしてれば。」
「3回言ったぞ。」
「「大事な事だからね。」」
既にキジャから解放されたゼノは無邪気にシンアと食事を楽しむ。そんな彼らを横目にキジャが神妙な面持ちを浮かべながらジェハとルイに歩み寄る。その彼の言葉に対して、苦笑しながら二人は口を揃えて同じ言葉を吐くのだった。
*****
「よし、天幕完成。」
その夜、皆で大きな天幕を張っていた。それは、ユンとルイの二人が作ったものだった。張られた大きな天幕を見て一同は歓喜の声を上げた。
「すごい、いつの間に作ったの?」
「ルイに手伝ってもらったんだよ
山で寒さと雨露凌ぐのにやっぱいるでしょ。」
「良かった、いつも私達だけ天幕だったから皆の分もあればなって思ってたの。」
自分のことのように嬉しそうにはしゃぐヨナを横目にユンとルイは頬を緩ました。
「人数多いからねー
ようやく広い布手に入ったからこれでキジャも安心して眠れるよ、虫に怯えずに。」
「感謝するユン…!!そなたは天才だっ」
目を輝かせながらキジャがユンの両手を包み込んだ。もしかしたらこの一行の中で一番喜んでいるかも知れないキジャの様子を見てルイは、良かったねと柔らかく微笑むのだった。
「じゃあユン、寝ましょ。」
「あ、今日は俺こっちの天幕で寝るから。
ヨナは雷獣とそっちの天幕で寝て。」
いつもどおりもう一つの天幕に入ろうとするヨナ。だが、ユンの予想だにしない言葉にヨナは硬直してしまった。
「えっ、ど…どうして…?」
「熊が出るかもしれないから。
もし襲われたら俺とヨナじゃ立ち向かえないもん。」
ユンの最もな理由にヨナは困惑しながら視線を泳がせる。
「そ、それならキジャとか。」
「わ私が姫様とですか!?
そそそそそんなおそれおおいわたわしなどはそとでみはりを…っっ」
「ヨナ、キジャをゆっくり休ませてあげて…」
ヨナと二人きり。想像しただけで恐れ多い吃りながら必死に声を上げるキジャを気の毒に思ったユンが呆れ口調で声を出す。
「じゃあルイと」
「別に構わない…」
ヨナが次に矛先を向けたのはルイ。だが、ルイは背後に佇む殺気を素肌に感じとる。瞬間的にこれはハクが発しているものだと察したルイは取り繕った笑みを浮かべた。
「ごめんね
ヨナと二人きりだと手を出しそうだから遠慮しておくよ」
ルイはニッコリとヨナに笑いかけた。そのルイの柔らかい笑みから出された言葉は、ヨナの脳裏で何度も反芻された。そしてルイの言いたいことを呑み込んだヨナはほんのりと頬を染めた。
そんなヨナを横目にジェハとゼノが名乗りを上げる。
「じゃあ僕が♡」
「ゼノもゼノもー」
「黄色は戦力外で危険。
緑は色んな意味で危険!!」
「じゃあシンア…」
次々に選択肢が狭まっていくヨナにハクが口を開く。
「何か…俺と一緒で嫌な事でも?」
その背後からの低いハクの声にヨナはビクッと身体を震わせ、顔を引き攣らせた。そんなヨナの挙動不審な行動にすかさず鋭いジェハが探りを入れ始める。
「どうしたの、ヨナちゃん。
前はハクがいいの、とか言ってたじゃない。
ハクとケンカでもした?」
「ううん、違うの。そうじゃないけど…
ハク、変なことするんだもの…」
変なこと…!?
ジェハはもんもんと変なこととは何か想像しつつもそれを表情に出さずに問う。
「……ふーん…変なことって?」
「………何でもない。」
えー何それ…めっちゃ気になる!!
照れたヨナの顔にジェハの想像が広がっていく。そんな彼の心情など知らずにヨナは天幕の中に入るのだった。そーっとヨナは伺うように天幕を開ける。するとそこには既にハクが占領するように横たわっていた。
「やー天幕って中々快適っすね。
白蛇じゃねーけど虫いないし。
何より寝転がれるのがいい。」
「…ハク、私の寝る場所がないわ。」
困惑するヨナに対して、ハクは何か感じ取ったのかムクッと上半身を起こした。キリッとしたハクの青藍色の瞳にヨナは射すくめられてしまう。いつもより色っぽく見えるハクにヨナは顔を紅潮させる。そんな彼女にハクは身を寄せながら彼女の名を呼ぶ。
「姫さん…」
「ハ、ハク…ちょ…」
どんどん近づいてくるハクの大きな手。自分の頬に触れそうなほどまで近づいた彼の手にヨナはたまらず目を瞑る。だが、ヨナの予想したいた事は起こらずハクが手を伸ばした先は天幕の布だった。グイッと掴んだ布をハクは問答無用に開く。するとそこには腕を組んで興味津々に天幕の中の様子を伺っていたジェハが佇んでいた。
「ユン、こいつ縛っとけ。」
「うんとキツくしていいよ♡」
「えー、なんかヤダ。」
案の定、ハクに渾身の一撃を喰らったジェハは天幕の外に放り出される。そんな彼の様子を遠目で見ていたユンとルイは呆れ顔を浮かべていた。
「駄目だろ、二人の邪魔したら…」
「だって気になるじゃないか…」
全く懲りている様子を見せないジェハにもう何度目かわからない深い溜め息をルイは吐いた。
「その興味が身を滅ぼすことになっても僕は知らないからね」
「ユン君、最近ルイが冷たいんだけど」
「知らないよ!日頃の行いが悪いからじゃない!!」
塩対応のルイに対してジェハは泣きつくようにユンを巻き込む。だが、ユンはメンドクサイと一蹴してサッサと天幕に入ってしまった。
「そんなぁ〜」
「ほら、何時までも駄々こねてないで寝よ」
「僕としては野郎どもの中にルイを入れたくないんだけど…」
ジェハを置き去りにして寝ようとするルイ。だが、ジェハの拗ねたような声にルイは足を止め振り返った。
「はぁ何を今更
阿波の時と対して変わらないだろ?」
「いいや!全然違うね!!」
肩を竦めるルイに対して、ジェハは形相な顔を浮かべてガバっと勢いよく立ち上がった。
「1つの天幕に身を寄せ合うんだよ!!真夜中にあんなことや…こんなことが…起こりかね…」
「ハイハイ
そんなこと断じて起こり得ないから安心しなよ」
ジェハが再び妄想を膨らましていく様子にルイは慣れている様子で適当にあしらう。が、ここでルイの予想だにしないことが発生してしまうのだった。
「じゃ僕がやってもいい??」
「……ジェハ、なっ…何を言ってるんだい??」
妖艶なジェハの声に動揺したルイはジリジリと後ろに後退する。が、ジェハは後ろ足で下がるルイを木の幹に追い詰めた。
「…逆にルイは今何を想像しているのかな??」
「ジェハ!揶揄ってるだろ!!」
顔を染めているルイに顔を近寄せたジェハは喉を鳴らす。そんなジェハにルイは声を荒げた。が、ルイの視界に映ったのはヘラヘラと笑う彼ではなく真剣な面持ちを浮かべているジェハだった。
「揶揄ってないよ
僕はいつだって君とは真剣に向き合ってるつもりだ」
寂し気にジェハは呟くとルイに背を向けた。一方でその場に取り残されたルイはへなりと座り込んでしまった。そんなルイの胸は己の脳裏に残る彼の表情にざわめいていた。
どっちが本心なの??
ジェハの考えていることわからないよ…
ルイは必死に頭を悩ませる。だが、飄々として本当の想いを吐露しないジェハの考えていることなんて結局わからないとルイは早々に諦めて天幕の中に入るのだった。
が、結局空いているのはジェハの隣。仕方なく彼の隣に背を向けて横になるルイだが、直ぐに抱き枕にするかのようにジェハの腕がルイに伸びてきた。そのまま抱き寄せられてしまったルイはジェハの胸板に背中を預けつつ、襲い掛かる眠気に身を委ねて瞼を閉じるのだった。