暗黒龍とゆかいな腹減り達
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「あ、そっか。今日は天幕使えないのね。」
夜が更けてヨナはとあることに気づいた。そのヨナの言葉にユンが申し訳無さそうな表情を浮かべた。
「ごめん、念の為にシンアは天幕で寝かしてあげたいから…
後、ルイも」
「僕は大丈夫だから、天幕はユンとシンアが使って」
「で…でも…」
あっけなく断るルイにユンは最初は渋る。ぶっ倒れたルイにも1晩くらいはしっかりと天幕の中で寝てほしかったのだ。
「僕の力でシンアは回復したかもしれないけど
重症なのは変わりないからね
ちゃんとシンアを休ませたいんだ」
「わ…わかったよ」
ルイの言っていることも一理ある。ユンはルイの言葉に納得してはいないが渋々頷くのだった。それを確認すると今度はヨナが口を開く。
「私も平気よ
外で寝るから。」
「そんな…姫様が外で寝るなど。」
「ヨナちゃん、僕の横においで」
「大丈夫。私ハクと寝るから」
ヨナの一言にハクが驚いたように持っていた薪をガラガラガラと音をたてて落としてしまった。そのハクの反応にヨナが不思議そうに首を捻る。
「嫌?」
「……問題ないですよ。」
「ヨナちゃん、それは危険だよ。雷獣はケダモノだよー」
「てめェと一緒にすんな、タレ目。」
茶々を入れるジェハに向けてハクが持ち直した薪を投げつける。一方でキジャはズキズキする胸に手を当てて不思議そうな表情をしていた。
なぜだろう…胸が苦しい…病気?
対して、普段シンアと寝ているゼノがヨナに無邪気に抱きつく。
「娘さんっ!たまにはゼノと寝よっ」
「ごめんね、ゼノ。ハクがいいの。」
だが、ゼノの無邪気な誘いにヨナは乗ることがなく、あくまでもハクと言い切った。そのヨナの言葉に一同は驚愕の顔を浮かべていた。もちろん一番驚いていたのはハクだった。ハクは驚きのあまりこけてしまい、隣にいたユンはその倒れたハクを茫然と見つめた。
対してヨナにあっさりと断られたゼノは矛先を変更する。
「そっかぁ。じゃゼノは緑龍にくっついて寝るから。」
「お断りだよ
だったら僕はルイと寝るから」
「ちょっと僕もお断りだよ」
「さっきまで僕と一緒に寝ていたのにかい?」
「それとこれは話が別」
ゼノに抱き着かれたジェハは嫌そうに顔を曇らせた。もちろんジェハの言葉にルイは巻き込むなといわんばかりに言い返す。
一方、胸が苦しいと違和感を覚えるキジャは青ざめた表情でユンに身を乗り出していた。が、ユンはその正体がわかっているのか面倒くさそうに一蹴するのだった。
「ユン、急患だ。すごく胸が痛いのだ。」
「それ、俺には治せない。」
「不治の病!?」
結局、シンアとユンは天幕、他の皆は火を囲んでの雑魚寝で落ち着くのだった。
*****
皆が寝静まった夜、ルイは人知れずに起き上がっていた。さっきまで寝ていたためどうしても目が冴えてしまっていたのだ。
ルイはゆっくり立ち上がると足音を押さえて満天の星が見えそうな開けた場所に寝転がると、弄ぶように右手に風を渦巻かせた。
「姉ちゃん!」
その明るい声と共にルイの隣に1人の人物が腰を下ろす。ルイは驚きながらも慌てて起き上がるとニッコリと太陽のように笑うゼノをマジマジと見た。
「…ゼノ」
「眠れないのか??」
「まぁそんなとこ…
それより…」
「どうしてゼノが姉ちゃんだって言ったか気になるって??」
戸惑うルイの心情を察したゼノはニコニコと笑みを絶やすことなく答える。
「ゼノの直感!!」
「へぇ??」
「ってのは冗談で」
拍子抜けするルイを置き去りにして冗談を混じり始めるゼノに、ルイは彼の本性が掴めず困惑する。そんな彼女にゼノは少し寂しそうな表情を向けた。
「知ってたからさ
巫女の力は女にしか継承されないことをね…」
切なそうに紡ぐゼノの言葉にルイは胸が引き裂かれる思いを抱いた。
どうして誰も知らないことを知っているのだろうか?
どうしてそんなに寂しそうな表情をしているのだろうか?
一見すると若干17歳に見えるゼノ。だが、ルイはゼノがとてつもなく凄いものを背負っている気がしてならなかった。そして、陽だまりのような彼が纏う空気が他の者と違うのをルイは感じ取っていた。流れる時の時間が。
「…姉ちゃん!?」
ルイは思わずゼノを抱き寄せていた。突然のルイの行動にゼノは目を見開いて驚いた。そんなゼノにお構いなくルイは彼の耳元にあるワードを落とす。
「…初代黄龍」
「…ッ!?!?」
「そうなんでしょ?ゼノは…」
ルイが囁いた言葉に固まるゼノの反応にルイは確信を得た。黄龍の
「姉ちゃんは優しいな
ゼノは嬉しい、巫女の力が姉ちゃんに宿ってくれて」
自分を想って泣いてくれるルイにゼノは嬉しそうに目を細めながら彼女を宥めるように背に手を回した。
「…ゼノは今楽しい??」
「もちろん!
四龍にも巫女にも再び会えたんだから!!」
ルイの一言にゼノは嬉しそうにはにかんで答えた。その表情にルイはそっかと頬を緩ませた。
「俺はみんなのこと大事だから無理して欲しくない
だから姉ちゃんももっと皆を頼って」
「え…」
「巫女の癒やしの力は治すものが重たいものほど姉ちゃんの体力を削るんだ
だから頻繁に使っちゃいけないんだ」
突然のゼノの言葉に驚くルイに、ゼノは真剣な面持ちを向けて言葉を続けた。初代巫女の行末を見てきたから言える言葉だった。今のルイを見ていると初代巫女と重なって見えて仕方がなかった。誰かのためなら自分を犠牲にする危なっかしい彼女に。
「忠告ありがと
でも、皆が傷ついたら私は躊躇なく使うよ
例えそれが身を滅ぼすことになってもね」
だけどルイにも譲れないものがある。ゼノにルイは決意を固めた翡翠色の眼差しを向けた。その眼差しに負けてゼノは大きく息をついて地面に両手をついて空を見上げる姿勢になるとボヤいた。
「はぁ…姉ちゃん決意硬すぎ」
「ヨナには負けるよ」
「娘さんはもっと頑固者だからな!」
でももっと頑固者を知っている二人はヨナのことを思い浮かべて笑うのだった。
「でもゼノが言ってくれたこと…
できるだけ気をつけてみるよ」
「そうして!!皆頼られたら喜ぶから!!
特に緑龍が!!」
「なっ…なんでそこでジェハが出てくるの!?」
「さぁ〜、なんでだろ??
ゼノもわからない〜」
少しは気をつけようと心決めるルイに、ゼノは表情をガラリと変え少年のように無邪気に笑い出す。そんな彼の口から出た特定の名前にルイは上ずった声を上げて言及しようとするが、ゼノは惚けたようにはぐらかすのだった。