次男坊の改心
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「ルイ、ただいま」
「お…っおかえり…ジェハ」
テジュンが村に通って来るようになって数日後、ジェハが帰って来た。彼の姿を見つけた途端、ルイは数日前のことを思い出し挙動不審になる。そんな可愛らしい反応をしてくれるルイにジェハの悪戯心が燻ぶられる。
「どうしたのルイ?
そんなに赤面させて…」
耳元に囁かれたジェハの甘い声にルイはビクッと身体を震わせた。
「な…なんでもないよ」
「へぇ~~」
悪い顔をして顔を覗き込もうとするジェハに耐えられないとルイは顔を背かせながら丁度持っていたものを突き出した。その突き出されたものをジェハはポカンとして見つめる。
「え…どうしたのそれ?」
「ユンが作ったみかんだよ
さっき丁度収穫したところ」
「へぇ〜いつの間に…」
はぐらかされた気がするがまぁいいかとジェハはそのみかんを受取ってもぐもぐとし始めた。うん、美味しいねとみかんを食べながらジェハは改めて村の周囲を見渡すのだが、ある1人の人物を視界に捉えた瞬間、目を瞬かせるのだった。
「…ルイ、これはどういう状況??」
一気に纏わせる空気を鋭くさせたジェハの視線の先にルイは遅れて目をやる。するともう既に見慣れた姿と化していたテジュンがいた。
「あぁ…色々とあったんだよ…」
「何?僕のいないうちに新しい仲間でも増やしたの?」
どう説明しようかと苦笑いを浮かべるルイと裏腹に笑みを浮かべるジェハが凍てつく目線をテジュンに向ける。そんな二人の会話にキジャが割って入る。
「違う!あやつは火の部族長の息子で本来ならば敵だ!」
「ほう…
面白いね。そんな奴をヨナちゃんの側に近付けるとは。」
「私とて奴がここにいるのは微妙だ。
しかし、あの者のああいう姿を見ているとどうも疑いきれなくて。」
ジェハの言葉にキジャが複雑な表情を浮かべる。何故だかキジャは完全に彼を敵とみなすことが出来なかったのだ。それはルイも同意で小さく相槌を打った。ヨナを見るたびに頬を染めるテジュンがヨナの敵になるとは考えにくかったからだ。
その様子を見たジェハはだいたいのことを把握したのか軽く笑った。
「気持ちわかっちゃうわけね。」
「あの者が姫様に不利になる事をするとはどうしても思えぬのだ。」
「まあ、どこか君に似てるよね、彼。」
「どこが!!?」
「ヨナ第一主義のところとか??」
ジェハの言葉にキジャが掴みかかる勢いで声を上げる。が、その点に関してはルイも同意で、彼の言葉に軽く言葉を付け足すのだった。そんな彼らの視線の先ではテジュンが不思議そうに村の様子を眺めていた。収める税がないから払えないと言っているが、それは働いていないからではないかと思ったからだ。だが、それに一緒にいたユンが声を上げた。
「あんたが言う働くってどういうこと?」
「それは…米や野菜を作ったり商売したり…」
「あそこの田畑、干上がってしまってもう何年もまともに作物が出来ない。この辺の土は皆そう。
田畑を復活させるには豊かな水と肥沃な土を作る時間とたくさんの人でがいるの。
でも、村には病気のお年寄りか女子どもしか残っていないんだ。」
テジュンの言葉に心底ユンは呆れながらこの光景を説明する。働かないのではない。土地がやせていて働けないのだ。
それを黙って聞いていたテジュンはもう一つ気になったことを尋ねる。
「そういえば若い男がいないな。どうしたんだ?」
「連れて行かれたの!兵として!
あんたの父親、カン・スジン将軍の命でね。」
「ならば仕方ない。火の土地に住む者は父上の命に従うものだ。」
「…結局誰の味方なの?」
全く事情を知らないテジュンに苛立ちが込み上げるユンは声を荒げた。そのユンの返答に対してテジュンはあっさりと仕方がないという一言で済ませたことにユンは呆れかえってしまった。
「ヨナはここいらを縄張りとする賊だよ?」
「わ、私は姫には賊の真似事はやめて頂きたいのだ。
貴様らのような者と縁を切り必要とあらば私がどこかに住まいを…」
「あのねぇ、ヨナは…!」
「ユン、声を荒げたら村の人がびっくりするわ。」
「あぁ、ごめん…」
そこにヨナが静かに歩み寄って来てユンを宥めた。感情が先走っていたユンはヨナの言う通りだと一先ず落ち着きを取り戻す。が、ユンは不満を漏らす。
「だってこいつ何もわかってないんだもん。」
「口の利き方を知らん小僧だな!」
「テジュン、私村の人達の様子を見に行くんだけど一緒に来る?」
「はいっ」
ユンに対して反抗的なテジュン。だが、ヨナの言葉にはころりと掌を返すように純情になるテジュンに、ユンは呆れた表情を浮かべるのだった。
「ちょっと観察してみようか??」
ヨナとユンに続いて歩いていくテジュンを見てルイがふと言葉を溢す。そして同意を求めようと左右を見るのだが既に先ほどいた二人の姿が消えていた。
「…???」
どこに消えたのだろうと視線をキョロキョロさせるルイ。だが、ようやく見つけた彼らの姿に苦笑してしまった。まるで護衛のようにヨナ達の背後を尾行するキジャとジェハの姿があったからだ。
「ちゃっかりハクもいるし…」
顔を引き攣らせながらルイは彼らの元に急ぐのだった。そんな4人の視線が光る中、ヨナ達はミレイの家にお邪魔する。そして、ヨナは隙間風が入り込んでいるのに気づき修繕に取り掛かる。対してテジュンはミレイの肩を揉むようにヨナに言いつけられた。だが、下手すぎてミレイに突き飛ばされてしまうのだった。
その光景にルイはミレイの自宅の屋根の上でクスリと笑みを溢す。そんな彼女をハク達が怪訝な顔で見た。
「どうした??」
「いや…なんでもないよ
それよりハク、ミレイおばさんがご所望らしいよ」
笑いを必死に抑えたルイはハクに家に入るように促した。その言葉でハクは全てを悟ったのか意気揚々とミレイの家の扉を開くのだった。
「なぜお前がここに!?」
ヨナが文句ひとつも漏らさずに黙々と作業している姿に魅せられてテジュンも己もとミレイに向き直ろうと思った瞬間、驚きの声を上げた。なぜなら、いつの間にこの空間に入ってきたのか、ミレイの肩を揉んでいるハクがいたからだ。
「何かご指名があったみてェだから。お前はもう帰っていいよ。」
茫然とするテジュンにハクが勝ち誇った笑みを溢す。が、ハクは失言をかまし年寄り扱いされたミレイは二人を殴り飛ばすのだった。そのやり取りが繰り広げられるのを風に教えてもらっていたルイ。だが、急に来た存在に慌て始める。すっかりこちらに意識を集中しすぎて気配に気づくのが遅れてしまったのだ。
「ジェハ、キジャ
役人が来るから隠れて」
そして二人が隠れたのを確認するとルイはこの危機を知らせようとミレイの家に近づいた。対して、テジュンはヨナだけと共同作業がしたいと邪魔者のハクを追い返そうと扉を開く。が、ある人物を見かけて見て見ぬふりをしてそっと扉を閉じるのだった。
「ヨナ…役人が来たからなんとかやり過ごして」
ヨナが修理している壁の辺りに気配を頼りに小さな声でルイは訴えた。その声にヨナはハッとした。この家に3人が身を隠す場所がないからだ。そんな中全ての事情を察したミレイが動き出す、彼女はヨナ達3人を敷いてある布団の中に押し込めたのだ。
「動くんじゃないよ。」
「せめーな。」
3人狭い場所に押し込められたハクが不平を漏らす中、扉がガラリと開かれた。その外にいるのはもちろん先ほどの役人達だった。そんな彼らにミレイは心底嫌そうな表情を浮かべる。
「何だい、断りもなく家ん中入ってきて。」
「失礼。南方役所の者です。」
「何の用だい。私ゃ役人は嫌いだよ。」
そう言うミレイを他所に役人は家の中を見渡す。その中で唯一違和感があるほど膨れ上がっている布団を発見する。
「フクチ殿、ここに何かありそうですか?」
「あ、いや…む、あの布団の中が怪しいな。」
役人の疑いの目がヨナ達が隠れる布団に集中する。が、ミレイが咄嗟に機転を利かせるのだった。
「およし。そこに寝てるのはウチの旦那だよ。
流行病で臥せってる。医術師にも診てもらえないから閉めきって看病してんだよ。
伝染っても構わないってんなら見ていきな。」
「…もういいっ。フクチ殿、行きましょう。」
ミレイの言葉に怖気ついたのか役人達は彼女の家から出るとゾロゾロと村から立ち去って行くのだった。