暗黒龍とゆかいな腹減り達
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「…ヨナ!!」
地面に倒れ込んでいるヨナを見つけたルイは一目散に駆け寄った。
「…ルイ!?どうしてここに??」
「妙な胸騒ぎがしたからジェハに運んでもらったんだ
それより平気かい??」
「私は大丈夫
それよりシンアの様子がおかしいの」
ヨナは不安そうにシンアを見る。先程村の子に剣を取られたシンアは丸腰の状態でヨナを連れ去ろうとする賊に立ち向かったのだ。だが、多勢に無勢で横腹に傷を負いその後好き放題に一方的にやられてしまっていたのだ。そんなシンアだが連れて行かれそうなヨナを見てある力を発動していたのだ。
お面が外れたシンアの黄金の瞳。その瞳を見た賊は悲鳴を上げていたのだ。
「ふ…震えが止まった…?いや…か…体が動かねェ。
手も足も指も…なんだこれは…お前はなんだ!?」
「や…やめろ、来るなぁああああああ!!」
「あぁああああ!腕が俺のうでがぁああああ!!」
怯え恐怖で悲鳴を上げる賊を軽蔑するようにルイは一瞥するとシンアを見た。シンアの表情は清々しく
「シンアの
「…暴走!?止めなきゃ!!」
「ヨナの声ならきっと届く
君の想いを彼に伝えるんだ」
目の前のシンアに恐怖で立ちすくみそうなヨナの背をルイはそっと押し出す。そのルイの力強い言葉にヨナは大きく頷くのだった。
「止まって、シンア。もういいわ。
この人達は私を連れて行かないって言ってる。
シンアはケガをしているのよ?力を抑えて、ね?」
だが、シンアはヨナがわからないのか彼女を認識することなくそのまま突き進む。そんなシンアの瞳は一際輝いていた。それを見たルイは眉を顰めた。このままではシンアが力によって誰かを殺めてしまうと。それをヨナも気づいたのか再び必死に声を上げた。
「シンア!!やめなさい、ダメよ。そんな事をしては。
戻れなくなってしまう。
シンアは力を使うこと、あんなに嫌がっていたでしょう!?」
するとシンアはヨナを突き飛ばしたのだった。ルイは突き飛ばされたヨナを受け止めると、彼女をその場に残してシンアの前に回り込んだ。
「シンア!!正気に戻れ!!
その
ルイはシンアの肩に両手を置くと黄金の瞳に怯むことなく真っ直ぐ彼の瞳を見据えた。そんな彼の様子を見ていた賊の一人が震えた声を上げる。
「お、おいお前…何ともないのか?
そいつの眼を見ると喰われちまうぞ!?」
「喰われる…?
シンア!!私の眼を見なさい、私だけをまっすぐに。」
賊の言葉にピクリとヨナは反応するとルイの隣に行きシンアの眼を逸らすことなく真っ直ぐ見つめて言いきった。
「喰いたければ喰うがいい。
シンアが本当にそれを望んで喰って気が済むのならば喰うがいい。
私は決して目を逸らさない!!
さあどうした!?
ヨナの覚悟に横にいたルイは口元を緩めると、意識を集中させ始める。
「僕が力を貸してあげる
だから頑張れ、シンア」
そっとシンアに語りかけるルイの身体は淡い緑色の光に包まれる。それはシンアの身体を優しく包み込むのだった。
「…ルイ!?」
「僕は巫女だ
巫女は四龍の暴走を止め癒やす役目も担っているんだ」
驚き目を見開くヨナにルイはシンアから目を逸らすことなく言い切った。そんなルイの翡翠色の瞳は一際輝いていた。
「ヨナ、シンアの瞳はキレイだね」
「ルイもそう思う??
私、シンアの美しい黄金の瞳が好きよ」
気を紛らわすかのように呟いたルイの言葉にヨナは頬を緩ました。輝きを放つシンアの黄金の瞳。ジッと見ていたら本当に呑まれてしまいそうな感覚に陥る。それでも彼の瞳から視線を逸らせられなかった。初めて間近で見るシンアの瞳。悲しみも苦しみもわずかな喜びさえも全て閉じ込めてきた彼の眼が今開かれてようやく世界を見ている、生まれたばかりの子供のようにキラキラした眼をしている。ヨナはその儚さと美しさに涙を流すのだった。
「シンア、私はあなたといる。
あなたがどんな生き物でも、誰を傷つけても、あなたをあの穴ぐらから連れ出したあの日から共に生きようと生きていこうと決めた。
自由に生きてほしいと心から思う。
だから私はあなたの力を否定しない。
あなたの力はあなたの一部。あなたが生きている証。
でも違うでしょう?
あなたが今やっている事はあなたが最もやりたくなかった事のはず。
あなたが望まない事を私はさせたくない。
力に溺れたりしないで、あなたが私を守ってくれたように私もあなたを守るから。
私の声が届いているのなら応えて、シンア。月の光の人よ…」
「戻ってこい!!シンア!!」
ヨナがシンアに想いを真っ直ぐ伝え、ルイはありったけの
「ヨナ…ルイ…」
「やっと届いた…私の声」
「はぁ…良かった」
「お…俺…」
ホッと胸を撫で下ろすヨナとルイ。そんな彼らに対してシンアは不安そうに瞳を揺らし、地面に崩れるのだった。
「シンア!シンア、しっかりして!」
「ヨナ…、ルイ…俺から離れて…何をするか、わから…ない…」
「僕がいる限りもうシンアのことは暴走させない」
身体を震わせるシンアをルイは力強く抱き寄せた。もちろんヨナも離れることをせずに駆け寄った。
一方、シンアは自分の身体に感じる違和感に戸惑っていた。
「俺の眼…は、狙った人間の体を麻痺させる…
手や足や心臓…だけど…使えば…俺に麻痺の力は返って…くる。
これは呪い返しなんだけど…」
「感じないだろ??」
シンアの疑問に答えるようにルイが得意げに口を開いた。そんなルイの言葉にシンアは不思議そうにルイを見つめた。
「僕の
癒やしの力でシンアの麻痺を除いたんだ」
ちなみにとルイはシンアの横腹を指す。それに釣られてシンアとヨナは視線をやる。すると横腹の傷はキレイさっぱり消えていたのだ。
「でも、俺のせいでルイが…」
シンアがルイを見て指摘する。どうみてもルイの顔からは疲労が見えたからだ。今にも倒れそうなルイに迷惑をかけたとシンアは俯いた。そんなシンアの掌にアオは擦り寄っている。
「この…力…は、一方的な力で…相手を踏みつけ…る。
この…力のせいで里のみんなは二度と…俺に近づいてこなかった。
使っては…いけないと…言われて…たのに…俺に近寄らないで…
俺は弱くて醜い化け物だ。俺は…」
シンアは怖いのだ。己の力が。ヨナに嫌われたくない、そして名前を呼ばれなくなるのが怖い。そんなシンアの心情を察してかヨナは黄金の瞳をそっと手で覆い隠し、彼の頭の近くに腰を下ろした。
「己の力が思い通りにいかないのを嘆くのはシンアが人間だからよ。誰でもそうなの。
だからシンアがやらねばならないのは、目を閉じて全てを封じる事じゃなく目を開けてその力を自分のものにすることよ。
それが出来る人が強い人だと思うの。
そうある人が私は好きよ。
強くなろう、一緒に。ね、シンア。」
安心したらしいシンアから手を離してヨナは微笑み掛けた。
「一緒…」
「うん。」
「これからも…?」
「当たり前でしょ。」
「居てもいい…?」
ヨナは答える代わりにシンアの手をぎゅっと握った。するとシンアの眼から涙が滝のように流れるのだった。そんな二人の光景を微笑ましげに眺めていたルイ。だが、予想以上に
バタリ…
「「ルイ!!」」
意識を失い倒れるルイにヨナとシンアは慌てて駆け寄るのだった。